失敗の落ち込みから抜け出す心理学的7つのステップ

失敗が原因で落ち込んでしまい、どうにも抜け出せないときありますよね。何のやる気も起きないし、みんなが自分を非難しているようにも感じる。そんなときに試してもらいたい心理学の知恵を集めました。

  • 失敗しない人間はいない
  • 現状を把握する
  • 事実と解釈を区別する
  • セルフトークに気づき、言い直す
  • 暗い感情から抜け出す
  • ネガティブなものを遠ざける
  • 自分を信頼できる理由を探す
  • 経験から学ぶ

失敗しない人間はいない

人は誰でも失敗します。
「私、失敗しないので」が決め台詞だったドラマの主人公・大門未知子だって、若かった研修医時代には、きっと失敗もあったことでしょう。世界で最も強いボクサーとして世界中から注目されている井上尚弥選手も、プロでは24戦無敗ですがアマチュア時代には負けています。

つまり失敗しない人などいないのです。

だからこそ人は失敗の痛手から立ち直り、前を向いて歩いていく必要があります。問題は失敗のダメージが大きいと、立ち直るきかっけがつかみにくいことでしょう。失敗を長く引きずり続けると、自信を失ってしまう可能性もあります。失敗を乗り越えるのに時間がかかり過ぎて、飛躍のチャンスを逃してしまうことだって……。

失敗の落ち込みがちょっと深いなと感じたら、心理学を活用すべきかもしれません。落ち込みから抜け出す7つのステップを紹介しましょう。

①現状を把握する

最初にしなければならないのは、現状を把握すること。いまどんな状態で、何に時間を費やしていますか? 
もし、やけ酒のおかけで二日酔いだったり、ツライ気持ちをお酒で紛らわそうとしてきたなら、まずお酒を止めましょう。というのもヤケ酒がイヤな気持ちを強めてしまうからです。しかもアルコールを常習すると、イヤな記憶を消す能力そのものが下がっていくという研究結果まであるのです。

長時間SNSで現実逃避している場合は、SNSでの共感がいつもより心地よく感じるかもしれません。しかし簡単には共感を得にくい現実社会との距離が少しひらいてしまったかも。
ゲームによる高揚感が失敗の痛みを忘れさせてくれると感じていても、現実的感覚の遮断が長くなり過ぎると問題になるかもしれません。もちろんつらい現実の対処として、一時の気晴らしは必要かもしれません。しかし、そこにずっと留まるわけにはいかないことを、認識する必要があるかもしれません。

まだ行動を変えることは難しいかもしれませんが、失敗した後、自分が何をしてきたのかを把握してみましょう。

②事実と解釈を区別する

次に考えたいのが、失敗と人間としての価値を区別することです。失敗したからといって、性格が極端に変わったわけでもないでしょう。もしかすると上司からの視線はやや冷たいかもしれませんが、家族や友人は失敗前と同じようにあなたを見ているはずです。

すでに社会人の人は、新卒の就職活動を思い出してみてください。「お祈りメール」がきて選抜から漏れるたびに、自分の人格が否定されたように感じませんでしたか? ただ今思い出せば、受けた会社と相性が合わなかっただけ、自分が否定されたわけではないとわかるでしょう。

事実と解釈の混同はネガティブな心境のときによく起こることです。
例えば挨拶をしたのに相手から返事がなかった場合、事実は「返事が返ってこなかったこと」だけなのに、自分で「嫌われた」と解釈してしまいます。結果、自分を責めたり、相手を責めたりしがちです。そうした思いから生まれる自分の態度が原因で相手に嫌われてしまうこともあるでしょう。本当は声が聞こえなかっただけかもしれないのにです。

今ある事実は「失敗したこと」だけ。その評価は自分の思い込みかもしれません。まして失敗を自分の人間的な価値にまで広げるのはやり過ぎです。

事実と解釈を分けて、解釈は自分の思い込みの可能性があることを認識しましょう。

③セルフトークに気づき、言い直す

自分を落ち込ませる大きな要因の一つが、セルフトーク(独り言)です。フッとしたときにでるセルフトークをメモってみましょう。「私はダメだ」「もうおしまいだ」といったような断定的で否定的な言葉は、自分をさらに追い込んでしまいます。

