SNSの反応が気になって仕方がない。いつでもスマホが手放せない。ちょっとした空き時間に「いいね」を押しまくっている。そんな自分に嫌気がさしたことはありませんか?ネットにはまり過ぎているのは、承認欲求に飢えているからかもしれませんよ。
- 承認欲求が悪循環をつくりだす
- 「コミュ力」重視が危険
- 現実の不満がネットへの熱を上げる!?
- 強すぎる承認欲求を抑える5つのポイント
承認欲求が悪循環をつくりだす
SNSでどれだけ「いいね」を集めても、ほとんどの人の実生活には何の影響もありません。それなのにインスタグラムやフェイスブックなどのSNSで、読者の反応が気になってしまうのは、どうしてでしょうか?
2019年には、インスタグラムが「いいね!」の数を非表示にしました。それはユーザーの過剰な執着が、一部社会問題化したためとも言われています。いわゆる「インスタ映え」のためだけに、食べない食品を購入するといった行為がメディアで批判的に取り上げられました。
ネットでの評価や反応に、多くの人が一喜一憂してしまう原因の一つが「承認欲求」ではないか、と言われています。
筑波大学の土井隆義教授は、論文で次のように書いています。
つねに誰かとつながっていないと不安でしかたがない。つねに周囲から認められていないと耐えがたく、その関係から外されることに恐怖さえ覚えてしまう。LINEの利用実態に端的に表われているこのような人間関係に対するこだわりの強さは、今日の社会状況の反映であり、そこから生ずる承認欲求の強さの発露だからである」
「承認欲求」とは、「他者から認められたい、自分を価値ある存在として認めたい」という欲求です。この欲求が適度に働けば、努力のモチベーションにもなります。しかし他者からの評価を過剰に気にするような状態では、評価されていないと自信を持て失ってしまいます。そして不安だからこそ、より外からの承認がほしくなってしまうという悪循環に陥りがちです。
「コミュ力」重視が危険
しかも現在の若者の承認基準にについて、「コミュ力」に一元化されつつあることを心理学者の斎藤環氏は危険だと指摘しています。
かつての承認は、能力や才能、経済力、家柄など、ある程度は客観的な評価軸があったため、その基準の下で自らを承認できたそうです。しかし現在は「コミュ力」と呼ばれるコミュニケーション能力だけで承認されるため、承認を他者にゆだねるしかなくなり、孤立への恐怖も高まっているとのこと。
たしかにインスタなどの評価に客観的な基準はありません。ユーザーの気分しだいであり、自分としては自信のあった投稿も、まったく評価されなかったりします。結果、他人の顔色をうかがうように投稿を繰り返してしまうことにも……。
現実の不満がネットへの熱を上げる!?
山形大学の加納寛子准教授は、山形県内の専門学校生と大学生を調査し、承認欲求の高い人ほどツイッターやインスタグラムを利用する傾向にあり、常時スマートフォンを接触していることを明らかにしています。
論文では次のようにも書いています。
現実社会での学校や会社での承認欲求が満たされず、それを埋め合わせるために、ソーシャルメディアに承認欲求の矛先を向かわせている可能性もある。
現実の不満からネットでの承認に目を向けるようになり、その結果、より他者の評価に振り回され、不安を募らせているのだとすれば問題でしょう。
強すぎる承認欲求を抑える5つのポイント
そんな承認欲求の問題の解決に向けてヒントを書いておきましょう。
Raven Ishak氏は、他人からの承認を求めず、自信を取り戻すポイントをまとめています。その中から実施しやすそうなものを5つ紹介します。
①自分の行動に気づく
他人の承認に振りまされていると気づくことが、過剰な承認欲求を抑える第一歩とのことです。SNSでユーザーの反応が気になって仕方ないようなら、「これは少し変だな」と感じてもいいころかもしれません。
②承認を求める理由を考える
「自分の判断に不安だったから」「評価してほしかったから」「仕事の失敗で自信を失っていたから」などなど。どうして承認を求めたのかがわかれば、強すぎる承認欲求も抑えやすくなるそうです。
③自分を信頼する
簡単ではないかもしれませんが、自分を信頼するよう努力してみましょう。他人の意見に簡単に賛同しそうになったら、ちょっと立ち止まって自分の意見について考えてみましょう。
④他人との比較をやめる
自分を他人と比べて評価する必要はありません。自分は唯一無二の存在なのですから、他者と比較すること自体に意味がないことを理解しましょう。
⑤SNSを休んでみる
常に社会的に比較されている環境を、SNSは作りだします。それこそが自分の神経をすり減らせる原因の一つです。SNS以外のことに時間を使ってみませんか。
うまく付き合えればプラスに働くSNSですが、自分が振り回されるようになってしまったら、関係性を考えるサインなのかもしれませんね。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『承認をめぐる病』(齋藤環/日本評論社)/「13 Ways To Stop Seeking The Approval Of Others & Feel Super Confident」(Raven Ishak/『bustle』)/「承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性」(加納寛子)/「流動化する社会関係、固着化する集団――若者のネット依存をめぐる虚と実」(土井隆義)