ハーバード大学が75年にわたって実施した調査では、人の幸福と健康に関係がある因子は人間関係だと結論づけました。そこで人間関係を強化する方法をまとめました。
- 700人を75年調査
- 少し親しくなるだけでも幸福
- 大切な人に時間を割く
- 苦境のときも連絡を維持する
- 会うための計画を立てる
- 新しい友情を育む
700人を75年調査
人はどうすれば健康で幸せに暮らせるのか、その答えを求めてハーバード大学が700人の追跡調査をしました。ハーバード大学卒の男性陣と、ボストン育ちの経済的に厳しい人達を75年にわたって追いかけたのです。
結果、幸福と健康を高めるのは、いい人間関係だと結論づけました。学歴・家柄・職業・環境・年収ではなかったのです。貧国地域に住む人たちの健康問題は公衆衛生の分野で注目されることもありますが、少なくとも先進国に住んでいる人たちの幸福度や健康に、住環境や賃金などはあまり関係がなかったというのです。お金をいくら持っていても、孤独感に苛まれている人は病気になる確率も高く、短命である確率もアップするそうです。
しかも、幸福感や健康に関係するのは、友人の数ではなく、信頼できる人がいるかどうかだということもわかりました。
つまり先進国であるこの日本で幸福に生きたいと思うなら、人間関係を強化する必要があるのです。
少し親しくなるだけでも幸福
人間関係と幸福度の関係については、別の面白い研究もあります。
公共交通機関で見知らぬ人との会話がどんな影響を及ぼすかといった調査では、黙って座っていた人より、見知らぬ人と会話を楽しんだ人の方が幸福度も高いことがわかったのです。
先ほどのハーバード大学の研究のように、人生の幸福度という観点で調査すると、一人でもいいから信頼できる人が大切という結論になりますが、他人との軽い接触であったとしても幸福度は増すようです。
日本人にとっては、いきなり電車で他人に声をかけるのはハードルが高いかもしれません。しかし近所の人やスーパーや商店など顔なじみの店員との会話も、私たちの幸福度をアップさせます。意識的に声をかけてみると、少し世界が変わって見えるかもしれません。
①大切な人に時間を割く
では、人生に大きな影響を与える大切な人との関係を深めるには、どうしたらいいのでしょうか?
3つ紹介しましょう。
まずは時間を割くことです。米国の統計ですが、人との交流に費やす平均時間はわずか34分でした。一方でテレビを見る時間は、1日に約2.9時間だそう。
総務省の調査によれば、人が自由に使える「可処分時間」は1日2.6時間です。つまりしっかりと寝て、仕事に行って、お風呂に入ったり、食事をしたりした残り時間は、わずか2.6時間しかないのです。この自由時間を映像系やゲーム、Web関連企業が狙っています。ドラマを観るのに2時間割いてしまったら、残りは36分。パートナーや友達の話にじっくりと耳を傾ける時間は取れないかもしれませんね。
この自分が自由に使える時間を、大切な人にしっかりと使えることかどうかが、人生の幸福度に大きく関わってきそうです。
②苦境のときも連絡を維持する
大切な人と良好な人間関係を育む上で大切なのは、心身の不調などで自ら連絡を取れない人とのつながりを維持することです。相手から返信がなくても、適度にメールやラインを送る。ちょっとしたプレゼントを贈るといったことです。
政治記者に聞いた話ですが、政治家との関係を深めるのに重要なのは落選したときだそうです。周りに人がいなくなり、自分自身もツライとき、そっと横に居てくれる人に信頼を寄せるのだそうです。元気になり、活発に活動したときにも、苦境に陥ったときのことは記憶に残っています。
大切な人が逆境に立たされていたら、相手のプレッシャーにならないように適度に連絡を取り続けてみましょう。
言うまでもないことですが、相手が本気で嫌がっていたら、接触しないようにする必要があります。
③会うための計画を立てる
大切な人との時間は、しっかりと計画しないと取れないことも少なくありません。だからこそ食事や小旅行などの予定を、しっかり計画しましょう。できれば、1ヵ月に1度はパートナーと食事に行くといったように、継続的な計画を立てるといいでしょう。
忙しくなると、身近にいる人のことはついつい後回しにしがちです。そんなときこそ人生の幸福に何が大切なのかを思い出してみてください。
新しい友情を育む
年齢は関係ありません。新しい友情を育むための活動もしてみましょう。ボランティアに参加したり、趣味の集まりに出てみたり、最近ではファン活動を意味する「推し活」から、友情が生まれることも多いようです。
人は意見が一致すると好感度を持ちやすいことが心理調査からもわかっています。「推し活」などで、「推し」の魅力について意見が一致すれば、友人になれるハードルはぐっと下がります。
新しい人間関係が、さらなる幸福を連れてくる可能性もあります。
今回は幸福感を高める人間関係の強化について、まとめてみました。
人の幸福は、金や名誉ではなく人間関係の影響が大きいという結論は、ともすれば青臭く見えるかもしれません。しかし一流の研究者が、75年かけて得た結論だと考えると、見え方が変わりませんか?
何を大切に生きるのかという指針として、無視できない研究結果ですね。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「5 Strategies for Developing Better Relationships」(Catherine A. Sanderson Ph.D./Psychology Today)/「ハーバード大75年の追跡調査『 人間の幸福と健康』を高めるたった1つの方法」(堀田秀吾/PRESIDENT Online)