「できない言い訳」はもうやめる!セルフ・ハンディキャッピングに打ち勝つ3つの方法

ちょっと難しめの仕事を与えられたとき、「できなかった場合の理由」ばかり探してしまっていませんか。そんな心理状態とその克服法について紹介します。

  1. 自信がない、プライドが高い、言い訳ばかり……それはあなたの「性格」ではない
  2. バーグラスとジョーンズによるドラッグ実験
  3. 自信が持てない人たちは6割が知的作業を妨害する薬を選んだ
  4. セルフ・ハンディキャッピングに打ち勝つ方法
  5. 自分のために、セルフ・ハンディキャッピングを乗り越えよう

自信がない、プライドが高い、言い訳ばかり……それはあなたの「性格」ではない

あなたが、難しいことにチャレンジする前からできなかったときの言い訳ばかり探してしまうとしたらそれはなぜなのでしょう。「自信がないから」「失敗するとプライドが傷ついてしまうから」と答える人が多いでしょう。そんな人の多くは、自分の性格にうんざりしているかもしれません。自身がなくて、プライドが高くて、言い訳ばかり。まるでいいところのない人間に思えてしまい、それも自信を失う要因になっていそうです。

でも大丈夫、最初から言い訳を用意するのは、あなたの性格のせいではありません。全て、心理効果のなせる業なのです。

あえて自分にハンディキャップを課し、失敗したときの予防線を張っておくことを「セルフ・ハンディキャッピング」といいます。なかには、自分自身の変えがたい性格だと思っている人もいるかもしれません。しかし、多くの人にセルフ・ハンディキャッピングを課す傾向があることが、心理実験からわかっています。

バーグラスとジョーンズによるドラッグ実験

心理学者のスティーヴン・バーグラスと、エドワード・ジョーンズは、次のような実験を行いました。知的作業に影響する薬の効果を実験するという名目で集まってもらった被験者たちに、薬を飲む前後で課題に取り組んでもらったのです。

被験者たちは2つのグループに分けられ、「取り組んでもらう課題は、非常に難しいものです」と説明を受けたうえで、1つめのグループにはとても難しい課題が、2つめのグループには簡単な課題が配られました。

そして課題に取り組んだ後、採点結果が配られました。難しい問題に取り組んでもらったグループには、「あなたは80点です」とウソのフィードバックがなされたのです。被験者たちは、「あんなに難しい問題だったのに割と解けた」という印象を持ったと考えられます。一方で、易しい問題を解いてもらったグループには、実際の成績が渡されました。

自信が持てない人たちは6割が知的作業を妨害する薬を選んだ

次に、薬を飲んで違う課題に取り組んでもらうことになりました。薬は「知的作業を促進する薬」「知的作業を妨害する薬」「知的作業に無関係な薬」の3つのうちから、自由に選べます。

すると、難しい問題に取り組み、優れた点数だったと伝えられたグループの6割が、知的作業を妨害する薬を選びました。これは優しい問題を解いたグループよりもはるかに高い割合でした。

あえて妨害薬を選んだということは、次の試験で自分の成績が下がるのを望んでいるということです。先の成績を「実力よりも高い評価を得た」ととらえ、今度は「実力ではさっきのように成功する自信はない」ため、わざと自分に不利な状況を作り、失敗したときの言い訳を準備したと考えられます。

このように、自尊心を守るために失敗したときの予防線を張る行為は多くの人に見られる傾向のようです。決して、自分の性格のゆえで、治る見込みはないと思い込む必要はありません。

セルフ・ハンディキャッピングに打ち勝つ方法

では、セルフ・ハンディキャップに打ち勝ち、実力で真っ向から勝負できる自分になるにはどうしたらいいでしょうか。実験結果からヒントを得て、3つの方法をご案内します。

①「自分のことなんて、誰も興味ない」と自覚する

セルフ・ハンディキャップは、自尊心を傷つけないためのバリケードです。自尊心は、どうして傷つくのかを考えてみましょう。多くの人は、周りからの評価が下がってしまうことで、自尊心が傷つけられるのではないでしょうか。実は、自分で思っているほど、周りの人はあなたのことに興味がないようです。それを自覚してみましょう。言い訳を用意したとして、その言い訳を、誰もそんなには聞いていないかもしれないのです。

自分に興味のある人が誰もいないというのは、一見寂しいことにも思えます。しかし、実力を試される環境に立たされると、そのことが救いに思えてくるでしょう。誰もそんなには興味をもって見ていないとしたら、気が楽になりませんか。

②できたことを日記に書く

セルフ・ハンディキャップを課すことが日常的になると、失敗ばかりの日々が続くことになります。失敗が続くと、ただでさえ人は自信を喪失してしまいますよね。その自信のなさから、さらにセルフ・ハンディキャップを課す……と、悪循環が続いてしまうのです。

悪循環を断ち切るためには、小さなことでもいいので、成功体験を積み重ね、自信を取り戻すことが大事になってきます。毎日、できたことを日記に書きましょう。「朝起きることができた」「夕飯をつくれた」といった、小さなことでもかまいません。

「体力づくりのためジョギングできた」「お年寄りに席を譲れた」など、「できたこと探し」をしていると、だんだん自信がついてきます。小さな自信が積もり積もれば、やがてできないことに言い訳を必要としなくなってくるでしょう。

③いっそ「自信がないよ!」と言ってみる

言い訳ばかりの人間は見苦しいものです。その見苦しさが恥ずかしいと自覚しているのであれば、言い訳のかわりに「自信がない」と言い切ってみましょう。言い訳をしているときには見向きもしてくれなかった同僚も、弱音を吐かれればサポートしようという気持ちになるかもしれません。なにより、正直な感じが出て好印象です。

自分のために、セルフ・ハンディキャッピングを乗り越えよう

人間が心理的な作用にあらがうことは困難なので、ときには言い訳のための準備をしても仕方ありません。しかし、自分がさらなる成長をしたい、自信をつけたい、言い訳ばかりの人生は嫌だと思うなら、セルフ・ハンディキャップに打ち勝つべきです。

小さな成功体験を積み重ね、自分の気持ちを正直に吐露することを心がけながら生活していれば、自然とセルフ・ハンディキャッピングの機会は減っていきます。正真正銘の実力で勝負するのは、とても気持ちのいいものですよ!

参考:『心理学ビジュアル百貨』(越智啓太 編/創元社)

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