日本人は、行列に並びたくなる人種。そんなふうに言われて久しいですよね。確かに、行列ができているお店を見ると「きっとおいしいお店なのだろう」と思えますし、一方で閑散としたお店には、マイナスな印象を抱くことがあります。
それでは、人はどうして行列に並んでしまうのでしょうか。日本人がとくに抗えないとされるバンドワゴン効果について解説します。
- 「なんだか、みんな船に残るみたいですよ」
- バンドワゴン効果とは
- 行列は、まさにバンドワゴン!
- 認知的不協和を避ける行動で、人気店の人気はさらに上がる
- 心理効果を熟知したうえで、自分自身の意見を持とう
「なんだか、みんな船に残るみたいですよ」
日本人が同調を良しとすることは、世界中に知られていますよね。それを示す、こんなジョークがあります。
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さまざまな国籍の人が乗り合わせた船が、沈没のピンチに陥りました。パニックにならないよう、乗船客を少しずつゴムボートに乗せて脱出しなければなりません。まずは女性と子どもから助けたいと考えた乗組員たちは頭を働かせ、国ごとに男性陣を集め、説得に当たりました。
イギリス人の男性がたには、こう言いました。
「レディー・ファーストですから」
アメリカ人の男性がたには、こう言いました。
「最後まで船に残れば、ヒーローになれます!」
ドイツ人の男性がたには、こう言いました。
「こういった場合、男性は船に残るのが規則となっております」
そして日本人の男性がたには、こう言いました。
「なんだか、みんな船に残るみたいですよ」
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それぞれの国民性がにじみ出る、辛辣なジョークです。
この同調性こそが、日本人が行列を好む一つの理由となっています。
バンドワゴン効果とは
心理学の「バンドワゴン効果」のバンドワゴンとは、パレードのときに先頭を切って走ってゆく、派手な楽隊車のことです。賑やかなバンドワゴンに乗ることは、多勢に与することを意味しており、また時流に乗っている側につくという意味もあります。
つまりバンドワゴン効果とは、多くの人がある選択肢をとると、さらにその選択肢をとる人が増えていく現象を指します。人気があると感じられるものを見たときに「とりあえず多くの人に同調しておこう」と、それを選んでしまう心理効果なのです。
多数派への同調にはさまざまなものがあり、流行やしきたり、世間一般の常識に従うこともまた、バンドワゴン効果の一種と考えられます。バンドワゴン効果が表れているとき、自分の判断やはやりの品物そのものに価値を置いているのではなく、「多くの人が指支持している」といった多数派の判断に価値を感じているケースが多くなります。
行列は、まさにバンドワゴン!
お店に向かって伸びる行列は、まさにバンドワゴンです。「行列の先に、多くの人から支持を得ているものがあるよ」と教えられているわけです。そこで、人はモノそのものの価値を吟味することなく、「こんなに多くの人が選ぶ品物なのだから、価値のある良いものに違いない」と思って行列に並んでしまいます。
しかし、多くの人がそう感じて並んでいるということは、行列の先にあるモノそのものの価値を本当に知っている人は少ないということにもなるのかも! みんな周りの人を信じて並んでいるだけかもしれません。ネットや雑誌で「行列のできる店」といった特集を見て、我先にと駆けつけた人達だけだったら……。もしかしたら行列の先にある商品を買った人は誰もいないのかもしれないのです。
じつはバンドワゴンの先に何があるのかを知っている人なんて、本当のところ誰もいないのかもしれないのです。
認知的不協和を避ける行動で、人気店の人気はさらに上がる
行列のできる店は、総じて評価の高いのも事実です。口コミもよくて、並ばないとありつけないような商品だったら、やっぱりほしいと思ってしまいますよね。しかし、ここでも安心はできません。行列に並んだ末に、やっと商品を買えたような人には、たとえその商品が自分にとってはいまいちだったと思えても、認知的不協和を避ける心理現象が働いてしまい、高評価をすることがあるのです。
認知的不協和とは、自らの中で矛盾する二つの認知を同時に抱えた状態を指します。人は、その矛盾による不快感に耐えることができず、自分の言動を変更する傾向があるのです。
行列の例でいえば、2時間並んだ末に食べることができたラーメンは、「正直、想像していたほどはおいしくない」と心の底で考えていたとしても、「こんなおいしいラーメン、初めて食べた!」という感想が出てしまう、これが認知的不協和の回避です。2時間の忍耐が無駄になったと思いたくなくて、自分の感想を捻じ曲げてしまうのです。こうして、行列のできる店の人気は、どんどんアップしていきます。
心理効果を熟知したうえで、自分自身の意見を持とう
ラーメン屋さんが流行る光景は活気があふれ、見ていて楽しい気分になりますよね。でも、バンドワゴン効果に気をつけるべき状況もあります。それは、とくに政治的な態度や、会社での経営判断が絡むときです。
重要な場面で「とにかく多数派についていれば安心」と感じ、迎合してしまっていませんか。そちらについた人の多くが自分と同じ考えで、たんに多数派だからついただけだったら、急に不安になりますよね。自分自身はどう思っているのか、もう一度、落ち着いて考えてみましょう。