天使のような笑顔がかわいかった乳児期が終わると、1歳半から3歳にかけて、いわゆる「イヤイヤ期」が始まります。母親としては苦労も多いですが、成長には大切なこの時期を発達心理学から解説します。
- 発達心理学から見たイヤイヤ期の幼児心理
- 本当は「イヤ」と言いたいわけじゃない
- 「自分でやりたい!」子どもの自主性を尊重する
- 「どっちのズボンにする?」2択にしてみる
- いずれ過ぎるイヤイヤ期、過度に振り回されないで
発達心理学から見たイヤイヤ期の幼児心理
発達心理学から見れば、イヤイヤ期は問題の多い時期ではなく、人間としての成長を喜ぶべき時期です。乳児から幼児へ、なんでも親にやってもらっていた時期から、自分で少しずつやるべきことをやる時期へ。自我の芽生えが、イヤイヤ期にはあります。
イヤイヤ期は成長のあかしなのですから、親は「反抗的だ」「わがままだ」「育て方が悪い?」などと問題視したり悩んだりすることはありません。本当は「イヤ」といわれるたびに、親としては喜ぶべきなのです。とはいえけっこう困ってしまうのも事実。
本当は「イヤ」と言いたいわけじゃない
イライラする気持ちを抑えて、ちょっとだけ幼児の気持ちに耳を傾けてください。本当は自分で着替えをしたいのに、ボタンが留められなかったら、大人でも苛立ちますよね。今日は緑色の靴下が履きたい気分なのに、母親が茶色い靴下を出してきたら「緑のやつがいい」と言いたくもなります。コップから水を飲みたいのに、誤ってコップを倒してしまったら、恥ずかしい気持ちでいっぱいになりませんか。
イヤイヤ期の子どもは、すべてを「イヤ!」で済ませますが、それは伝えたいことを言葉にする力がまだないからです。本当は、「自分で着替えたい」「ボタンが留められなくてイライラする」「緑の靴下を取ってきて」「水をこぼしてしまって恥ずかしい」と訴えたいのに、言葉にできないから「イヤ」と言うしかないのです。
「2歳程度の子どもが、そんなに自己主張が激しいわけないでしょう?」と考えているなら、いつまでもイヤイヤ期のイライラから抜け出せません。子どもは、自分と母親が違う人間だということに気づき始めています。母親のほうも、赤ちゃんと一心同体だったころから一歩抜け出し、ちょっとだけ「子離れ」しなければなりません。
「自分でやりたい!」子どもの自主性を尊重する
母親の対応としては、まず子どもの自主性を尊重することから始めてみてはどうでしょう。大人だって入院した時に、与えられた服を着て、おなかがすいていないのに定期的な食事が供され、眠くないのに「就寝時間です」と言われる生活には長く耐えられません。ストレスがたまる人も多いのではないでしょうか。
子どもの「自分のペースで、できることをやりとげたい」という意思を尊重しましょう。そしてそのためには、時間的な余裕を作ることが大事です。
それまでは、保育園に行くための洗面や歯磨き、着替えなどの支度を母親がやるため、準備時間には1時間程度しかとっていなかったかもしれません。しかし、これからはできるだけ自分でやれることはやらせるという覚悟で、支度開始時間を早めるのです。「ほら、急いで出るよ!」と手を貸してしまうと、子どもの不満が高まります。
また、衣服や日用品を買うときには、ぜひ子どもを連れていき、自分で選ばせたいものです。ここであまり実用的ではないものを子どもが選ぶと、ついつい「こっちのほうがいいんじゃない?」などと口出しをしたくなりますが、ぐっと我慢。親の主観を押し付けては少し控えてみてはいかがでしょう。それに、使っていて不便があれば、2歳児でも自分で気づきますから。
「どっちのズボンにする?」2択にしてみる
例えば、「ズボンを履きましょう」と言って「イヤ!」とわめかれると、「じゃあパンツのままがいいのか」と思ってしまいますが、そうではありません。そのズボンはイヤ、ということかもしれないのです。また、「履くか、履かないか」の2択だと、「履かない」を選ばれてしまったときに、困るのは母親ですよね。
あくまでズボンは履かなければならないという前提で、「どっちのズボンにする?」と聞いてみましょう。着替えだけではなく、食べ物やお散歩の場所などに対しても有効です。
いずれ過ぎるイヤイヤ期、過度に振り回されないで
どんなに大変でも、イヤイヤ期は1年ほどで過ぎ去ります。これからの人生の通過点と考え、心の余裕を持ち、過度に振り回されないようにするのが、イヤイヤ期を乗り切るコツのようです。親のほうがゆったりした気持ちでいれば、「イヤ」を通していた子どもにも「受け入れられている」という安心感が芽生え、だんだん落ち着いてくることでしょう。
参考:『最新現場報告 子育ての発達心理学』(講談社+α文庫),『生涯発達心理学』(有斐閣)