心の病気になったとき、会社はどれぐらいフォローしてくれるのでしょうか。判断基準となる判例を紹介しましょう。
- いきなりの諭旨退職処分は認められない
- 会社は積極的に配慮しなければならない
- 心の具合を推測できたという判断
いきなりの諭旨退職処分は認められない
まず、2012年4月の最高裁判決から。システムエンジニアが被害妄想から出社できなくなり、有給40日を消化した後に欠勤を続け、そのことを理由に会社側が諭旨退職処分を下したケースです。諭旨退職とは懲戒解雇よりも1つ下の軽い処分で、定められた期間内であれば自己都合退職が可能な懲戒処分の1つです。
一審は欠勤が職場放棄であるとして諭旨退職処分を有効としましたが、最高裁判決では「必要な場合は、治療を勧めた上で休職処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべき」として、諭旨退職処分の無効を言い渡しました。
精神的な病気だとわかっているのに休職処分にもせず、そのまま懲戒処分を下すのは認められないという最高裁の判断は、メンタル不調者が出社できなくなったときには思い出してほしい判決です。
会社は積極的に配慮しなければならない
もう一つは2014年3月の最高裁の判断。過労でうつ病になった従業員を解雇した会社が損害賠償を請求されたケースです。
この事件では原告である従業員が上司に神経科への通院歴を申告しておらず、原告側に過失があったとして東京高裁は過失相殺での損害額の減額を言い渡しています。
しかし最高裁は病名などはプライバシー情報であり、人事考課などに影響することを考えられるから職場で知られないようにすることは想定されるとしました。さらに「積極的な申告がなくても、会社は労働者の心身の健康に配慮する必要がある」と断じています。
二審である東京高裁の判決、通院の事実や病名を早く申告していれば、病気の悪化を防ぐこともできたとして賠償額の20%カットは、一見すると問題がないようにも感じられます。しかし最高裁判所は、労働者の安全に会社側がより積極的に配慮する必要があると断じているのです。
心の具合を推測できたという判断
この事件では、過重労働により同僚から見ても体調が悪そうだったり、健康診断でもめまいや頭痛・不眠などを訴えたり、当人が業務の軽減を申し出ているなどしており、通院や病名と関係なく原告の具合が推測できたとは思います。
それだけに妥当な判決ではありますが、雇用する企業側とすればメンタルヘルスについて自己申告を超えて把握する必要があるのだという判断がなされたとも言えるものです。
誰もがかかる可能性のある精神疾患は、法律が守ってくれるケースもありますので、ぜひ頭に入れておいてくださいね。