「ポジティブ思考」がとてももてはやされた時期がありました。しかし現在では、ポジティブ思考の短所も指摘されるようになっています。そしてポジティブは思考よりも、記憶に効果があるという研究も出てきているようです。
- ポジティブ思考がマイナスに働くことも
- 禁酒への努力に効果のあった記憶
- 嫌なことがあった日には
ポジティブ思考がマイナスに働くことも
ポジティブ思考が流行ったとき、とにかく悲観論を打ち消して明るく体当たりしようといった行動が、もてはやされました。しかし現在は、ポジティブ思考にはプラス・マイナスの両面があることがわかっています。
では、どんなときにポジティブ思考はマイナスになるのでしょうか?
一つは楽観主義で結果を出せていないタイプの夢想家のポジティブ思考です。行動が伴わない人にポジティブ思考を強要すると、より現実への取り組みが甘くなる可能性があるとのこと。
もう一つはネガティブな感情を持ちながら行動してきて、これまでに結果を出してきているタイプの人だそうです。この手のタイプの人は、常にリスクについて考えて、失敗しないように行動します。そのため心理実験でも、このタイプの人にポジティブ思考を強要すると、パフォーマンスが下がることがわかっています。
マイナス思考で動けなくなる人は、ポジティブな面に焦点を当てて行動すると良いのでしょうが、誰もがポジティブ思考でハイパフォーマンスになるわけではないようです。
禁酒への努力に効果のあった記憶
一方、近年の研究では、ポジティブな記憶を呼び起こすことで、不安やストレスを軽減させ、冷静さを保つ助けになることがわかっています。
ハーバード大学医学部精神科のベティナ・ヘップナー准教授は、薬物乱用に苦しむ500人を対象に実験した結果、幸せな瞬間をとらえた個人の写真を見て、幸せな時代の出来事を説明することで、断酒の決意を新たにすることができたと報告しています。努力を持続するのに、幸せな記憶が役立ったと言えるでしょう。
この実験のほかにも、うつ病を患っている人に、楽しかったときの記憶を呼び覚ますことで、うつ症状が軽減したという報告もあります。また氷水に手を入れてストレスが増した状態で、1つのグループには楽しかった出来事、別のグループには日常的な記憶を思いだいてもらいました。結果、ポジティブな記憶を思い出した方が、ストレスも少なかったことが判明しているのです。
どうやら過去の精神的な喜びは、肉体および感情的な痛みからの回復を助けるようです。
嫌なことがあった日には
以上のような結果から、ストレスがかかったときに幸せだったときの写真を見るといったことも効果があります。さらに効果を高めたいのであれば、当時の喜びを分かり合える人と思い出を話し合うとよさそうです。
またポジティブな記憶にまつわる香りなどを使い、目をつぶって当時の様子を思い出して浸るといったこともプラスに働くようです。
じつはネガティブな思考に支配されると、過去のネガティブな記憶を思い出しやすくなることもわかっています。つまりネガティブな気持ちのときには、心を解放するポジティブな記憶を思い出しにくいのです。だからこそあえてポジティブな記憶を思い出すことで、心の負荷を取り去りましょう。
ポジティブな記憶を思い出す方法は、無理やりポジティブに考えようとするものではありません。ただ思い出すだけで、脳が勝手にポジティブに変わっていくのです。
どうもポジティブ思考が自分に合わないと感じるなら、幸せな時代の写真を持ち歩き、ポジティブな記憶でストレスを発散してしまいましょう。
今日は近年注目を集めているポジティブな記憶についてまとめてみました。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Evoking Positive Memories Is a Powerful Resource」(Denise Winn/Psychology Today)