どんな目標を立てたら挫折しにくいのか知っていますか? 目標設定に役立つ目標の決め方や撤退基準の定め方について、米国の心理学のサイトや書籍を参考にまとめました。
- 目標設定に重要な3つのポイント
- 「撤退基準」が必要な理由
目標設定に重要な3つのポイント
私たちはさまざまな目標を立てます。仕事はもちろんのこと、資格取得などキャリアに関わる目標もあれば、プライベートでも結婚、ダイエットといった生活を豊かにするための目標もあるでしょう。
ただし目標を達成できている人は、あまり多くはありません。いつの間にか目標自体を忘れてしまったという人も少なくないでしょう。ただ、それは目標の立て方に大きな問題があったのかもしれません。
だからこそ、より達成しやすい目標の立て方を学ぶことが重要なのです。
リラズ・マルガリット博士は、目標を達成した人とできなかった人と比較し、目標の立て方にどのような違いがあったのかを調査しました。すると以下の3点に大きな違いが見つかったそうです。
①目標の明確さ
目標を達成した人の目標は、「午後7時以降は食事をしない」「毎日20分走る」といったように、何をどれだけするのかが明確でした。一方で目標を達成できなかった人は、「怠惰を減らす」「定期的に運動を始める」といったように、何をしたらいいのか具体的でないものが多かったようです。つまり絶対に目標を達成したいなら、具体的で数字で表すことができるような目標を掲げるべきなのです。
また目標を設定するときは、長期的な目標だけではなく、目標が成功へのロードマップになるような具体的な日々の行動目標を設定する必要があるそうです。つまり「半年後に売り上げを5%伸ばす」といった目標では、目標自体は明確なのに日々何をすべきなのかがわかりません。だからこそ「午後3時までにアポイントの電話を3件かける」というように、日々の行動まで明確になっている目標設定が必要なのです。具体的な目標を掲げれば大丈夫と思いがちなので注意しましょう。
②行動に期限をつける
通常、目標に必要な期限は、目標達成までの期限を指します。例えば「半年後までに体重を5キロ落とす」といったものです。
しかしリラズ・マルガリット博士は、日々の行動目標に「~時まで」といった時間的な期限を設定するようアドバイスしています。例えば「8時までにランニングする」「午後7時までに健康的な食事をとる」といった具合です。このときに「8時からランニングをする」といったように、スタート時間を明確にするより、終わりの時間を指定し、日々の行動目標を守ることが重要なのだそうです。
たしかに始まりの時間を設定してしまうと、日々の生活の中で行動目標をクリアできないことも出てきてしまうでしょう。日々の積み重ねが目標達成に不可欠なことを考えると、なるべく自分との約束を破らないように目標を設定すべきなのは当然でしょう。
③前向きな目標にする
「ジャンクフードを食べない」といった回避傾向の目標設定をしてしまうことが、よくあります。例えば「毎日小さなボールいっぱいのサラダを食べよう」と目標を立てるより、「ケーキを食べない」と設定した方がダイエットには効果的かなと感じてしまう人もいるでしょう。
しかし目標達成がポジティブな評価になった方が、人は行動を続けやすいのだそうです。例えばサラダを食べるという目標を達成すれば、より健康的に体が変化していることを感じることができます。
一方で「ジャンクフードを食べない」という目標を達成したとしても、自分の行動にプラス評価をしにくいのだそうです。前向きな目標を設定し、それを日々推進することで、より状況が良くなっていく。そうした気持ちを持てるように、目を設定すべきなのだそうです。
「撤退基準」が必要な理由
通常、具体的な目標を設定したら、チェックリストなどを用意して行動を始めてしまいます。しかし目標を設定したときは、撤退基準も設定しましょう。
問題が起きたときには、撤退よりも支援に動きがちです。
これはビジネスを考えるとわかりやすいでしょう。どうもプロジェクトがおかしいと感じても、なかなか撤退を決めることはできないもの。進行が遅れている部署の支援に力を入れたり、さらに予算を投入したりといったことをしがちです。 既に投資した事業から撤退したくても回収できないコストがもったいなくて撤退できにくくなる心理を「サンクコスト効果」と呼んだりもします。
こうしたバイアスを排し、感情的な判断を下さないためにも「撤退基準」の設定は大いに役立ちます。
このように書くと、「個人の目標に撤退基準とか大げさ」と感じるかもしれませんね。しかし撤退基準は単に目標に向けた行動を止めるだけではなく、今の目標をどこまで守り続けるのかを考える基準にもなるものです。
実際、「撤退基準」について書かれた海外の書籍では、結婚相手を探しているときには、結婚をなかなか承諾しないパートナーとは、いつまで付き合うのかを明確にしておくこと、2回目のデートを断る基準を最初のデート前に明らかにしておくべきとの記述もあります。
もちろんダイエットや資格試験の目標設定で、撤退基準を定めることは難しいかもしれません。1ヵ月で3㎏落ちていなかったら、もうダイエットは中止だというのでは、一向に体形は変わらないでしょう。ただ、完全撤退が難しい目標でも、注意すべきシグナルをピックアップしておき、その都度目標を見直すと目標達成の可能性が高まります。
例えば、「毎朝7時までに20分走る」といった目標を立てていたとしましょう。このとき「朝寝坊が3回続いたら目標を見直す」という基準を設けておけば、一度の失敗で目標を放り出す可能性が低くなり、より自分に合った目標を設定することができます。
「朝走るのが難しいなら夜に走ってみよう」「20分がキツイなら10分にしてみよう」などなど。やり方や目標値を変えるだけで継続的に取り組むことができるかもしれません。目標を立てた後は、自分の目標に向けて動けないパターンを想定し振り返る基準をつくっておきましょう。
逆に目標をあきらめるギリギリの基準として、撤退基準を使うことも可能です。
例えば資格の学校に通っているのに、試験の点数が振るわず、勉強時間も取れず、会社でも忙しい日々が続いたら通うのをやめようかと考え始めることでしょう。しかし「月3回、学校に通えているならやめない」と決めていれば、通学を継続することはできます。来年の合格に向けて少しずつ勉強すると決めれば、自分を責めることもないでしょう。
いずれにしても、こうした撤退基準を、事前に決めておくことが重要です。
目標設定の方法の一つに、驚くほど簡単な目標を立てて、余裕があったら追加するといったものがあります。例えば「腹筋を1日1回」と目標を立てておき、余裕があれば10回でも20回でも実行するといったものです。
これは生活を改善していくといった目標には役立ちますが、最低限のレベルへの到達が必要なケースには向きません。日々の行動を一定レベルまで引き上げる必要があるならば、撤退基準を定めてみてはいかがでしょうか。
今日は目標の立て方と撤退基準についてまとめました。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Create a “Kill” Criteria with a date before you start a project.」 (Annie Duke)/「7 Tips for Better Patience: Yes, You’ll Need to Practice!」(healthessentials)/「How to be More Patient: 25 Tips for Increasing Patience in All Parts of Life」(GOODWALL BLOG)/「7 Strategies to Build Your Patience Muscles」(Melissa Eisler/widelensleadership)