年に1度の仮装の祭りとして若者を中心に定着しつつあるハロウィーン。今年も渋谷の繁華街では、仮装した若者たちの大騒ぎが社会問題になりつつあります。渋谷ハロウィーンの大騒ぎの裏には、どんな心理があるのかを考えてみました。
- 本番前に5人の逮捕者も
- 衣装によって攻撃的な行動が2~3倍に
- コスプレで大騒ぎをしてきた歴史が日本にも!!
- ええじゃないかはお札が降る「奇跡」から始まる
- ええじゃないかとハロウィーンの共通点
本番前に5人の逮捕者も
10月31日のハロウィーン本番を前に、27日夜の渋谷繁華街では、今年も若者を中心とした大騒ぎが問題となりました。渋谷センター街で仮装した人波に巻き込まれて動きの取れなくなった軽トラックを、若者たちが横倒しにするトラブルまで発生、警察も捜査を始めています。また当日は暴行の疑いで3人、痴漢の疑い、盗撮の疑いで各一人が逮捕されたとメディアは報じています。
かなりの混乱状態ですが、じつは仮装が行動に及ぼす影響について、心理学の実験が明らかにしています。
衣装によって攻撃的な行動が2~3倍に
テキサス大学のエルへ・ペーニャ博士は、オンラインゲーム上のキャラクターになりきって討論した、面白い心理実験の結果を発表しています。
プレーヤーはお互いの姿がゲーム上のキャラクターしか見えていない状態で、キャラクターの服装を白か黒のどちらを着てもらいました。すると黒の服装のキャラクターほど攻撃的な態度を取り、その差は白い衣装を着ているキャラクターの2~3倍になったというのです。
(『一瞬で人の心を虜にする暗示心理学』 内藤誼人 著 PHP研究所)
人間は着ている服に、かなり影響を受けるものだということが分かる結果となりました。となるとハロウィーンの定番であるゾンビや魔女のコスプレなどは、そのキャラクターイメージの影響を受けやすいコスプレと言えるかも!?
コスプレで大騒ぎをしてきた歴史が日本にも!!
とはいえ渋谷などで騒動を起こしているのは、攻撃的なキャラクターだけとは限りません。むしろコスプレの種類にかかわらず、群衆心理によって暴走してしまったと感じるケースが多いのも事実。
じつは一般民衆がコスプレして暴徒化したケースは、日本の歴史でも確認することができます。
慶応3年に起こった「ええじゃないか」騒動は、その典型といえるかもしれません。討幕派が仕組んだといった見方もありますが、民衆運動の一つと考えると意外なほどハロウィーンとの共通点があるのです。
ええじゃないかはお札が降る「奇跡」から始まる
『ええじゃないか-民衆運動の系譜』(西垣晴次 著 新人物往来社)によれば、「ええじゃないか」は、次のような順序で起こったそうです。
1.お札などの降下
伊勢神宮のお札などが大量に降下したところから始まります。ちなみにただの偶然か、本当の奇跡なのか、誰かが意図を持ってまき散らしたのかはわかりません。
2.お札が祀られる
霊験あらたかな現象として、降下したお札を祀ります。
3.祀ってあるお札の前で数日間の祝宴開催
祀ったお札の前で無礼講の祝宴が催されます。このとき参加者は男装、女装に加え狐や七福神の仮装をしていたことが浮世絵などで明らかになっているのです。
さらに「ええじゃないか」と叫びながら踊り、無銭飲食の強請なども発生しました。
4.領主・村役人らの指導と命令
地域一帯の大騒ぎに業を煮やした領主や役人が指導して、群集心理に駆られた人々を日常生活に戻していきました。
ええじゃないかとハロウィーンの共通点
一方、ハロウィーンもお祭りの起源も神事です。古代ケルト人は、10月31日を死者の魂が家族に会いに来る日と考え、死者の魂と一緒に来る悪霊を追い払うために魔除けのコスプレをするようになったのだそうです。
人知を超えた出来事に、仮装で対応する意味は何かあるのかもしれません。
渋谷のハロウィーンも、クラブなどのパーティーイベントを中心にお酒を飲みながら多くの人が踊り、それが街中に出てきて騒ぎが大きくなるといった状況にもなっています。これは「ええじゃないか」の無礼講の祝宴による騒動拡大と現象は似ています。
そして、暴徒化しないようにDJポリスなどが、仮装集団の大騒ぎを沈静化するわけです。この流れも「ええじゃないか」に近いといえそうです。
さすがに渋谷の仮装した人々が、「ええじゃないか」と叫んでいる姿は見られません。それでも軽トラックを横転させる若者達の動画を見ると、「ええじゃないか」が流行った当時の社会的な不安(徳川慶喜が政権返上を明治天皇に奏上した「大政奉還」が同年にありました)でも渦巻いているのかと、少し不安に感じてしまいます。
いずれにしても、せっかく定着してきた楽しいお祭りです。犯罪行為の多発で規制されることがないように祈るばかりです。