1月は目標を定め、新たな一歩を踏み出すのに適した時期ですが、すでに目標を見失い暗雲が垂れ込めている人もいるかもしれません。そこで自分を変えるための効果的な方法を紹介します。目標は立てたけれど、うまく実行ができないという人にこそ試してみてほしいテクニックです。
- 失敗は頭に残りやすい
- 例外的な成功に注目する
- 他人の成功から学ぶ
失敗は頭に残りやすい
新年の目標を立て、行動計画を立てたけれど、すでに実行していないという人もいることでしょう。いえ、それ自体は珍しいことではありません!
米国のスクラントン大学の調査によれば、アンケートに答えた人の約半数が新年の目標を立てるものの、1週間保たずにあきらめた人が25%もいたそうです。さらにいえば新年の目標を達成できたのは、わずか8%だったというのです。
つまり1月の半ばも経過し、行動計画を放り出している人は結構多いというわけです。少なくとも目標設定まではしたのですから、新年の目標を立てなかった約半数の人よりは成長への意欲があったといえるでしょう。
さて、ここで問題なのは行動を中断したことではありません。
むしろ成長の糧になるようなヒントを、ここから得られたのかどうかが重要でしょう。ただ成長のための反省こそが、将来の失敗を呼び寄せてしまうこともあるのです。
多くの人は成功に向けて失敗の原因を分析します。それはとても理に適った行動です。例えばF1のレーシングチームが、リタイアしたレースの原因を徹底追求し、それを一つずつ潰していくといった行動は成功への最短距離でしょう。しかし時間もお金も、さらには情熱でさえ限られた中で行動変容を起こそうとしている人にとって、失敗の分析は現状を変える力を持たない可能性があります。
例えば、朝のランニングが10日間で終わってしまった原因として、モチベーションの減少や朝の気温の低さ、前日の寝た時間の遅さなどがあったとしましょう。その対策として、ラニングを続けた結果得られる理想体型の写真を見たり、朝の暖房の時間をセットしたり、なるべく寝不足をしないようにしたりといった工夫は考えられるかもしれません。ただし、これらの方法で失ったランニングへの強い意思を復活させるのは、やや難しいと思いませんか?
そもそも人はポジティブな出来事よりも、ネガティブな出来事に着目して説明する傾向があるそうです。それは私生活だけではなく、仕事・政治・スポーツの分野でも起こることが研究によってわかっています。さらに問題の分析を始めると、その問題の大きさに見合う、ネガティブな項目の解決策を探そうとするそうです。つまりさまざまな要素が入り組んだ大きなプロジェクトの失敗は、現行制度の問題や労働環境といった改善が簡単に望めない解決策までピックアップしてしまいがちなのです。
だからこそ分析した問題点にきっちり対処できるほど余力を持っていない場合、失敗の分析が成功への最短距離にはならないのです。
例外的な成功に注目する
では、中断してしまった挑戦から、私たちは何を学べばいいのでしょうか?
その答えが、「ブライト・スポット」探しです。
「ブライト・スポット」とは、簡単に言えば例外です。
具体的に説明しましょう。
例えば朝のランニングが10日間で終わった場合、少なくとも10日は続いていたともいえるわけです。それは昨年を含めた過去の自分を基準に考えれば、例外的にうまく体を動かせていた日々となるでしょう。
こうした例外的にうまくいった活動の理由を探していくのが、「ブライト・スポット」探しです。ランニングの例であれば、もちろん目標を立てたばかりでモチベーションが高かったことも、行動が続いた理由でしょう。でも、それだけなら3日で終わってもおかしくなかったかもしれません。では、この寒い中どうして続けられたのでしょうか?
しっかりと考えてみれば、「家族が褒めてくれた」「走ったコースが気持ちよかった」「天気がよかった」「途中歩いた」などなど、行動を例外的に持続できた要素があるかもしれません。
こうした例外を支える要素から、自分でコントロールできるものを選んで、改めて目標にむけてチャレンジしてみてください。ランニングを家族に褒めてもらうのもいいでしょうし、自分が気持ちよいと思えるコースを設定するのも1つ方法でしょう。あるいは晴れている日だけランニングすることにして、毎日走るという過大な目標設定を訂正してもいいかもしれません。
失敗を反省するのではなく、例外的な成功に注目して目標と行動を変えていく。
この方法は、ときに自分の理想と少しズレてしまうかもしれません。例えば毎日5キロをある程度のスピードで走り切るといった理想のランニングではなく、晴れた日だけ、ときどき歩いて気持ちよいコースを軽く走るといった形になるかもしれないのです。それでもランニングをするという目的は達成できますし、運動を続けることで体調の変化を実感できるかもしれません。
行動変容を起こしたいけれど、予算や時間、かけられる労力が限られている。そんな場合こそ、「ブライト・スポット」を探してみましょう。
他人の成功から学ぶ
「ブライト・スポット」探しには、大きく2つの方法がありますが、その一つが他人の成功から学ぶことです。例えば多くの人が目標達成できない仕事なのに、例外的に実績を積み上げている人達がいるなら、その方法をマネてみましょう。
ただし容易にマネできない才能を持っていたり、1日15時間働いていたりといった自分が再現できない方法を参考にする必要はありません。アプローチや問題の捉え方の違いなどが、一つのポイントになります。例えばお客様にアピールするのはコスト削減効果ではなく、操作の簡単さだったといったケースです。
「ブライト・スポット」を教えてくれそうな人たちが近くにいない場合は、WebやSNSで自分と同じような問題を抱えている人の解決法を探してみるのもいいでしょう。意外なポイントが自分の行動を変えてくれるかもしれません。
自分の成功から学ぶ
もう一つの方法は、自分の例外的な成功を見つけることです。
このとき自分にしてみてほしい質問が2つあります。
①「自分の問題がきれいに片付いたときの最初の小さなサインはなんですか?」
これは明確な進歩のサインを見つけるための質問です。ランニングが続いていたとすれば朝余裕を持って支度ができるかもしれませんし、仕事で目標額が達成できるようになれば残業が減るかもしれません。
このような自分の小さな変化を予測できたら、次の質問に移ります。
②「ほんのわずかな間でも問題解決に成功したのはいつですか?」
恒常的に問題解決できていなかったとしても、成功した瞬間は誰にでもあるものです。コンビニでポテトチップスを買わないで我慢できたり、15分でも英会話を勉強できたり、すでに問題を解決している瞬間を思い出すことで、そのポイントとなる「ブライト・スポット」を探してみましょう。
今日は自分の行動を変えていくためのテクニック「ブライト・スポット」探しについて解説しました。目標のための行動が「休止」していても問題はありません。「再開」するための「ブライト・スポット」探しを、さっそく始めてみませんか?
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『スイッチ!』(チップ・ハース, ダン・ハース/早川書房)