何となく退屈だと思うことは珍しくありません。しかし仕事などが退屈で我慢できないと感じるようなら、少し生活を見直してみる必要があるかもしれません。コロナ下で拡大しているといわる「ボアアウト(退屈症候群)」について解説します。

- 退屈な仕事に賠償命令も
- こんな症状があると要注意
- パンデミックが「ボアアウト」の要因に
- すぐにもできる4つの対策
退屈な仕事に賠償命令も
仕事で退屈だと思った経験は、おそらく誰にでもあるでしょう。しかしフランスの裁判所は、退屈な仕事がメンタルヘルスを害したとして企業に500万円以上もの支払いを命じました。この裁判で話題となったのが、「ボアアウト(退屈症候群)」です。精力的に仕事に取り組んでいた人が燃え尽きたようにやる気を失う「燃え尽き症候群(バーンアウト)」に近い症状を示すと言われています。
この「ボアアウト」という言葉は、2007年にスイスのビジネスコンサルタントによってつくられました。その後、さまざまな研究によって、各企業でその問題が確認されています。フランスでは、労働者の最大30%がそれに苦しんでいるといった報告もあるほどです*1。 また、フィンランドで1万1000人以上の労働者を対象にした調査では、慢性的な退屈が低い自己評価や高いストレスをもたらした可能性があり、労働者の退職につながるとも指摘しています*2。
企業の経営者にとっては、無視できない問題といえるでしょう。
こんな症状があると要注意
「ボアアウト」の症状は多岐にわたっていますが、海外の報道などで目立ったものを紹介しておきましょう。
・慢性的な退屈
毎日のように退屈だと感じるようだと要注意です。仕事などが少なく、勤務時間中にボーっとインターネットなどをして時間を潰しているといったケースもあるようです。
・やる気の喪失
仕事への意欲が低くなり、パフォーマンスも低下します。遅刻などといった形で、やる気の低下が見えることもあるようです。
・自分が成長しないことへの危機感
ずっと同じところを回っているような成長を感じられない自分に、どこか危機意識を感じるようになっていきます。
・不安や悲しみ
人によっては、不安や悲しみを訴える人もいるようです。
・時間感覚の欠如
ボーっと過ごすことが多くなり、時間間隔が狂ってくるといった報告もあります。何をしているのかわからないけれど、いつの間にか時間がたっていたといった状態は要注意です。
パンデミックが「ボアアウト」の要因に
「ボアアウト」の原因として、仕事量の減少や単調な仕事、コミュニケーションの減少などが指摘されています。
そのためパンデミックによる仕事量の減少や、テレワークによる職場の仲間とのコミュニケーションの低下は、「ボアアウト」を強める結果となっているようです。自宅で仕事をすることが多くなることで、プライベートと仕事の区別もあいまいになり、時間感覚があいまいになるといったこともあるようです。

すぐにもできる4つの対策
「ボアアウト」の対策には、以下のようなものがあります。
①コミュニケーションを取る
友人や家族、あるいは職場の人たちと積極的にコミュニケーションを取りましょう。一人で自宅に引きこもるのではなく、他人と会話を交わす中で、どうやってチャレンジ精神を取り戻すのかを考えてみましょう。
②小さな目標を設定する
単調な作業が人を常に退屈にするわけではありません。作業の小さな改善や精度の向上などを通して、自らに課した目標を達成していくことで、仕事の面白味はアップしていきます。
③ライフワークバランスを見直す
仕事と私生活のバランスを見直しましょう。仕事中はしっかりと集中し、終わったら私生活を充実させるといったことが、「ボアアウト」対策となります。新しい趣味を始めるといったことを推奨している記事もありました。
④長期目標を見直す
仕事が自分の人生にとって、どんな意味を持っているのかを考え、長期の目標を再考してみましょう。目標を変更することで、現在の仕事に何を求めるのかも変わってくるかもしれません。
今日は欧米で話題となっている「ボアアウト」についてまとめました。仕事が退屈だということ自体、珍しい話ではありません。しかしメンタルヘルスの不調に向かうなら、何らかの対策が必要になるでしょう。
もっとイキイキと働くための知識が必要なら、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:*1「Worker wins £36,000 payout because job was so tedious he suffered bore out」(Sam Corbishley/METRO)/*2「The damaging effects of ‘boreout’ at work」(Bryan Lufkin/BBC)/「Boreout: how to spot the tell-tale signs and what you can do about it」(Lauren Geall/STYLIST)/「時間の感覚がなくなってきたら、「退屈症候群」になっているかも」(Elizabeth Yuko/Lifehacker)