休み明けの月曜日がツラいと日曜日の夜に感じることは多いでしょう。「ブルーマンデー症候群」や「サザエさん症候群」とも呼ばれるこの憂鬱の新しい対処法「最低限の月曜日」が、米国で話題になっているので報告しましょう。
- Z世代に指示される月曜日対策
- 仕事をセーブする文化的背景って?
- 試してみたい4つのこと
- 「最低限の月曜日」の効果
Z世代に指示される月曜日対策
休みが終わりを迎える日曜日の夜の憂鬱は、世界中の人々にみられる心理状態のようです。日本でも日曜日の午後6時半から放送の「サザエさん」を見ると憂鬱になる「サザエさん症候群」が話題になったこともありました。国内のアンケート調査では、日曜日の夜や月曜日の朝に、仕事を考えて憂鬱になる人の割合が4割以上という結果が出たことがあります。
米国でも、同様の憂鬱がメディアなどで報じられてきましたが、最近、これまでにない対処法が話題となっています。それが「最低限の月曜日」です。これまで月曜日の憂鬱に対しては、なるべく気分が落ち込まないように準備するといった方法がメインでした。どれだけ憂鬱でも月曜日からバリバリ働かなくてはいけないという意識から対策を立てていたからです。
しかし長い1週間を乗り越えるために、いっそのこと月曜日をならし運転のようにスピードを抑え、仕事を絞ってみたらどうかという提案が、かなり好評を博しているようなのです。特に1980年から1995年の間に生まれたZ世代には、支持されていると報じられています。
仕事をセーブする文化的背景って?
「最低限の月曜日」を詳しく見ていく前に、どうしてこのような対処法が人気になっているのかを説明しましょう。というのも、こうしたムーブメントが生まれた背景を知ると、米国だけの話だと思えなくなるからです。
休み明けの月曜日の仕事を抑えるなんて日本ではムリという考え方が、近い将来変わってくるかもしれません。
新型コロナウイルス感染症が蔓延する前、米国では「ハッスル・カルチャー」と呼ばれ「仕事中毒」とも訳される考え方がブームとなっていました。人生の最優先課題を仕事にし、上昇志向でオーバーワークなライフスタイルを選択するものでした。しかしコロナ禍で「ハッスル・カルチャー」に疑問を抱く人が多くなり、仕事に命を懸けるような生き方が見直されるようになってきたのです。
そうした動きの一つが、「大量離職」と呼ばれる現象です。米国の労働省雇用動態調査(JOLTS)によれば、2021年11月には1ヵ月間に450万人という過去にない規模の離職が起きているからです。この現象はコロナ下でもリモートワークを選択できなかった接客業などの人が、感染リスクと賃金が見合っていないと離職したことから始まったと言われています。
また退職せずに必要最低限の仕事をこなす働き方「静かな退職」といったムーブメントも起きているそうです。このような働き方を選択する人は、米国の労働者の50%を占めているといった調査結果もあるそうです。
また労働者が職場を選択しやすい売り手市場の状態であることも、複数のメディアが指摘しています。
日本の労働市場はあまり流動性がなく、米国ほどの「大量離職」は起きないだろうとも予測されています。ただし景気が持ち直せば業種によって人手不足になることは間違いなく、そのときに離職が一気に表面化するとも指摘されています。またパンデミックを経て、仕事だけに打ち込んでいていいんだろうかといった思いは、日本でも強まっているようです。
歴史的に見れば、パンデミックが社会を変えていくのは当然の流れです。ペストが農奴解放に結びつき、封建社会が崩壊したといった例もあります。新型コロナウイルス感染症の蔓延は、私たちに働き方と生き方を考え直すポイントとなったのかもしれません。
すでにブラック企業でも人手を集められるといった時代は終わりを告げようとしています。慢性的な人手不足の業界では、働き的に配慮した職場を提供する必要がでているからです。
こうした流れの中に「最低限の月曜日」があるのです。
試してみたい4つのこと
「最低限の月曜日」という働き方を広めたマリサ・ジョーは、TikTokで15万4000人のフォロワーを誇るインフルエンサーです。マリサ・ジョーは、月曜日は仕事をできる限り減らしてエネルギーを回復し、他の興味に集中するよう推奨しています。
その具体的な方法については、さまざまあるのですが、そのいくつかを紹介しましょう。
①自分のケアを最優先にする
休み明けですから、長いToDoリストを作成したくなるかもしれません。しかし月曜日の最も大きなテーマは、1週間を乗り切る心身の状態をつくること。無理にテンションを上げて、乗り切ろうと思わないようにしましょう。
②タスクを絞る
タスクを1~4つに絞ります。どうしてもやらなければならないタスクに集中するようにします。
③朝一番の禁止事項
朝一番にメールやソーシャルメディアをチェックするのを止めましょう。メールやSNSは他人からの意見や情報が入ってきます。そうした情報に惑わされることなく、自分自身に注意を向けるようにしましょう。
④タスクの後はやりたいことを
絞ったタスクをやり終えたら、自分のしたいことをするようにしましょう。読書、トレーニング、マインドフルネス、長風呂、緑地の散歩といったことが推奨されています。
会社勤めだと、「最低限の月曜日」を実行することは難しいように感じるかもしれません。しかし「休み明けだから一気に片づけるぞ」という意識と、「今日は心身をケアして仕事をセーブしよう」と思うのでは、随分と気持ちが変わってくるでしょう。
「最低限の月曜日」の効果
じつは月曜日の仕事量を抑えることが、プラスに働くという指摘もあります。米国の心理学者であるマーク・トラバース博士は、週の始まりをゆっくりとすることで、週末までエネルギーが持続するという見方を示しています。また燃え尽き症候群を軽減し、仕事の満足度を高めることができるとも指摘しています。
また月曜日の仕事量をセーブすることで、週末の憂鬱にも効果があるという指摘もあります。ゆったりした気持ちで月曜日を過ごすことがわかっていれば、「明日から仕事なのか」という前日の憂鬱も少なくなるというわけです。
さらに別の識者は、月曜日と金曜日のストレスの違いを明らかにしています。金曜日に受けたストレスは週末に発散できるとわかっているので、うまく対処したり、無視することができます。一方で月曜日のストレスは、金曜日のストレスより深刻に受け止める可能性が高く、仕事の満足度も下がるというのです。
私たちは週末に英気を養ったから、週明けには頑張らなくちゃと考えがちです。しかし私たちの気持ちは次のストレス発散に向けて漂い、月曜日はストレスのダメージを受けやすくなっているというわけです。
今日は米国で話題の「最低限の月曜日」についてまとめました。来週の月曜日は、少し仕事をセーブしてみるのもいいかもしれませんね。結果的に1週間の生産性が上がるなら、月曜日から無理に全力疾走しないようにするのも一つの方法でしょう。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「2 Reasons to Try Out the “Bare Minimum Monday” Trend」(Mark Travers Ph.D./Psychology Today)/「Bare Minimum Mondays: Ultimate Guide」(Grace He/teambuilding.com)/「What is“Bare Minimum Monday?”」(Alyssa Austin/Poized & Professional)/「’Bare minimum Monday’ marks latest quiet quitting trend」(Max Zahn/abc NEWS)