このようなセルフトークを、別の言葉で言い直してみましょう。
「失敗はしたけれど、全部がなくなるわけでもないよね。悪影響はあるかもしれないけど、おしまいではないな」といった具合です。解釈の部分が暴走して、断定的に自分を責めがちなので、解釈のあいまいさを思い出して断定をさけ、否定的な表現を弱めましょう。強めのセルフトークが出るたびに言い直していると、失敗に対する自分のマイナス評価が少しずつ弱まってくるかもしれません。

④暗い感情から抜け出す

重くて暗い気分が失敗からの立ち直りを邪魔することも多いでしょう。こうした感情の渦から抜け出せれば、未来への一歩を踏み出しやすくなります。ただ、このときに気を付けたいのが、つらい感情を抑え込もうとする衝動です。その衝動にのると、つらい気持ちが自分の内側にとどまり表面化する機会を待つようになります。

逆に興味を持ち、その感情に近づいて観察してみると、一時的につらくても自分の心を通り過ぎてしまうもの。そこで感情に名前を付けて観察してみましょう。
例えば失敗して恥ずかしいという思いが渦巻いているとき、「シェイム君」と名付け、どんなときに出没するのか、体にどんな変化を与えるのかを観察します。夜になると、頭に血をのぼらせてシェイム君が来たときに、「あっ、またシェイム君がきたよ。くだらないことを言ってるな」と思えるようになれば、感情の嵐から抜けだしやすくなります。

⑤ネガティブなものを遠ざける

気分が落ち込んでいるときには、ネガティブな情報を集めたり、思い出したりして、それを根拠に判断をマイナスの判断を下しがちです。例えば過去の数々の失敗を思い起こして、「やっぱり自分は無能なんだ」と結論付けたりするのです。気分が落ち込んでいないときは、自分が成功したときの記憶もしっかりと持っていたにもかかわらずです。

だからこそ元気のないときは、ネガティブな情報や情報発信源から遠ざかりましょう。ネガティブなニュースや気が滅入るSNS、ネガティブな人と距離を取ることでネガティブなものに巻き込まれる機会が減り、ネガティブな情報から否定的な判断を下す機会も減らすことができます。

⑥自分を信頼できる理由を探す

失敗する以前は、あなたも自分を信頼していたはずです。その感覚を取り戻すために、自分を信頼できる理由を次の方法で書き出しましょう。

まず自分について信頼できる理由を3つ書きます。例えば「責任感が強い」「いろんな人から意見を求められる」といった具合です。さらに、その3つを補強する過去の経験を書き足します。例えば「いろんな人から意見を求められる」だったなら、「吉岡さんには、A社の担当者とうまくやるコツをきかれた」といった具合です。

この作業を3日続けましょう。少しだけでも自分への信頼を取り戻せたら成功です。

⑦経験から学ぶ

少しだけ失敗の痛手から立ち直れたら、失敗を振り返り、明日の糧になりそうな情報を収集してみましょう。失敗の繰り返しを防止することができるでしょう。
また、失敗が失敗だけに終わるのではなく、明日の成功への糧になると実感できれば、次に失敗しても今回よりも楽に立ち直ることができるかもしれません。

今日は失敗からの立ち直り方をまとめました。どんよりした気持ちと折り合いをつけ、失敗を糧に次の一歩を踏み出したいですね。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:『自己評価メソッド』(クリストフ・アンドレ/紀伊國屋書店)/『科学的に元気になる方法集めました』(文響社/堀田秀吾)/『メンタルマネジメント大全』(ジェリー・スミス/河出書房新社)/「2 Steps for Transforming Self-Doubt Into Self-Confidence」(Jennice Vilhauer Ph.D./Psychology Today)

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