新型コロナはどうして怒りと社会の分断を「蔓延」させるのか?

新型コロナウイルスが問題になってから、攻撃的な人が増えているようです。ドラッグストアで店員を怒鳴りつけたり、マスク完売にキレて「俺はコロナだぞ」と店員を脅して逮捕されたり。どうしてこんなことが起こるのか、心理学から読み解きます。

  • 攻撃でフラストレ―ションを開放する!?
  • 攻撃に周囲の視線も影響
  • 分断を支援しない

攻撃でフラストレ―ションを開放する!?

トイレットペーパーやマスクが品薄になってから、殺気立ったお客さんがドラッグストアに押しかけました。そうしたお客さんに対応した定員が、「コロナよりも怖いのは人間」とツイートし、大きな話題となりました。

また全国でマスクを求める客が薬局に押し寄せ、トラブルになるケースが相次いでいるとの報道もありました。場所によっては、警察官が出動するほどの騒動となりました。

もちろん一部ではありますが、東日本大震災でも秩序だった行動を取ってきた日本人が、やや攻撃的になってきているのかもしれません。

では、どうしてマスクの品薄に人々はカッとなってしまうのでしょうか?

攻撃衝動の説明の一つに、「フラストレーション―攻撃仮説」というものがあります。これは米国イェール大学のジョン・ダラードとニール・E・ミラーが唱えた説で、フラストレ―ション(欲求不満)が攻撃衝動を生み出すというものです。欲求不満による不快な気分を、攻撃的な行動で解消するとされています。

普段が当たり前に購入できていたものが買えなくなる。外出したいのにままならない。先行きが不透明で経済的にも思い通りいかない。そんなフラストレ―ションを怒りに変えていくというのです。

ストレスへの耐性が弱い人ほど、怒りを発しやすいとも言われており、フラストレ―ションが溜まり過ぎないうちに、日々の生活の中でフラストレ―ションを解消するように努めることも重要でしょう。

攻撃に周囲の視線も影響

もう1つ問題になっているのが、社会的な分断です。

新型コロナウイルスがパンデミックになる前には、中国人への差別的言動が世界的に広がりました。その後、日本でも咳をした人と乗客がケンカになるという事態も発生。さらに海外では、新型コロナウイルスを「ブーマーリムーバー(高齢者除去)」と名付け、その不謹慎な単語がWeb上でトレンド入りしました。

人種、感染者と非感染者、さらには若者と高齢者という社会の分断のありようは、じつは過去の感染症でもたびたび起こってきました。ハンセン病への差別やコレラによる排斥行為などは、その典型でしょう。

では、感染症はどうして、このような分断を生みだすのでしょうか?

一つ参考になりそうなのは、内集団と外集団という考え方です。これは簡単に言えば、仲間内とそれ以外の関係ととらえることができるでしょう。 近年の研究では、人間は外集団に対して常に攻撃的になるというわけではないことがわかっています。ただし

「人は内集団に対しては協力的に振る舞う一方で、外集団に対しては非協力的に振る舞う傾向」(「集団への所属意識が攻撃行動に及ぼす影響」正高杜夫)

があり、

「内集団に対しては潜在的脅威に対する恐怖感情を弱く感じる一方、外集団に対しては強く恐怖を感じることが明らかになった」(「集団への所属意識が攻撃行動に及ぼす影響」正高杜夫)

という研究論文もあります。

さらに攻撃には周囲の視線が影響を与えているという考察もあります。

 

「周囲の他者が攻撃を適切だと考えているときには、他者から見られることで、攻撃が強くなることも指摘されている。Borden & Taylor (1973)は、攻撃的な観衆から見られているときには、非攻撃的な観衆から見られているときよりも、攻撃が強くなることを示した」(「集団間代理報復における内集団監修効果」縄田健吾・山口裕幸)

つまり内集団が認めれば、外集団を攻撃しやすい環境が作られてしまう可能性があるというわけです。

分断を支援しない

感染症に対する未知の恐怖は、人種や感染者と非感染者などさまざまなラインをつくり、内組織と外組織に分けてしまいます。そうした分断は新型コロナウイルスの抑制にプラスに働くことはないでしょう。

残念ながら、こうした分断やそれを背景にした攻撃を防止するのは簡単ではありません。しかし攻撃が内集団の「支援」から起きる可能性があることは、しっかりと考える必要がありそうです。

自分は分断に組しないという態度は、小さいながらも確実な抑止力になるはずです。フラストレ―ションを解消しつつ、冷静に対処していくことが感染症との闘いでは重要なのかもしれません。

ストレスのかかる状況に対応する心理学を学びたい方は、こちらをご覧ください。

参考:「ソトよりウチをひいきする心の仕組み」(三船恒裕)/「集団間代理報復における内集団監修効果」縄田健吾・山口裕幸/「集団への所属意識が攻撃行動に及ぼす影響」正高杜夫

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