新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークを導入した企業も多いのではないでしょうか。テレビ会議などがなければ、着替えもメイクも必要ないかもと思うかもしれません。でも、普段からメイクしている人は、今こそメイクをしっかりした方がよさそうなのです。
- ON、OFFの切り替えが集中力を高める
- 不安を少なくするため
- 防衛機能を高めるため
ON、OFFの切り替えが集中力を高める
自宅などで仕事をするテレワークは、新型コロナウイルスの蔓延とともに導入する企業が一気に増えてきました。なかなかテレワークに踏み切れなかった企業でも、フロアに一人発熱した人が出て翌日からテレワークに切り替えたといった話も出ています。
さて、実際にテレワークを始めると、「着替えなくてもいいかな」と誘惑にかられることもあるのではないでしょうか。テレビ会議がないなら、メイクに時間をかけるなんてと思う人もいるかもしれません。
これまでOFFタイムを過ごすことの多かった自宅での仕事は、集中力を保ちにくい可能性があります。何となくダラダラと仕事をしてしまっているため効率がよくないといったことも起きるかもしれません。
しかし、そうした時間の使い方は要注意です。
じつは新型コロナ以前に日本企業で導入されてきたテレワークは、テレワークに先進的な企業でさえ月8回程度でした。つまりテレワークを実施していても、実際には上司と一緒に職場で仕事をする時間の方が長かったのです。そして時間によって会社への貢献度を測るという意識も、多くの人が持っていたのです。
パーソナル総合研究所の小林祐児・主任研究員は、こうした人事評価について次のように述べています。
多くの日本の企業で採用されているのは、総合的な能力評価とパフォーマンス評価という「両面評価」の仕組みだ。(中略)日本の従業員は「成果はともかく、毎日頑張った分も評価してほしい」というプロセス面への意識が強い(『東洋経済オンライン』)
しかし新型コロナウイルスの影響によってテレワークの日数が多くなれば、会社が仕事を評価する基準が成果になりがちになります。
先述の小林主任研究員も、次のように結論づけています。
テレワークが主な働き方になると、オフィスにいないことによって「働いているプロセス」が可視化されにくく、当然ながら「パフォーマンス」に偏った評価になる。
つまりテレワークでほとんどの仕事をこなすのが常態化するなら、効率よく仕事をこなしているかで、会社での評価が決まってしまうかもしれないのです。
朝、決まった時間に起きて、着替え、メイクをしてONの状態をつくりあげてから効率よく仕事をこなし、仕事が終わったらOFFモードを切り替える。そうやって出社していたときと同じような集中力で仕事をこなすことは、社会の変化を考慮すると重要ではないでしょうか。
不安を少なくするため
テレワークをしていなくても、今だからこそメイクをした方がいい理由もあります。
オールド・ドミニオン大学のトーマス・キャッシュ氏は、メイクが心理的などんな栄養を及ぼすかを実験しています。彼はスッピンのときとメイクした後で、自分に対する評価がどのように変わるのかを調べました。すると「身体満足度」は大して変わらなかったものの「顔魅力自己評定」は大きく変化しました。
多くの女性はメイクをすることで自分の魅力が増したと感じたわけです。
また「メーキャップの心理的有用性」という論文でも、メイクによって積極性が向上し、高揚感が増し、安心感も増加したと結論づけています。メイクによって自己肯定感が高まれば、安心感が高まるのは当然でしょう。
新型コロナウイルスの蔓延によって、不安感が高まってしまうのは仕方ないかもしれません。ただ、そんなときだからこそ、安心感を高めるように生活したいものです。いつもメイクをしている人は、少なくとも「コロナ禍」が収まるまでは、その習慣を維持した方がよいかもしれません。
防衛機能を高めるため
森地恵理子氏をはじめとする研究者は、「ストレスホルモン」としても知られているコルチゾールを測定し、メイクによってストレスが減少したことを証明しました。さらに、老化、がん、生活習慣病発症などとも関連の深く、ウイルスなどの異物混入でも発生する活性酸素を無毒化する物質が、メイクで増加したことも突き止めました。
森地氏などの研究者は、この結果から次のように結論づけています。
旅行といったストレスを緩和させる行為により生体防御機能が高められる報告と同様に、メイクアップによっても、ストレスが緩和され生体防御機能が高められた
ウイルスと闘った後始末をメイクが助けてくれるかもしれないと聞くと、ちょっとメイクをしたくなったりしませんか?
精神的にも肉体的にも大変な日々が続いています。心と身体にいいことを、無理なく生活に取り入れられたらいいですね。
日常でも役立つ心理学に興味のある方は、こちらもご覧ください。
参考図書:『心理学ビジュアル百貨』(越智啓太 編/創元社)/「メイクアップの心理的効果と生体防御機能に及ぼす影響」(森地恵理子・広瀬統・中田悟・久世淳子)/「メーキャップの心理的有用性(宇山侊男・鈴木ゆかり・互恵子)/「コロナ対応のテレワークに「格差」が生じている/7割以上が「案内なし」、企業・職業・個人間で差」(小林 祐児 著/東洋経済オンライン)