虐待をしている親はどんな気持ちなの?

虐待の報道が相次いでいます。こうした報道では、親がどれだけひどいことをしたのかが繰り返し報じられています。でもこうした親たちは、愛情のかけらもない言わば〝鬼〟のような存在だったのでしょうか?心理学の視点からから考えます。

  1. 心理学が心の状態に迫る
  2. もがきながら暴力をふるう
  3. 一瞬で壊れた気持ち
  4. 子育ては簡単ではない

心理学が心の状態に迫る

千葉県野田市で起こった女児のケースでは、記事を読むのがつらくなるほどの実態が明らかになり、ネットを中心に怒りの声が巻き起こりました。

神奈川県横浜市のケースでは、やけどを負った娘を数日間放置したと報じられました。こちらは事件発覚から日が浅いため、今後、両親のとった行動が徐々に明らかになることでしょう。

こうした事件報道を見聞きしたとき、私たちはこの親たちと自分は違うと思うのではないでしょうか。自分たちと同じではない、自分とまったく接点がないと思ってしまうと、彼らの心の状態は理解できなくなります。

心理学はそうした問題の背後にある心理を明らかにし、同じような事件が起きないよう予防する役割も担っているのだと思います。

もがきながら暴力をふるう

では、虐待をする親の心理は、どのようにとらえられるのでしょうか?

山梨県立大学人間福祉学部の西澤哲教授は、1~3歳の乳幼児を持つ母親650人の調査から虐待の心理と関連する7つの因子を明らかにしています。

1.体罰肯定感

2.自己の欲求の優先傾向

3.子育てに対する自身喪失

4.子どもからの被害の認知

(子どもが自分をバカにした目で見たといった、子どもの存在や行動によって母親自身が被害を被っている認識)

5.子育てに対する疲労・疲弊感

6.子育てへの完璧志向性

7.子どもに対する嫌悪感・拒否感

虐待に関する報道だけを見聞きすると、6の「子育てへの完璧志向性」があることに驚きますが、しかし西澤教授によれば「暴力はふるうまいと心に決めていながら虐待してしまう親の方がはるかに多い」のが実情であり、「多くの親が、苦しみもがきながら我が子に暴力をふるってしまっている」のだそうです。

一瞬で壊れた気持ち

因子を説明されても、その気持ちは理解できないと思う読者が大半でしょう。そこで虐待を受けた立場から、母親の心理を解説しているエピソードを紹介してみます。

自らも継母からの虐待を受け、現在、兵庫県児童虐待等対応専門アドバイザーとして活躍する島田妙子さんは、再婚当初は継母も優しく接してくれていたと説明。大人になって食事をしたとき、継母から次のような告白を涙ながらにされたと語っています。(『発達』157号 「虐待の淵を生き抜いて」)

「ほんまに叩くつもりなんかなかった、でもついカッとなって叩いてしまった瞬間、これまで頑張ってきた気持ちが一瞬で壊れてしまったような気がした」

「『さっきはごめん』、そう謝ろうと思っていたのに、私と目があった瞬間、びくっとしてしまったと。私の目が怖かったそうです。『この子は、もう私のことを鬼やと思っている……』、そう思い、自分のなかに落とし込んでしまったそうです。『ごめん』というはずの彼女の口から出た言葉は、『なんや、その目は』という言葉でした」

理不尽に殴ってしまったからこそ、なんとか正当化したい。結果、甘やかすだけではなく、しつけをするという理屈で、継母の行動はエスカレートしていったようです。

島田さんは、こうした行動を「感情は『クセ』になっていきます」と書いて説明しています。人は理不尽な怒りに身を任せてしまうこともあります。しかし、そこから引き返せるかどうかは、ほんの一瞬で決まることもあります。もし継母が「ごめん」と子どもに謝れていたら、「しつけ」という名の虐待は続かなかったかもしれません。

子育ては簡単ではない

暴力的でもない人が親として追い詰められて間違った方向に一歩を踏み出してしまう可能性があることを、島田さんの体験は教えてくれたように感じます。

では、そんな心理に追い込んでしまう社会的要因は何なのでしょうか? ヒントの一つを書いてみたいと思います。

そもそも子育ては簡単なものではないようなのです。

霊長類の研究によれば、動物園で孤独に育った類人猿などは、その半数以上が育児放棄(人間でいえば「ネグレクト」)をするとのこと(『発達』157号 「行動の脳科学からみる子育てとその問題」)。かなりの確率ですね。

脳が発達したヒトや類人猿は、頭が産道を通るギリギリの未熟児で生まれてきます。そのため出産後に長時間の育児が待っているのです。馬のように出産1時間後に立ち上げるというわけではありません。育児の方法などを社会的に学んでいくことで、ようやくできるのがヒトや類人猿の育児なのかもしれません。

だからこそ親が虐待に向かわないために、社会が親をサポートすることも重要かもしれません。そうした行動は、冒頭に示した西澤教授の虐待の心理的要因「5.子育てに対する疲労・疲弊感」の軽減にもつながります。

今の育児は、昔と違って近所や地域のサポートがないと言われています。しかし、各地方自治体では、住んでいる地域で子育てを手伝いたい人と子育てに困っている親をマッチングする子育て支援を行っています。

育児をしている親たちが追いつめられる前に、なにかできることがあるのかもしれません。

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