寂しい人が消費で癒されるといったことが起こります。また消費者の孤独に付け込んで、商品を販売するといった販売手法もあるようです。消費と孤独の危険な関係性についてまとめました。
- 所属意識が刺激されて購入
- SNSでは孤独は癒せない
- ブランド品やキャラクター商品好きは要注意!?
- 孤独な人がターゲットに
所属意識が刺激されて購入
コロナ下で売れた商品の一つに「おひとり様グッズ」があります。これは一人用に開発された炊飯器や焼き鳥メーカー、こたつのように、一人生活を楽しむための商品でした。つまり孤独を楽しむための商品といえるでしょう。「あまり人にも会えないし、居酒屋の雰囲気も恋しいので一人で楽しめる焼き鳥機を買うか」といった具合です。
これらは購入の要因の一つに孤独があることがわかっているものです。
しかし孤独を利用した消費は、もっとひっそりと購買意欲を高めていきます。
その一つが所属意識を刺激されて購入する商品です。
例えば就職活動用のグッズなども、このような商品に入るかもしれません。どんなグッズを買えばいいのかは、「就活グッズ」で検索すればいくらでも出てきます。「就活生」として悪目立ちしたくないという気持ちが、就職してからはあまり着ることがないスーツを求め、その意識を関連会社が盛り上げるという構図です。
もちろん所属意識に基づく消費が悪いわけではありません。というのも寄付といった行為も、こうした心理の延長線上にあると考えられるからです。
SNSでは孤独は癒せない
所属意識やつながりを刺激する商品・サービスとなると、SNSを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかしSNSは孤独感を強めてしまうといった研究結果もあるので、消費ほどは孤独を解消しないとアラシュ・エマムザデ博士は考察しています。その原因は、SNSは対面と比較したときにコミュニケーションの質が低いからとも。
お知らせや「いいね」など賛同を示す機能が、SNSの拡大につながった要因の一つなので、孤独がSNSを始める要因の一つだとしても、そうした心を癒す力が低いということのようです。
ブランド品やキャラクター商品好きは要注意!?
では、どんな消費が孤独をより癒してくれるのでしょうか?
その一つは中古品やノスタルジックな商品だそうです。昔のぬくもりを感じながら購入する行為が、孤独を癒すのは感覚的にもわかりやすいでしょう。
またブランド品やキャラクター商品も、社会的なつながりをつくるそうです。例えばブランドを愛するといった感情的なつながりは、孤独を癒してくれます。キャラクターへの思い入れが強い場合も、商品を買うことで孤独が吹き飛ばされていきます。
こうした行為は、ある程度の孤独を引き受けながら暮らしている現代人にとって、悪いことではありません。ただ人とのつながりをモノに変えてしまうため、モノさえあれば感情的なつながりはいらないといった思考になる危険性があるとのこと。孤独だからモノが溢れるといった状態であるなら、モノの購入が孤独を増加させる悪循環になっていることを理解する必要があるかもしれません。
孤独な人がターゲットに
じつは孤独との消費の関係で、より注意しなければならないのは、孤独の解消を目的として商品を売りつけてくる場合です。
例えば高齢者を対象とした悪質なリフォームなどは、その典型でしょう。そこまで悪質でなくとも、高齢者の自宅で雑談の時間をつくり、最後には金融消費の売るといった営業も、「孤独消費」だと指摘した人もいます。
もちろんキャバクラやスナックなども孤独を癒す場所といった側面があります。先に示したブランド品の購入も、販売員の方とのやりとりが、より孤独を癒すといった場合もあるでしょう。
そう考えると、孤独を埋めるための消費は、モノが有り余る時代の購入の動機として無視できないものとなっているのです。それをすべて無視することは難しいでしょうし、無視する必要もありません。しかし購入することで、よりむなしさを感じてしまうといった気持ちに気づいたら、そうした商品の購入を考え直すといった行動も必要でしょう。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Why Buying Things Makes Us Feel Less Lonely」(Arash Emamzadeh/Psychology Today)/「あなたの「孤独」を埋める者があなたからお金を一番抜き取る。「孤独消費」が21世紀の最大の成長産業だ」(藤野 英人/現代ビジネス)