青いケーキ、水色のチョコレート……寒色系の食べ物を見ると、「なんとなくまずそう」と思ってしまうのはなぜでしょうか。「食欲を減退させる色だから」という考え方もありますが、実は、食べ物がおいしそうに見えるかどうかは、色そのものの心理効果とは違うところにあります。ヒントは、「意外性」です。
- 食欲が増す色は赤って知ってた?
- 食べ物そのものの色が赤なら食欲は?
- 青や水色のお菓子がまずそうに見える理由
- 「意外性」を振り切れれば、新しい味との出会いがあるかも?
食欲が増す色は赤って知ってた?
「食欲の秋」とはいうもののまだ蒸し暑い日もあり、いまいち食欲がわかないという人もいるかもしれません。しかし食はエネルギーの源。日々の激務を乗り越えるためには、しっかりと食べることが重要です。少しだけ食欲と色の関係について考えてみましょう。
さて、巷にあふれるレストランやファーストフードの看板を、よく見てみてください。赤やオレンジ、黄色といった暖色系が多いなと思いませんか。一方で、青や水色といった落ち着いた色味は飲食店の看板ではあまり見かけないものです。
これは、赤やオレンジといった暖色系の色が食欲増進に役立つという心理学的な効果を利用したものです。赤は脳を興奮させる色として知られており、赤色を見ることで空腹中枢も刺激されて食欲が増すことが、広く知られています。
この効果を広告に利用しようとする企業は少なくありません。レストランの看板に限らず、スーパーのお菓子コーナーなども暖色のパッケージにあふれています。青や紫、水色といった包装を見ることができるのは、アイスクリームのコーナーくらいではないでしょうか。寒色系は凉を思い起こさせるので、アイスのイメージにぴったりなのです。
食べ物そのものの色が赤なら食欲は?
暖色系が食欲を増進させるのであれば、看板やパッケージだけではなく、食べ物そのものの色が赤ならさらに効果的といえます。確かに、トマトやカラーピーマンはおいしそうですよね。でも、緑のホウレンソウだって、紺色のナスだって、白い白菜だっておいしそうです。
それに、暖色系のマジックを忠実に守るなら、パッケージと同じぐらい暖色系のお菓子があふれているはずですが、そこまで多くはありません。いくら暖色系が食欲を増進させる色だとしても、そのままいろいろな食品に暖色を採用することを、飲食業界は選んでいないのです。これはどうしてなのでしょうか。
青や水色のお菓子がまずそうに見える理由
日本人が外国に行くと、青や水色のケーキにびっくりさせられることがあります。どうしても食べる気が起こらないという人も中にはいることでしょう。それは、青が食欲を減退させるからでしょうか。
いえ、現地では普通に売られている商品であり、現地の人は違和感なく食べているのでしょうから、色の効果はあまり関係ありません。日常的に青いお菓子を食べることがない日本人としての感覚がしみこんでいると、青のケーキという意外性に、食欲がわかなくなってしまうのです。
その一方で、抹茶味のチョコやアイスを、どうしても受け付けないという外国人がいます。原因は味ではありません。緑色をしているからです。緑のお菓子がない文化圏の人は、抹茶味にためらいを覚えがちなのです。日本人にだって、「ずんだ餅がどうしても食べられない」という人がいるくらいです。緑色の枝豆をまぶしたお餅が、どうしてもおいしそうに見えないというのです。
以上のことから考えると、色そのものが与えるイメージよりも、食品としての意外性が食欲をストップさせていることがわかります。ずんだ餅がダメな人に、「食欲増進の色だから」と、見たことのないような真っ赤なあんこをまぶしたお餅を食べさせようとしても、やはりダメでしょう。
「意外性」を振り切れれば、新しい味との出会いがあるかも?
食欲には「らしさ」が強く関連していて、それは色そのものが与えるイメージより強いらしいのです。レタスらしい緑、ハンバーグらしい茶色、まぎれもなくパンらしい小麦色が、ハンバーガーを私たちの口に運ばせるのです。
しかし、この事実は、こうも考えさせられます。色の意外性を振り切れば、私たちはもっと新しい味に出会えるのかもしれないと。「青いから食欲が出ないのだ」などと決めつけずに、最初は目をつぶってでも、味わってみてはいかが。「意外とおいしい」ということがわかれば、色味に対する偏見はあっさり取り除かれてしまうでしょう。
色に引きずられて、おいしいものを知る機会を逃すなんてナンセンスです。とくに現代では、カラーピーマンに限らず様々なカラフル野菜なども登場しています。ときには冒険して、白いにんじんや赤いオクラ、緑色をしたナスに挑戦すれば、また新しい食の楽しみが広がりますよ!
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『カラー版徹底図解 色のしくみ』(新星出版社)