SNS上に、友達は何人いますか。100人、200人は下らないという人も、珍しくないでしょう。ときには、1000人を超える友達を抱えている人も見かけます。しかし、そんなに多くの人数と、本当に「友達」になっていられるものでしょうか。人が交友関係を保てる人数に関する理論に、ダンバー数があります。ダンバー数が教えてくれる友人づきあいの限界は、企業における人員管理術にも使えそうです。
- 正直、SNSの友達一人ひとりと食事に行ける自信ある?
- ダンバーによる関係安定性の理論
- ダンバー数は大企業における一部署の母数管理にも使える
- ネットでのつながりは「ウィーク・タイズ」と割り切って大切に
正直、SNSの友達一人ひとりと食事に行ける自信ある?
SNS上の友人一人ひとりと、二人だけで食事に行かなければならないとしたら、多くの人がしり込みするのではないでしょうか。ビジネス上のおつきあいで「友達」になった人であれば、食事をしながらの 会話は続くかもしれません。しかし、何となく承認した人とは、会話が長く続くことを想像もできませんよね。
とすると、私たちの考える「友人」の適正人数は、いったいどのくらいなのでしょうか。交友関係を築ける範囲について理論を構築したのが、イギリスの人類学者、ロビン・ダンバーです。
ダンバーによる関係安定性の理論
ダンバーは、「人間がきちんと社会的な関係を維持できる人数は限られている」という仮説を立て、人類学的な検証を行いました。霊長類が構成する群れの大きさと頭脳の大きさに相関関係があることに注目し、人間については「安定的な関係性を保つことができるのは、150人まで」という結論を出したのです。この150人という数は、ダンバー数と呼ばれています。
ダンバー数には、すでに交友関係が途切れた友人は含まれません。「20年前の同級生で、今は電話番号も知らない」といった人は、150人の中に入らないということです。また、最近一度会って話をしただけで、持続的な交流を持っていない、いわゆる「知り合い」も、数のうちには入りません。
今まさに社会的な接触を保っている人、どこに住んで何をしていて、どんな人と交流を持っているかが把握できる人は、150人程度までだというのです。「一年生になったら」という歌に「友達100人できるかな」という歌詞がありますが、これは可能だと言うことができます。しかし、ダンバーの理論によれば、300人の人たちと友達になることは不可能です。
ダンバー数は大企業における一部署の母数管理にも使える
このダンバー数を母数管理に使っている企業があります。組織としてのまとまりを保てる人数が最大150人程度であると解釈し、一部署の人数を150人以内にとどめる方針をとるのです。もちろん、150人を一人が統括できるわけではありませんから、複数の管理者を立てて、組織的に管理することになります。
会社が栄え、人数が膨れ上がってきたときに「150人を越えたら分社化する」といった方針をあらかじめ決めておけば、巨大組織に経営者自身が翻弄されることはないでしょう。
ネットでのつながりは「ウィーク・タイズ」と割り切って大切に
今はインターネットを通じてたくさんの人と交流を持てる時代です。しかし、ダンバー数に基づいて考えれば、そうやってつながった全ての人の生活に興味関心を持ち、交流関係を把握することなど、できるはずがありません。
ただ、独特なつながりでできた「友達1000人」は、決して無駄な関係性と捨て去ることもできないでしょう。濃密なつながりではないからこそ、意外なときに強い連帯を発揮することがあります。ネットの緩いつながりを「ウィーク・タイズ」と呼ぶことがありますが、このような弱い絆が効果的に働くこともあるとする研究も進んでいます。
例えば震災や洪水被害など自然災害が起こったときには、日ごろ交流がなくても被災地に住んでいる人というだけで心配し、思わず無事か確認をしたという経験のある人もいるでしょう。そこから救助や支援の輪が広がることは、珍しくありません。
参考:『ぐっと身近に人がわかる 対人関係の心理学』山口勧、技術評論社