敵対心むき出しの攻撃的な人とつき合いたいと思う人は、あまりいないでしょう。では、そんな損な性格を改善しない理由は何なのでしょうか? 攻撃的な人が性格を変えない理由と、その対処法についてまとめます。
2割以上がもっと攻撃的になりたい!?
すぐ怒り、攻撃してくるタイプを好きな人は少ないでしょう。このようなタイプは人付き合いが制限されるわけですから、実生活でのマイナスの影響も少なくないはずです。しかし攻撃的なタイプの人は一定数います。これはどうしてでしょうか?
米国のジョージア州の研究チームは、攻撃的な人を集めてアンケート調査したところ、多く人はもっと幸せになりたいと感じながらも攻撃的な姿勢を変えたいと思っている人の割合は、わずか15%でした。それどころか、もっと攻撃になりたいという人が23%もいたというのです。
じつは攻撃的な性格には、それなりの「利益」があるようなのです。そして攻撃的な性格を直させたいなら、その「利益」を得られないようにする必要があるというのです。
嫌な上司だと稼げる!?
ビジネスの現場では、人に優しいことが常に推奨されるわけではありません。特に厳しい上司の方が利益をあげやすいといった意識が、一部の組織にはあるようです。実際、ハーバードビジネスレビューに次のようなコメントが掲載されています。
「経営幹部クラスの上司に、力を発揮するために嫌なやつになれ、意地悪な人間になれと言われました。自分たちを真似ろ、とまで言われたのです」
タダ乗りさせない制裁
組織が攻撃的になるケースを、脳科学者の中野信子さんは「サンクション(制裁行動)」から説明しています。『ヒトは「いじめ」をやめられない』によれば、集団に属していることで得られる利益にただ乗りしている人を制裁して、集団から放り出すのだそうです。
例えば、全く働かないのにチームに所属しているだけで高いボーナスをもらい続けている人がいれば、チームのほかのメンバーは腹を立てるし、サボっている人を辞めさせようともするでしょう。逆にサボる人を容認していると、「それなら私も」と同じようにサボる人が出てしまいます。その意味では、攻撃的な排除は、組織にとっても利益があるともいえます。
ここでも攻撃性が、プラスに評価される可能性が出てきてしまうのです。
敵が巨大だと攻撃的に
また、高知工科大学の三船恒裕教授の研究からも、攻撃的な行動が利益をもたらす可能性を考えることができます。
三船教授は、集団での協力関係は「いつかいいことが返ってくる」という意識が生み出している一方で、集団での攻撃は、弱い集団が強い相手集団の攻撃を止めようとするときに発動されやすいと報告しています。
これは実際の状況を考えるとわかりやすいでしょう。
例えばライバル会社としのぎを削っている場合、自分たちの会社の体力が弱いときほど、相手の攻撃の気配があれば全力で相手に攻撃をしかけてしまうのです。確かに自分たちをひねり潰せるような相手の攻撃があれば、全力で対抗しなくてはと思ってしまのものでしょう。
つまり攻撃力が弱い自分が、攻撃される懸念があるときは、攻撃的な行動をとることが役立つといったことがあるようなのです。
バカにされたと思い込み
心理学研究者である榎本博明氏は、普段は礼儀正しく対応しているのに、自分が気に入らないことがあると、いきなりキレる中高年の心のあり方を、次のように分析しています。
「職場でお荷物扱いされ、家庭では軽んじられて居場所がない中高年男性は増えている。彼らは自信がないから他人の視線が気になって被害者意識が強まり、ちょっとしたことで自分がバカにされたと思い激高する」(『日本経済新聞』2011年11月30日)
こうした怒りによって、ますます周りの人から軽んじられ結果となるかもしれません。しかし少なくとも一時は、自分の怒りに相手が慄いて対応してくれるといった結果をもたらします。そうした対応は、バカにされていると思い込んでいた中高年にとっては、悪くない気分かもしれません。
攻撃以外の方法で「利益」を得る
ここまで攻撃的な人が、どんな利益を得るのかを書いてきました。もう一度まとめてみましょう。
・企業が利益をだすための攻撃性
・内部の人をフリーライドさせないための攻撃性
・攻撃力が低い組織が他から潰されないようにするための攻撃性
・バカにされないための攻撃性
サチューセッツ大学アマースト校のスーザン・クラウス・ウィットボーン教授によれば、攻撃的な人の性格を変えたいなら、攻撃的な態度で得られる「利益」が違う方法で得られることを教えるといいそうです。
例えば企業が利益を出したいなら、個人を攻撃するより意欲的に働ける風通しの良い環境が大切であるとか、相手からの攻撃が怖いなら相手ともっとコミュニケーションを取り、自分たちの優位性を磨くべきだとかといったことです。攻撃を止めさせるためには、例えば録音をするといった「反撃」が必要な場面もあるかもしれません。ただ、それだけではなく攻撃以外の問題の解決方法を教えるといったことも大切なのです。
今日は攻撃的な人の心理についてまとめました。身近に攻撃的な人がいるなら、どうしてなのかを考えてみるのもいいかもしれませんね。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会