今日は調子いいな!って思うとき、絶対にやってはいけないことがあります。やる気を持続させる意外な方法を心理実験から解説します。
- 認知バイアスを消す手洗いの威力
- あなたのヤル気をキープし続ける方法
認知バイアスを消す手洗いの威力
アメリカのミシガン大学のリーとシュバルツが2010年に『サイエンス』誌に載せた実験をもとに、やる気を持続させる方法を説明しましょう。
人間は、自分が選択したものをより魅力的に感じ、選択しなかったものの魅力は低く感じるという認知メカニズムを持っています。
その「認知バイアス」が手を洗うことでリセットされるかどうかを検討しました。
認知バイアスは自分の選択を良かったと思える便利機能として働いています。
晩ご飯を牛丼にしようか、サバ定食にしようかすごく迷ったとしても自分が選んで食べた方を良かった!と思いたい。牛丼を選んでやっぱりサバ定食にすれば良かった……なんて思うのは、すごく心にモヤモヤ感が残ってしまいます。だから、牛丼の方がサバ定食よりいいと自分の中で評価するのです。
実験では大学生40人の被験者に、消費者の動向調査という名目で30枚のCDから上位10枚をランクづけさせるという課題を行わせました。そして、彼らが5位と6位のランクに入れたCDのいずれか欲しい方をひとつだけ持ち帰ることができますよ、と伝えました。
次に、「石鹸の消費者チェックをする」という名目で、実験を行いました。
石鹸で手を洗う実験グループと、石鹸を見たり触ったりするだけで、手は一切洗わな統制グループに分かれて、石鹸の商品としての良さや使いやすさに対しての評価を行いました。
もちろん評価自体はダミー課題で、石鹸で手を洗うことを実験するためのものです。
その後、もう一度先ほど選ばれた10枚のCDのランク付けを再度行なってもらいました。
再度のランク付けでは、人間は自分の選択が正しかったと思いたいという認知的バイアスがあるために、自分が持って帰ることを選択したCDのランクを高く付け直す傾向が出るはずです。
結果は手を洗わずに石鹸を評価した統制グループでは、初めのランクよりも2〜3位高いところに自分が選択して持ち帰れるCDをランク付けしました。
認知的バイアスが見事に現れたのです。
一方、手を石鹸で洗った実験グループでは、そういったランク付けの再編が起らず初めのランク付けも2度目のランク付けも同じでした。
つまり手を洗う行為によって、自分の選択を良かったと思う認知的バイアスが起こらなかったのです!
この実験は、CDではなくジャムでも同じように行われました。もちろん結果は同じ。
口に入れて味わうジャムの評価でさえ、手を洗わなかったグループは自分が持ち帰られるジャムを2度目の実験で高く評価し、手を洗ったグループはジャムの評定順位が変わらなかったのです。
手を洗うと、手を洗う前の認知的な判断の影響をシャットアウトしてしまう、というわけです。
あなたのヤル気をキープし続ける方法
だから、手を洗えば恥ずかしいことも嫌なこともリセットされるかも!
確かにシャワーを浴びたり湯船に浸かったりしても、嫌なことやモヤモヤすることも何だかスッキリしますよね。
でも、それって……そう、手を洗うと元に戻ってしまうんです。
それはやる気だってモチベーションだってそう。嫌なことが消えるのと同じように、いいことだって消えてしまうのです!
よぉ〜し! やってやるぞ!!!とみなぎっているエネルギーも、手を洗うとリセットボタンを押されたようにシュ〜っと普通に戻ってしまうということ。
今日は徹夜で勉強するぞ!と、かなりヤル気がピークに達した時にお風呂に入ってさっぱりしてしまうと、なんだか普通モードに戻り「今日はもう遅いし、早く寝て明日やろう。」みたいになる感じ。
忘れたいような嫌なことの場合には手を洗うことは有効ですが、ヤル気が高い時に手を洗うことは逆効果ということです。
だから調子いいな、ヤル気出てるなって時は手を絶対に洗わずお風呂も入らない方がいいかもしれないんです!
運がいい人と握手した後は手を洗わないでその運をもらう、みたいなことを1人でも実践するイメージです。
ヤル気が出てその高さをキープしたければ、できれば数日間手を洗わずにいられるといいですね。
ただし風邪のリスクは高まるかもしれません。でもあなたのやる気がウイルスをパッと吹き飛ばすかもしれませんね(笑)