慣れない場所に出かけたとき、周りを見回して他人の行動をマネねてしまうことがありませんか。他人の行動をマネてしまうそんな心理について紹介しましょう。
- 通常の2倍以上の募金を集めた方法は?
- 打ち合わせなしのインタビュー広告が効果的
- いきなり取り付け騒ぎが起きた理由
- 無意識にマネた行動の見直しを!
通常の2倍以上の募金を集めた方法は?
ある大学で募金活動を使った心理実験が行われました。大学のキャンパスで、自分もこの大学の学生であり、同じ学生だから同じ目標を後押しするために募金をするのは当然だとほのめかしました。
その結果、普通に募金を募る2倍以上の額が集まったそうです。
社会心理学者のロバート・チャルディーニは、こうした行動について次のように説明しています。
「どう振る舞えばいいのか考えるとき、一番参考になるのは自分と類似した他者の行動です」
自分の行動に確信が持てない場合、他人の行動をマネることは珍しいことではありません。以前、テレビのドッキリ企画で、いきなりレストランのお客が手を叩いて机の下に潜り込む動作を定期的に繰り返したらどうなるかを検証していたことがありました。
結果、多くの人が意味もわからず、同じような行動を取ってしまったのです。
打ち合わせなしのインタビュー広告が効果的
こうした心理を巧みに使った広告の一つが、「打ち合わせなしでインタビューに答える普通の人々」に商品を褒めさせるものです。その結果、街頭で答える人の話を聞くと、多くの人がその商品を支持しているように感じてしまい、広告としての効果が高まると、ロバート・チャルディーニは解説しています。
『影響力の武器[第3版] ――なぜ人は動かされるのか』( ロバート・チェルディーニ 著/誠信出版)によれば、現代人は多くの意思決定をしなければならず、その負荷を軽減するために無意識に他人の行動をマネてしまうケースが多々あるとのことです。
いきなり取り付け騒ぎが起きた理由
こうした他人をマネる行動はパニックを引き起こすこともあります。
シンガポールで地方銀行の顧客が、いっせいに預金を引き出したことがありました。この取り付け騒ぎがの原因究明には数年がかかりましたが、やっと見つかった原因は予想外のものでした。それは銀行の前にバス停を持っていたバス会社の予告無しのストライキが発端でした。
銀行の前で大勢の人だかりができているのを見た人が、倒産しそうな銀行から預金を引き出そうとしているに違いないと勘違いして、我も我もとATMに並んだのです。
その列を見た人がさらに勘違いして、取り付け騒ぎは広まっていったのだそうです。
無意識にマネた行動の見直しを!
こうしたパニックの教訓として、ロバート・チャルディーニは次のように書いています。
「第一に、多くの人びとが同じことをしていると、私たちは自分が知らない何かを彼らが知っているに違いないと思ってしまうのです。特に自分で確信が持てないときには、群衆の集合的知識を過度に信用してしまいます。第二に、群衆の示す行動は誤りであることが非常に多いのです」
こうした状況を検証しないで、マネることで起こる失敗は、ビジネスでも少なくないのでしょうか。みんながやっているから、とりあえず合わせておけば、そんな行動がマイナスに作用することもあるでしょう。
みんながやっているからという理由で続けてきた行動を、ちょっと立ち止まって見返すだけで、意外な効率化が可能になるかもしれません。
少しだけ余裕のあるときに、自分の業務も見直してみましょう!
参考:
『影響力の武器[第3版] ――なぜ人は動かされるのか』( ロバート・チェルディーニ 著/誠信出版)