1992年に開催されたバルセロナオリンピックの競泳女子200メートルで金メダルを獲得した岩崎恭子さんが、自分のブログで離婚を報告。あわせて、「SmartFLASH」が報じた不倫報道も認め謝罪しました。
14歳で金メダルを獲得した岩崎さんが、すでに結婚して子を持ち不倫の謝罪までしている時の早さに驚いた人も多いかもしれません。しかし、もっと驚いたのは、ネット上では岩崎さんの謝罪を「潔い」とプラスに評価している人もいたことです。
どうして岩崎さんの謝罪がそれほど炎上しないのか、心理学的に検証してみましょう!
- サルでもケンカした後に仲直りを
- コストをかけた方が許されやすい!?
- きっぱり認め、コストの支払いも約束した謝罪文
- しっかりした謝罪は加害者の印象も改善
サルでもケンカした後に仲直りを
神戸大学大学院の大坪庸介准教授の、「仲直りの進化:価値ある関係仮説とコストのかかる謝罪」は、謝罪と許しについて書かれた論文です。この論文では霊長類がケンカをした後の仲直りについて、ケンカした相手に近づきキスしたり、抱き合うなどの行動が見られることを指摘。仲直りが「価値ある関係の修復・維持」だと説明しています。また「攻撃者が被害者を再び攻撃する意図がないことを確認すること」だとも解説しています。
確かに同じ集団の中に仲違いした者がいればストレスが溜まります。そのうえ追撃や報復の可能性があるとなれば、一緒に生活し続けるのは、加害者と被害者、どちらにとってもリスクでしょう。
それは人間でも同様です。論文によれば「相手が自分を再び裏切るかもしれない」と感じる人は、許したくないと感じてしまうもののようです。それゆえ、どれだけ心から心から謝罪しているのかが重要になってくるのです。
心理学者の大渕憲一氏も「受け手が釈明を戦略的ではなく、真正のものであると知覚されるよう、戦略的に役名を構成しようとする」と語っています。
つまり謝罪は、そもそも相手から許してもらうという戦略的な行為ではあるのですが、それが透けて見えると強い反感を生んでしまうわけす。
これは改めて説明するまでもないでしょう。言葉だけの謝罪によって、更なる怒りを感じたことは誰にでもあるでしょうから。
以前、週刊誌に報じられたバンドマンとタレントの不倫が、当人たちの反省のないラインの流出によって、更なる反発を招いたことも、「あの謝罪はウソだった」という思いが爆発した結果でしょう。「真正」ではなかったということに対する怒りというわけです。
コストをかけた方が許されやすい!?
また先に触れた大坪氏の論文では、「補償を伴う謝罪とそうでない謝罪の効果を比較した研究では、相手の被害を補償しようとする謝罪の方が効果的であることが示されている」と解説しています。
手みやげを持ち、時間をかけてビジネスマンが相手の家を訪れて謝罪するといった行為も、経済的コストや時間的コストがかかっている分だけ、相手からの「赦し」を引き出しやすくなるのかもしれません。
きっぱり認め、コストの支払いも約束した謝罪文
というわけで、岩崎さんがブログに掲載した謝罪文を振り返ってみましょう。
まず、岩崎さんは「報道内容の詳細までは確認できておりませんが、私がこの男性と恋愛関係にあったことは概ね相違ありません」と事実関係をしっかり認めています。変なごまかしがないだけに、読者にも謝罪がダイレクトに届いたことでしょう。
さらに、すでに夫は「離婚協議中」であったと情状酌量の余地を示しつつ、「変軽率で恥ずべき行動」だったと重ねて謝罪。そのうえで「今回の件を深く反省すると共に、お相手の男性とはお付き合いを解消させて頂きました」と、不適切な関係をの解消も宣言したのです。
この文章からは、「再び裏切る」可能性を感じにくい文章となっています。
しかも離婚が成立したにもかかわらず「お付き合いを解消」という精神的コストも払っているのです。
しっかりした謝罪は加害者の印象も改善
もちろん加害者と被害者という関係での「謝罪」と「許し」は、今回の報道のように「社会への謝罪」「世間の許し」と別物でしょう。それでも誠実であることやコストをしっかりと支払うと表明した謝罪は、多くの人の「許し」を引き出したと考えるべきでしょう。
心理学者の大渕氏は、謝罪の効果として、「怒りなどの不快感の軽減」「加害者の自身の印象を改善」「被害者の罰したい気持ちを軽減する」と説明しています。
誰でも過ちをおかすもの。だからこそ、どれだけしっかりと「謝罪」できるのかが、重要になってくるでしょう。間違いを起こしてしまったら、誠意持ち、コストをかけて謝罪するよう心がけたいものです。