大事な話のときは、場所選びがポイントだと聞けば、「話の内容に説得力があれば、どんな環境でも大丈夫だろう」と反発を覚える人もいるかもしれません。でも、快適な環境にいれば、それだけで対面している人への評価は上がるものです。環境の良し悪しで人への好感度が変わる、フィーリンググッド効果について解説します。
- 商談の資料は完璧?じゃあ、会議を行う部屋の管理は?
- グリフィットによるフィーリンググッド効果実験
- 大事な場面では場所選びと温湿管理がキモになる
- 人が快適と思える温度や湿度を覚えておこう
商談の資料は完璧?じゃあ、会議を行う部屋の管理は?
商談の資料準備を周到にしようとするあまり、会議を行う部屋の冷房をつけていなかった……そんな失敗はありませんか。取引先が来る直前に慌てて冷房をつけ、「まだ冷えていませんが、こちらへどうぞ」などと言って部屋へ通すよりも、別の涼しい部屋へ案内したほうがいいですよ。
なぜなら、不快な環境で商談を行うと、どんなに素晴らしい内容でも契約に至らないかもしれないからです。「そんな単純な話があるものか」と思うでしょうか。それがあるんです。心理実験が、きちんと実証しています。
グリフィットによるフィーリンググッド効果実験
倫理学者のグリフィットは、環境が人への好意に与えている影響を確認するため、心理実験を行いました。実験参加者は、ある人が記入した意見調査票を見ながら、その人の性格について判断するよう指示されます。このとき実験者を次の二つの見知らぬ人の評価をするグループに分けました。ひとつは、室温37.8度、湿度60%に設定した部屋の中で評価をするグループです。もうひとつ は、室温23.3度、湿度30%に設定した部屋で評価をするグループです。
結果、高温多湿の中で評価を行ったグループでは、対象人物と意見が合わない場合に、人物に対して嫌悪感を示しました。一方、適温で爽やかな環境に置かれたグループでは、意見が合わなくてもニュートラルに対応し、意見が同じであれば好意的な評価がなされたのです。
グリフィットは、快適な条件では他人に対して好意的な評価がなされることを、フィーリンググッド効果と名づけました。フィーリンググッド効果を調べた実験は、他にもあります。例えば、嫌いな音楽が流れている部屋では、好きな音楽が流れている部屋よりも人への評価が低くなることがわかっています。
大事な場面では場所選びと温湿管理がキモになる
フィーリンググッド実験からは、人と会うときの環境が、いかに大切かがわかりますね。とくに初対面や初デート、初取引のときには場所に心を配りたいものです。多くの人がお見合いのときにちょっといいレストランや料亭を選ぶ理由も、これで納得できます。「場所柄にこだわるなんてくだらない」と考えていた人も、ちょっとだけ気をつけてみてはいかがでしょうか。
例えば、初デートであれば真夏の遊園地や動物園は避け、彼女が好きなジャンルの映画に出かけましょう。彼女は冷房で寒いと訴えるかもしれませんから、自分が羽織る予定がなくても薄いカーディガンなどを持っていき、さりげなく貸してあげるといいでしょう。気配り、環境管理の両面で好ポイントです。
また、より大事な商談を行うときには、早めに景観の良い会議室を押さえるのも手です。気づけばいつも予約が埋まっている、人気の会議室はありませんか。きっとそこは環境が良く、話がまとまりやすい部屋なのでしょう。一度使ってみれば、手ごたえを覚えるかもしれませんよ。
人が快適と思える温度や湿度を覚えておこう
先の実験結果を見て、気になったことはありませんか。そう、実験室の温度と湿度です。不快な環境とされた「室温37.8度、湿度60%」よりも高温多湿の状況を、われわれ日本人はけっこう経験していますよね。室温は暑すぎますが、湿度は60%程度ならむしろ御の字、快適と感じるくらいです。
一方で、快適な環境とされた「室温23.3度、湿度30%」はどうでしょう。冬なら「乾燥ぎみ」、夏なら「エアコンの温度を下げすぎ」と感じる環境です。人が快適と思える温度や湿度は、文化や時代によって違います。また、性別や年齢によっても違ってきます。
現代日本において、快適な湿度の目安は40%から60%といわれています。これは年代、性別によってあまり変わることはありません。一方で、エアコンの適温は冬なら20度程度、夏なら28度程度とされますから、参考にしましょう。また、相手が部屋に入ってきたら「お寒くないですか?」などと尋ねる気配りを忘れずに!
参考:『図解雑学 人間関係心理学』斎藤勇、ナツメ社 p.100