SNSが幸福度を下げるという話を聞いたことがあるかもしれません。とはいえSNSをやめるのは寂しいと感じる人も……。そこでSNSを離れても寂しくないと思える方法についてまとめてみました。
- SNSで自分と比較すると不幸に
- ポイントは承認欲求
- 承認欲求を抑える3つのポイント
SNSで自分と比較すると不幸に
SNSがメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があるといった話を知っている人は少なくないでしょう。
例えば、ピッツバーグ大学医学部の研究チームは、SNSの利用頻度が低い人と比べると、利用頻度の高い人がうつ病になるリスクは2.7倍にもなると発表しています。
また2013年には、ミシガン大学がフェイスブックの利用が増えれば増えるほど、幸福感は低下したという研究結果を発表しています。
もちろんSNSが幸福度を上げるといった研究結果もあり、SNSの使い方が重要だといった論調もありますが、一般的にはマイナスの影響の方が出やすいようです。特に何となくSNSに投稿された記事を読むのは危険とのこと。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究チームによれば、何となく他人の投稿を目にすると、自分と比べてしまうためにネガティブな気持ちになりやすいらしいのです。
逆に自分がSNSに投稿するときも、正直に自分を表現する方が幸福感が高まるといった調査もあります。
つまり他人の投稿を見て劣等感を抱き、ミエを張った投稿するといったケースはメンタルヘルス的にもマイナスだと言えるでしょう。
ポイントは承認欲求
では、メンタルヘルスにマイナスの影響が出るにもかかわらず、SNSにハマってしまう理由は何なのでしょうか?
そのヒントを、山形大学学術研究院の加納寛子准教授が論文で明らかにしています。加納准教授によれば、承認欲求の高い人はSNSやネット検索をよく利用する傾向があるそうです。「いいね」をもらうために多くの人が、それなりにエネルギーを費やしている状況を考えれば、SNSと承認欲求に深い関係があることを納得する人も多いでしょう。
特にSNSで承認欲求を満たすのは、リアルでコミュニケーションスキルや注目を集める才能を磨くより簡単です。ウソであってもアクションを起こせば、それなりに反応が来るというシステムに、承認欲求の強い人がハマるのは仕方ないことなのかもしれません。
承認欲求を抑える3つのポイント
メンタルヘルスへのマイナスの影響を考えて、SNSの使用を制限したいと感じたならば、リアルで承認欲求を満たしていく必要があります。その方法を『自己評価メソッド』(クリストフ・アンドレ/紀伊國屋書店)から紹介していきましょう。
①存在を認められていることに気づく
現実での承認はSNSほど派手ではありません。いつも買い物に行く店の店員に「こんにちは」と言うと、「こんにちは」と返してくれる、といった些細なことにも注目する必要があります。
改めて自分の周りを見渡せば、友人や家族、あるいは行きつけの店の店員といった人から、存在を認められている合図を感じることができるでしょう。「いいね」ほど明確ではありませんが、自分の存在を認識してくれる人がいることに気づきましょう。
②合図を過小評価しない
自己評価が低い人は相手からアプローチも期待する傾向にあり、挨拶程度の関わりでは満足しないことが少なくないようです。しかし自分から声をかけて、相手が多少でも応えてくれるなら、それは十分に他人から承認されていると考えるべきでしょう。
もちろん、それほど深い人間関係でなくても、相手から強いリアクションをもらえる人はいます(例えばアイドルなど!)。しかし他人から強い承認を得られる人は、それなりの努力をしているもの。一朝一夕に身に付くものではありません。
精神科医の熊代亨氏は、著書『認められたい』(ヴィレッジブックス)で、他人から承認されるように「長所を伸ばすのもコミュニケーションを上達させるのも、焦ってやろうとする人ほど失敗しやすく、自分に失望しやすいとみています」と書いています。自分の能力を伸ばすことは重要ですが、じっくりと腰を据えて努力する必要がありそうです。
③距離を間違えない
『自己評価メソッド』(クリストフ・アンドレ/紀伊國屋書店)には、次のように書かれています。
「〈お互いに存在を認めている関係〉〈相手の存在を思い出して気にかける知人としての関係〉〈友人関係〉〈深い愛で結ばれた関係〉はそれぞれ違うものなのだ」
だからこそ
「相手との関係が〈お互いに存在を認めている関係〉にすぎないなら、それ以上のことを求めてはいけない」
と指摘しています。
〈お互いに存在を認めている関係〉には、仕事の関係者なども含まれるかもしれません。友人とは言えなくても、メールなどでやり取りする関係は重要です。距離を間違えないようにしながら、しっかりとつながっていきましょう。
SNSほど派手さのない人間関係からも承認欲求を満たすことはできます。自分がいろんな人と人間関係を築いていることを、改めて考えてみるのもいいかもしれませんね。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考: 『自己評価メソッド』(クリストフ・アンドレ/紀伊國屋書店)/『認められたい』(熊代亨/ヴィレッジブックス)で、他人から/「承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性」(加納寛子)/「フェイスブックは『人生の幸福度を下げる』米研究結果」(Amit Chowdhry/Forbes JAPAN)/『コミュニティの幸福論:助け合うことの社会学』(桜井政成/明石書店)