新型コロナの再流行で考える私たちのメンタルヘルス

日本国内での新型コロナウイルス感染者の増加が続いています。また緊急事態宣言の発令なのかと不安に感じる人もいるでしょう。そこで、海外の新型コロナウイルスとメンタルヘルスの対策についてまとめてみました。

  • 2万8000人を超える死者を出したスペインの研究
  • 情報と助け合いが重要
  • 災害のメンタルへの影響は9年以上!?

2万8000人を超える死者を出したスペインの研究

新型コロナウイルスの感染者数が増えてきています。これは検査数の増大なども関連があるようですが、市中での感染の広がりとともに感染への不安が高まっていることは間違いないでしょう。

「with コロナ時代」と呼ばれる、ウイルスとの共生を考えながら生活していかざるを得ない日々に、私たちはどうやって不安を取り除いていけばいいのでしょうか? 

まずスペインの3人の心理学者が、新型コロナウイルスのメンタルへの悪影響と、そこからの回復策について提案しているので、その要旨を紹介していきましょう。

スペインは欧州の中でも、新型コロナウイルスの死者が多いことで知られています。感染者は28万8000人を超え、死者も2万8000人をオーバーしています。死亡者こそ7月は一桁に抑え込んできましたが、感染者は徐々に増えて7月末には3000人を超えています。

情報と助け合いが重要

スペイン国民はパンデミックの初期の段階のアンケート調査でも、36%が中程度から重度の心理的影響があったことを示しています。また25%が軽度から重度の不安を示し、41%が抑うつ症状を訴えています。

こうした不安への対応策として重要なのは、情報だと結論付けています。

一つは「感染防止対策」や「感染した場合の手順」に関する質の高い情報を国民に提供すること、もう一つは多くの人たちが、この問題に心を痛めていることを示すことが重要とのことです。不安に思っているのが自分だけではないとわかることは、ストレス緩和につながるとの見解を示しています。

またメンタルの回復を促す要素としては、テレワークと経済状況だったと報告しています。感染の危険を冒すことなく仕事が続けられること。そして生活を維持するための経済が順調なことだと結論づけています。

コロナウイルスの影響が長期化するという見込みの中では、仕事や収入の確保がメンタルに影響するのは当然のことでしょう。論文では、パンデミックでのメンタルヘルス対策は、個人の問題に関係するだけではなく、社会的・経済的なバックグラウンドに影響される部分が大きいとも書いています。

これは日本でも同じなのではないでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大の中で、政府や自治体がどのような援助策を打ち出しているのか、しっかりと情報をキャッチして活用していくことも重要になってくるでしょう。

社会的・経済的な状況に左右されるとなると、個人でできることは少ないようにも感じますが、この論文では不安や懸念を共有する仲間がいる重要性も強調しています。大変なのは自分だけではないと感じることで、前に向かって歩いていけるからです。もちろん互いに助け合えることがあるのかを話し、サポートしあうこともプラスに働くようです。

災害のメンタルへの影響は9年以上!?

災害とメンタルヘルスの関係については、意外なほど長期にわたり影響があることがわかっています。東北大学の研究によれば、東日本大震災の被災者の心の健康状態については、「良い・良かった」と答えた人の割合が2014年には10.7%、それが2020年には7.3%まで減少したことがわかっています。ただ、「悪い・悪かった」と回答している人の割合はほぼ変わっていないと報告されています。

具体的にどんな気分なのかをたずねた調査では、「気分が沈み込んで、何が起こってもいても気が晴れないように感じる」「神経が過敏である」「何をするのも骨折りだと感じる」といった項目が、2014年の調査と比べて2020年には激増しています。

東北大学の研究チームは、被災地住民について「特にメンタルヘルスの悪化が目立ちました」と結論付け、心のケアの取り組みの強化を訴えています。

東日本大震災が与えた影響については、2年間で被災者の心理や行動がどのように変わったのかといった研究もあります。大阪大学の大竹文雄教授などの研究によれば、2009年から2013年に行われた5回のアンケート調査から、メンタルヘルスの悪化や他人に利益となるように動く利他性や充実感が低下していることがわかっています。

東日本大震災と災害の種類はまったく違いますが、予想もできない混乱と恐怖に巻き込まれ、生活が大きく変わってしまった場合、危機が過ぎ去ったから心も平穏を取り戻すわけではないことは知っておいたほうがいいかもしれません。

新型コロナウイルスの猛威はまだ収まっておらず、緊張状態が続いています。自分のメンタルをケアしながら生活していくことも大切でしょう。

メンタルヘルスケアに興味のある方は、こちらもご覧ください。

参考:「被災地住民の健康状態は悪化し続けている――心のケアの必要性に注目――」(東北大学大学院経済学研究科 高齢経済社会研究センター)/「東日本大震災が日本人の経済的選好に与えた影響」(大竹文雄、赤坂弥香、齊藤誠)/New Study from Spain Finds Keys to Resilience in the Pandemic(Jamie D. Aten Ph.D./『Psychology Today』)/「Psychological Impact and Associated Factors During the Initial Stage of the Coronavirus (COVID-19) Pandemic Among the General Population in Spain」( Rocío Rodríguez-Rey, Helena Garrido-Hernansaiz and Silvia Collado)/

  

  

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「働く人の心ラボ」を運営する日本産業カウンセラー協会では、新型コロナウイルス感染症に関連して不安やストレスにどう対処していくか、産業カウンセラーによるコラムを配信しています。こちらからご覧ください。
※産業カウンセラーは、心理的手法を用いて、働く人やそのご家族の心の健康・キャリア開発・職場環境改善等を支援する専門家です。

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