部下にアドバイスをしたくなることありますよね。効率的ではない仕事の進め方やスマートではない人間関係などなど。自分の若いころと比べてもひどいなと思ったり……。でも、部下にアドバイスするなら守らなければならないルールがあります!
- 「マウントおじさん」になってないか!?
- 上から目線の人に共通する考え方とは
- アドバイスまでの6つのステップ
「マウントおじさん」になってないか!?
「忠告と塩は求められるまで与えるな」という英語のことわざがあります。求められない忠告やアドバイスに、意味もないことがこのことわざからもわかるでしょう。
また、いらぬアドバイスを与えることで、ほかの部下から冷めた目で見られる可能性もあります。
女性誌『BAILA』のネットページ「@BAILA」には、「勘違いな上から目線にモヤッ【マウントおじさん3勢力】の実態」という記事が掲載されています。ここで紹介されているタイプの一つが、「 知識と経験値でマウンティング『教えてあげる勢』」です。
その説明には、次のように書いてあります。
「頼んでもいないアドバイスや、どうでもいい細かいことを注意することで上に立とうとする。『俺は相手のためにいいことをしている』という意識があるため、ありがたがらないと気分を悪くすることも……」
「完全に自分のことだ」と思う人は少ないかもしれませんが、アドバイスで、こんな風に周りから見られているかもしれないことを示す一例でしょう。
上から目線の人に共通する考え方とは
また、アドバイスをしたいという欲求が、本当に部下のことを考えてなのか、改めて考えると自信がなくなる人もいるかもしれません。上に立ちたいという思いが、アドバイスの一部になっているかもしれないからです。
「上から目線」については、米国のワシントン州立大学で面白い実験結果が発表されています。学生200人にさまざまなアンケートやIQテストを実施・分析した結果、「人間は頑張れば将来変わっていけるし、能力も知性も変えられる」と思っている人に比べると、「能力は生まれ持って固定されている」と考える人の方が「上から目線」だと判明したのです。
能力が変化しないと考える人は、そもそも成長への努力をしなくなり、挑戦的なタスクを避けて、単純な作業を繰り返しがちです。結果、失敗のない自分を「優秀だ」と勘違いするのではないかとのこと。
もし部下にアドバイスをしたいと感じたなら、まず自分が難しいチャレンジングな仕事をしているのかを考え、能力は年齢に関係なく成長するものだと捉えているかチェックしてみましょう。
もし、簡単な仕事しかしていない、能力は変えられないと感じるなら、自分が思っている以上に上から目線で仕事をしている可能性があります。安全性など緊急のものでない限りは、部下へのアドバイスは控えた方がいいかもしれません。
アドバイスまでの6つのステップ
とはいえ仕事をしている以上、上司は部下にアドバイスを送る必要があります。失敗に突き進んでいるプロジェクトを、そのまま温かく見守るほど、近年の仕事に余裕はありません。また部下の方からアドバイスを求めてくるケースもあるでしょう。
だからと言って矢継ぎ早にアドバイスするのは、プラスに働きません。アドバイスをしっかりの部下の心に届けるには、6つのステップが必要になるからです。『「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』を参考に6つのステップを紹介していきましょう。
①「解決してほしいのか?」「聴いてほしいだけ」かを判別
部下から面談を求められても、アドバイスがほしいと思ったら間違いです。著者の安達裕哉氏は
「経験的には、アドバイスを好んで聞く人は少数である」
と書いています。解決法を知りたいのではなく、話を聴いてほしいだけの人が多いことは頭に置いておきましょう。
②部下がやりたいことを聴く
部下の話を聴いている中でアドバイスを求められたときでさえ、
「実際に相手が聞きたいのは、『私がやろうと思っていることは正しいかどうか、少し意見がほしい」
だけなのだそうです。
だからこそ「アドバイスがほしい」と言われたときには、「すでにやろうと思っていること(方法)があるのではないですか?」と尋ねるべきなのです。アドバイスがほしいと言われて、ここぞとばかりに話すと嫌われるとのこと。
③「何が引っかかっているのか」に注目する
うまくいきそうなら相談の必要もないでしょう。だから重要なのは、部下が何に引っかかっているのかです。「何か気になることはありますか」といった質問で、問題点を話してもらいましょう。
④相手が本音で語るのを待つ
①~③で部下のほしい解決策がわかったといって、アドバイスの準備が整ったと思ってはいけません。部下が本音を話せるように、しっかりと相手の話に耳を傾けましょう。その上で今までに考えたことや試したことを語ってもらいましょう。
⑤成果が出なかった原因を部下に考えてもらう
なんで思ったような結果が出なかったのかを質問しましょう。話している中で物事の整理が進めば、失敗の原因に部下自らたどり着く可能性も高まります。
⑥自分の意見を言わない
①~⑤でアドバイスを受け入れる土壌は整いました。しかし、ここで自分の意見を言うと反発を招く可能性があります。そこで他人からのアドバイスとして部下に伝えます。
「わたしが以前担当した顧客のケースでは~」
「○○経営者の○○さんが言っていましたが~」
「この本には○○と書いてありました~」
こんなフレーズを使うと、自分の意見としてではなく、アドバイスを送ることができます。「○○してください」「○○すべきです」といった言い方は、相手の心に届く可能性が低いようです。
結局、自らの意見としてアドバイスをすることは、効果を考えるとお勧めでないというわけです。もちろん安全や緊急性を配慮しながらではありますが、面談する時間をつくって部下の話を聴き、問題解決に向けて部下自身が動けるようにサポートすることがアドバイスよりも重要なのです。
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参考:「勘違いな上から目線にモヤッ【マウントおじさん3勢力】の実態」(@BAILA)
「上から目線、やたらとダメ出しする人ほど『考えない人』が多い理由」(高橋洋明 著/DAIAMOND online)/『「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』(安達裕哉 著/日本実業出版社)