生活保護費を搾取した「貧困ビジネス」はどう裁かれた?

経済的に困っている人をターゲットにした「貧困ビジネス」は、近年いろんな形で広がっています。そうした「貧困ビジネス」への初判決を取り上げます。

  1. 現金支給は2万円に
  2. 違法性の高い搾取
  3. 目に触れられなかった寄せ場
  4. ホームレスの6割が精神病に

現金支給は2万円に

2015年3月、さいたま地裁は元ホームレスを劣悪な施設に収容し、生活保護費を不当に搾取したとして、2人の男性に施設利用料金の返還および慰謝料として、約1580万円を支払うよう命じました。裁判長は「最低限度の生活を営む権利を侵害した」と述べ、いわゆる「貧困ビジネス」の不法行為を認めた全国初の判決となったそうです。

原告の2人は路上で勧誘され施設に入居しました。しかし古い木造2階建てのアパートの6畳一間に2人ずつ入居し、クーラーなども設置されていませんでした。食事はカップ麺やレトルトのハンバーグやカレーのみ。にもかかわらず10万円の生活保護費は、役所からの支払い後すぐに施設運営者に袋ごと回収され、現金として支給されるのは約2万円という状態でした。

違法性の高い搾取

就職活動や転居先を探す費用も貯めることができず、原告は生活保護費を搾取され続ける状況にあったそうです。施設側は「最低限の生活環境は用意しており、人権侵害にあたらない」と主張していましたが、判決では「生活保護費を全額徴収しながら、最低限度の生活水準に満たないサービスしか提供せず差額をすべて取得していて、違法性は高い」と断じました。

このような生活困窮者が滞在する施設は、法律では「無料低額宿泊所」と規定されています。もちろん悪質な施設は全体の一部に過ぎないでしょうが、2015年6月段階で同じような宿泊所は全国に537軒もあります。入所者は1万5000人にのぼり、その9割が生活保護受給者です。ただ、それぞれの施設がどのような環境を提供しているのかを行政などが確認するのは難しく、実態は闇に包まれています。

目に触れられなかった寄せ場

もともとホームレスは、寄せ場と呼ばれる日雇い労働の紹介からあぶれた人たちが多数を占めていました。バブルの崩壊とともに単純土木労働が減少したからです。しかしその後、正社員だった人が病気や親の介護、倒産などによってホームレスとなるケースが増えるようになったのです。

じつは日本の経済成長を陰で支えていたのは、日雇い労働の人たちでした。バブル崩壊までの景気変動による雇用調整で、大きな役割を果たしてきたからです。寄せ場という「別世界」に隔離されていたため、多くの人の目に触れられなかったのです。そして現在、「一般の従業員」とホームレスの距離は、昔以上に近づいているといえるでしょう。

ホームレスの6割が精神病に

ただ、厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」によれば、ホームレスの総数はかなり減っています。2016年の調査で明らかになったホームレスの総数は、調査が始まった2003年の約25%にとどまっています。ホームレスの総数が減っている理由は、完全に解明されているわけではありません。地方自治体によるホームレス対策が功を奏していることも間違いないでしょう。ただ貧困問題が解決に向かっているわけではなさそうです。

不安定な雇用状況で働く労働者の割合は確実に増えているようです。自宅を持たず、仕事が入ったときだけネットカフェなどに宿泊する人も少なくないからです。さらに全日本民医連の精神医療委員会が、2014年に研究者たちと行ったホームレスの精神保健調査によれば、34%に知的障害が、42%に統合失調症やアルコール依存症など精神疾患があると分かりました。また、何らかの障害を抱える人は62%にのぼりました。

多くの企業がメンタル不調の従業員を抱え、相当数の非正規雇用者を雇っているとしたら、誰もがホームレスになる可能性があるということになります。そしてホームレスになってしまうと、冒頭で示した「貧困ビジネス」が搾取しようと待ちかまえているのです。

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