人の好意を疑ってしまった経験、多くの人にあるのではないでしょうか。そんな、人を信じられないといった気持ちは、どこから湧いてくるのでしょう? 猜疑心について調べてみました。
- 現金を配っていても人は立ち止まらない
- 人は損失を回避したい
現金を配っていても人は立ち止まらない
行動経済学の第一人者であるダン・アリエリー デューク大学教授の実験は、人がいかに猜疑心を募らせているのかを如実に示すものでした。
アリエリー教授はケンブリッジのビジネス街一角で、「お金を無料で差しあげます」という張り紙を掲げ、申し出た人に現金を配ってみました。日によって1ドルから50ドルと金額を変えて、同じ額のお札を積み上げて一人一枚配っていくと、1ドル札のときは実際に立ち止まってお札を持っていったのは1%でした。しかし50ドルのときは、19%の人がお札を持ち帰りました。
それでも多くの人は、次のような会話をお札配り役の学生と交わしたそうです。
男性 (用心しながら実験店舗に近づいてきて、50ドル札の山に目をやりながら)
何かのいたずらかい?
学生 (にっこりして)いいえ、とんでもない。
男性 何か署名したりするのかな?
学生 署名は不要です。
男性 きっと何か落とし穴があるんだな。
学生 ありませんよ。
男性 本当にまじめな話なのかい?
学生 そうです。どうぞ持っていってください。おひとりさま一枚かぎりです。
確かに何の見返りもなく現金を配るとは考えにくいのではないでしょうか。そのため裏があるのかと、つい疑ってしまうのもわかります。
しかし考えてみれば、アンケートに答えるといった何かしらの見返りがセットになっていたとしても、50ドルのお金がもらえるならそれほど悪くはないでしょう。しかし、多くの人はもっと最悪の事態を予測し、疑念を募らせていくのです。
猜疑心に大元にあるのは、損失を避けたいという想いです。
人は損失を回避したい
人は損失を回避したいという願望があります。
有名な問いかけですが、
A.50万円を無条件にもらえる
B.1/2の確率で100万円がもらえる
AとBどちらを選びますか?
これは多くの人が確実に利益を得られるAを選択します。
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ところが次の問いになるとどうでしょうか?
A.50万円の借金を確実に半分にする
B. 1/2の確率で0円にする
これはBを選ぶ人が多くのなるのです。
リスクを犯しても、損失を帳消しにしたいという欲求が働くからです。
その意味では、損失に敏感な人間が、猜疑心を募らせてしまうことは仕方のないことなのかもしれません。
ただ猜疑心が強すぎると、逆に損失が多くなる可能性もあります。
たまには疑いから自分を解き放つのも必要かもませんね。