「無意識のうちに連想によって行動を支配されているかも!」と聞いても、ピンとこない人がほとんどかもしれません。しかし多くの人が思っている以上に、過去に聞いた情報に人は引きずられてしまうものです。その仕組みを解説していきましょう。
- どんな単語を思い出しますか?
- 老人を連想したら歩き方が
- CMなどでも活用されて
- 憧れての人の行動を思い出す
どんな単語を思い出しますか?
さて、問題です。
「シャンプー、リンス、タオル、SO_P」
下線部でピッタリのアルファベットはなんでしょうか? この問題に多くの人が「A」(SOAP=石けん)と答えます。
では、「トマト、パスタ、コーン、SO_P」だと下線部には、どんなアルファベットが入ると思いますか? 多くの人は、「U」(SOUP=スープ)と回答するのです。
これは心理学者のダニエル・カーネマンが実施した「プライミング効果」の実験です。
プライミング効果は、最初に提示された情報によって、脳が引きずられてしまう現象を指します。同じような虫食いの単語でも、事前に洗面用具が並んでいれば石けんを思い浮かべてしまい、食べ物が並ぶとスープを思い浮かべるのは、「プライミング効果」の典型例です。
老人を連想したら歩き方が
でも、単語の連想ぐらいなら、たいしたことないと感じる人も多いでしょう。
「行動が支配される」なんて大げさな!と思ったりしていませんか?
それでは、社会心理学者ジョン・バージの実験ご覧ください。
彼は、実験参加者に5つの単語カードから4つを選び、並び替えて短文を完成させるよう指示しました。ただし片方のグループだけは、高齢者を連想させる単語を集めたのです。例えば「白髪」「しわ」「忘れっぽい」「頑固」などの単語です。もう片方のグループには、決まった連想を促すような単語は与えられませんでした。
その結果、高齢者を連想させる単語を与えられたグループは、そうではないグループより廊下をゆっくり歩くことが確認されたのです。つまり「高齢者」を連想した結果、無意識のうちに高齢者の行動をマネてしまったというわけです。
CMなどでも活用されて
この効果は、商品のPRでも活用されていたりします。7~11歳の子どもにテレビアニメを見せて、その途中にスナック菓子や甘いシリアルのCMを見せた実験では、ゲームなどのCMを見せた子どもに比べて1.5倍も多くスナック菓子を食べたという実験結果もあります。
これだけではありません。
例えばアンケートなどで「健康は大切だ」という設問に丸を付け、自身の健康に意識が向いた後に健康食品を勧められるという商法なども、「プライミング効果」を活用したものです。
お客様に冊子やメルマガを送付し、商品に関連するような情報を届けるのも、連想からの購入を狙ったものだといえるでしょう。
憧れての人の行動を思い出す
さて単語からの連想で歩く速度が変わる程の実験結果を、普段の生活に活用してみてはいかがでしょう。
自分が憧れている人の動作を定期的に思い出すというのはどうでしょうか? 余裕を持ってテキパキと仕事をこなす人の仕事の進め方を思い出すことで、少しずつ行動がマネできるようになっていくことでしょう。
与えられる情報に操られるだけではなく情報を自分自身に与えて、脳に良い影響を与え、日々の生活を充実させようとすることも、「プライミング効果」を知っていればできるようになるのです。
知識を得ることで生活の質を変えていく。心理学は、そんな可能性を持つ学問なのです。