SNSは気になりますよね。気が付いたら携帯でチェックしていたり、面倒だと思いながら「いいね」を付けまくっていたり。でも、そうやってSNSに時間を費やすことで、不幸になっているかもしれません。
- 実験が明らかにしたSNSと幸福度の関係
- SNSは「ウソ」だらけ
- SNSが期待と現実のギャップを刺激する
- 期待が外れたときこそ考えたいこと
実験が明らかにしたSNSと幸福度の関係
米国のデータですが、10代のアンケート回答者の78%はデジタルデバイスを、日々1時間ごとにチェックしていると答えていたそうです。そうした依存ともとれる行動に大きな影響をおよぼしているのが、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツィッター)、Instagram(インスタグラム)などに代表されるSNSです。SNSを中心にやり取りする仲間がいるので、その投稿をチェックするのに多くの時間を費やしてしまうケースがあるようです。
デンマークで1095人に行われた実験では、Facebookの使用を1週間やめたグループが、使い続けたグループより「幸福だ」と答えた人の割合が7ポイント高いという結果が出ています。
そのほかにも「人生を楽しんでいる」という回答には9ポイント差、逆に「悲しい気分だ」という回答にはマイナス8ポイントの差がつきました。
さらにFacebookそのものについては、全体の55%がストレスを感じており、3人に1人は「HAPPY」というタグがついた投稿に嫉妬を感じ、39%以上が友人より幸福ではないと感じていることもわかったそうです。
SNSは「ウソ」だらけ
SNSによって幸福感が減ってしまう理由は完全に明らかになっているわけではありません。しかし先ほどの心理実験でもわかる通り、嫉妬心との関係はよく指摘されるポイントです。嫉妬心は自分より同等か格下と思っている相手に抱くことが知られていますので、同じような生活圏にいる人たちの私生活がわかるSNSは嫉妬を引き起こしやすいのです。
ハリウッドスターのように手の届かない人たちの生活なら憧れで済むのに、あまり差がないと思っている人たちの私生活が、キラキラ輝くようにステキだと羨ましく感じてしまうというわけです。
しかしSNSに投稿されているのは作られた現実です。
写真のフレームの外にある積みあがった洗い物や整頓されていない室内を、フォローワーが見ることはありません。あるいはとても豪華な旅行の裏側で、日々、節約に励み、納豆とご飯だけの夕食を続けていたといった姿もSNSにアップされません。
自分がSNSに投稿するときにはキラキラした日常の瞬間だけを切り取るのに、他人の投稿を見るときには、それが「上げ底」の現実だということを忘れてしまうようです。
SNSが期待と現実のギャップを刺激する
ストレス対策の研究者で著書を持つ
エリザベス・スコットは、SNSが生み出すストレスに期待と現実のギャップがあるのでは
と分析しています。
投稿されたキラキラした生活は、同等だと思っていた人のものだから、当然、自分だって手に入れられるはずなのに……、というわけです。もちろん同じような写真を自分で投稿することはできるかもしれませんが、その分、質素な日々に耐える必要があるかもしれません。
SNSの投稿を見て、知らず知らずのうちに投稿者と同じようなキラキラした生活をすることを「期待」し、現実とのギャップに打ちのめされてしまうのは、やはり幸福ではなさそうです。
期待が外れたときこそ考えたいこと
期待と現実のギャップに打ちのめされてしまうと、さまざまな「期待」を持ちたくなくなるかもしれません。それほど「期待」の扱いは難しいものです。しかし「期待」があるからこそ、明日に向かって努力できるといった側面もあります。
エリザベス・スコットは、期待を裏切られたと感じたときこそ何にがっかりしたのかを考えるようすすめています。というのもがっかりして初めて自分の欲求に気づく場合が少なくないからです。例えば、結婚式のSNSに嫉妬してしまい、仕事ばかりの現実の自分にがっかりしたことで、自身の結婚願望を知るといった具合です。
そうした投稿に、もしかしたら自分の本当の期待があるのかもしれません。実際、自分がほしいと思うものを見せつけられなければ、嫉妬もいら立ちもなく、がっかりもしないものです。
自分が期待していることを新たに見つけたら、それを手に入れるために努力するのもいいでしょう。先ほどの例で言えば、結婚したいとわかったから婚活をするといった具合です。
あるいは、そうした望みが現実的かどうかをしっかり考えることもできるでしょう。
例えば投資で一儲けした話が羨ましかったからといって、知識もなく投資を始めることは危険でしょう。また、そもそも儲かるまでに、どれだけの損をしてきたのかを考えると羨ましくもなくなる。そういったことも起きるかもしれません。
現実的ではない「期待」に振り回されることなく、自分の本当の願望に向かって動いていく。SNSもそんな風に使えれば、幸福度を下げないかもしれません。しかし、そんな面倒なことをしないで、SNSをすべて放り出すといった方法も人によってはお勧めかもしれません。
幸せを感じる心理について興味のある方は、こちらもご覧ください。
参考:「The Expectations vs. Reality Trap」(Elizabeth Scott, MS/verywellmind)/「お金が人を幸福にしない理由:心理学実験から」(Jonah Lehrer/wired)/「人々はFacebookをやめると幸せになる――デンマーク研究」(大村奈都/ITmedia)