新型コロナウイルスによって、人々の心理的な距離感も変わってきていることでしょう。以前であれば、会って日常会話を交わすことに何の感慨も抱かなかったと思いますが、現在は直接会っての世間話すら限られたものになっているからです。そこで心理的な距離感について考えてみました。
- ビジネスチャットの「距離なし」も
- 距離を詰める4つの方法
ビジネスチャットの「距離なし」も
ネットなどでは「距離なし」という言葉が使われています。距離感に問題がある人を表す言葉で、主にプライベートな領域に入ってくる人を指す言い回しです。実際、距離が近すぎるのは多くの人にとって悩みの種のようです。新型コロナウイルスの影響で、実際に会う機会も減り、距離が近い人の問題も少なくなったかもと思ったら、必ずしもそうではなかったようです。
ビジネスでは業務外のチャットが頻繁に送られてくるといった問題が出ているようです。リモートワークでは雑談も減り、それが仕事に支障となる可能性もあるといったことで、一部では雑談のチャットが推奨されていました。ところがこのチャットで、距離をグイグイ詰めてくる人も。
またラインなどでビジネス関係者と連絡を取っている人も、プライベートと同じようなメールに驚かされるといったことがあるようです。
返信しないという方法もありますが、あまりにしつこいようなら困っていると伝えることも必要かもしれません。
そもそもチャットは言葉が短い分だけ、文脈を読み取れる関係性が大切になります。距離感を間違ってチャットを使い続けると、より不快感が増す可能性があるそうです。
じつは自分が被害者ではなく、加害者になっている可能性があるのが、チャットなどの怖いところです。『どうして言いたいことが言えないの?』(山本美穂子/大和出版)には、距離感に関して次のような注意点が書かれています。
ここで大切なのは、世間一般の人にとっては心地いい距離感が、自分と同じではないかもしれないということ。その逆もまたしかり。
こうした距離感の調整は、相手の顔色を見ながらといったことも多いと思いますが、チャットだと相手の反応が見えにくいと感じることも多いでしょう。だからこそ慎重に距離感をはかる必要がありそうです。
距離を詰める4つの方法
対人距離とコミュニケーションは深い関連性があります。人の距離が1メートルの場合、1週間に少なくとも1回コミュニケーションを取る確率は55%。つまり隣の机の同僚なら雑談をすることもあるといったイメージでしょうか。
ところが30メートル以上離れると約5%になってしまうというのです。
確かに意識的に近づかないと、コミュニケーションを取れない距離ですね。
この実験結果からわかる通り、リモートワークが進めば、職場の仲間とのコミュニケーションの機会は減ってしまう可能性が高くなりそうです。また気軽に会えていた友人との接触も、感染拡大が報じられると控えようという気持ちになるかもしれません。
そんなときに孤独を感じないための方法を、メリーランド州ロヨラ大学のテレサ・ディドナト准教授が提案しています。
① ビデオチャットを使ってみる
Zoomなどを使って友達と会うのは、意外に楽しいもの。自分たちで飲み物を用意して、ネットで飲み会などを開催するのも盛り上がります。美味しい食事が必要なら、みんなで同じ料理を飲食店から注文するといった方法もあります。
② 一緒にゲームをする
オンラインゲームをしながら、コミュニケーションを楽しむといった方法も推奨されています。ゲームをクリアすることに熱中し過ぎるのではなく、会話を楽しみながらゲームすることを心がけるといいそうです。
③ 一緒に歌う
一緒に歌うことで連帯感が高まると、心理学の実験で確認されているようです。ビデオチャットなどをつないで、一緒に歌うというちょっと不思議な集まりを開催してみるのもいいかもしれません。
④ バーチャルイベントへの参加
オンラインの美術館やコンサート、観劇などがけっこう実施されていたりします。またバーチャルの海外旅行なども、意外と安い値段で開催されています。こうしたところに友人と参加するのも楽しいでしょう。
対人関係に活用できる心理学の知識に興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『どうして言いたいことが言えないの?』(山本美穂子/大和出版)