ワーク・ライフ・バランスなんて自分には関係ない!と感じてしまうほど、毎日終電まで仕事に追われ、長時間労働によって心がすり減っていると感じたら、まずは相談してみてください。全国どこからでもつながる、労働相談窓口をご案内します。
- 公務員の過労死
- 過労死ラインは月80時間を超える残業
- 複数の相談窓口を押さえておこう
- 長時間労働に悩んだら、まずは相談を!
公務員の過労死
2019年7月、北海道標津町の男性職員が自殺しました。NHKの報道によると、亡くなる直前の1か月間における時間外労働は、なんと149時間にも上っていたとのこと。故人は、上司に病院へ行くことを告げた後行方不明になり、翌日、遺体が見つかったそうです。
「安定している」というイメージがある公務員でさえ過労死する時代であることを、このニュースは告げています。月間にして149時間といえば、ひと月に平日が23日あるとして、一日の残業時間がおよそ6.5時間。朝9時に出勤したら、夜11時半にならないと帰れない計算です。
過労死ラインは月80時間を超える残業
働きすぎにより、心身に影響が出てくるとされている時間外労働時間の目安を「過労死ライン」といいます。過労死ラインは、月80時間とされています。平日を23日とすると、一日の残業時間はおよそ3.5時間になります。あなたが朝9時に出社して、夜の8時半まで帰れないのが日常だとすれば、過労死ラインを超えてしまっている恐れがあるといえるでしょう。
労働新聞社の報道によると、熊本労働局一つで見ても、時間外・休日労働が最も多い社員の時間数が過労死ラインを超えているケースは、3割の企業にみられるとのこと。過労死は、すぐそばで起こりうるといえます。そして、この記事を読んでいるあなたにとっても、他人ごとではないでしょう。
複数の相談窓口を押さえておこう
「自分は過労死ラインを超えているかもしれない」と思ったら、労働者の相談に応じてくれる窓口へコールしましょう。複数の相談窓口を押さえておくと、状況や深刻度に合わせてアクセスする場所を選べます。いずれも秘密は厳守してくれます。
・労働条件相談ほっとライン
厚生労働省が、株式会社東京リーガルマインドに委託している電話相談窓口です。違法な時間外労働や賃金不払いといった、法令違反に関する問題について、専門知識を持つ相談員が対応してくれます。「うちの会社の、これって違法じゃないの?」と疑問を持ち始めたときにおすすめです。匿名相談可能で、日本語のほか、英語や中国語など8言語に対応しています。
・労働相談ホットライン
全国労働組合総連合が行っている、電話・メール相談窓口です。残業手当が支払われない、労働条件を教えてもらえないなどといった事態に、どう対応したらよいかアドバイスしてくれます。問題解決そのものを必要としている人というよりは、「まずは誰かに話を聞いてもらいたい」「どうすればいいか、アドバイスが欲しい」という人に向いています。
・なんでも労働相談ホットライン
日本労働組合総連合会が行っている、電話・メール・LINE相談窓口です。労働者が抱える様々な悩みに対応してくれます。労働相談ホットラインと同様に、「まずは話を聞いてもらいたい、どう対応したらいい?」と悩む人向けです。
・働く人の「こころの耳電話相談」
厚生労働省が、一般社団法人日本産業カウンセラー協会に委託して解説している電話相談窓口です。職場のメンタルヘルスや過重労働による健康障害などについての相談に対応してくれます。病名診断や診療にあたる案内などはできませんが、心の専門知識を持った相談員が話を聴いてくれるため「長時間労働のせいか、眠れていないし食欲がない」「仕事のストレスで涙が止まらない」などといった悩みがある人に向いています。
・法テラス
法テラスは、法務省所管の独立行政法人で、労働関係だけでなく、あらゆる法的トラブルを解決する道案内を行う相談窓口です。電話やメールだけでなく、面談での相談も可能なので「法律の専門知識を持った人に、じっくり話を聞きたい」と感じている人に向いています。
・労働基準監督署(都道府県労働局)
企業が法令違反を侵しているときに、指導や勧告を行う機関が労働基準監督署です。企業側が悪質であると判断した場合には、解決に向けて動いてくれるケースがあります。ただ、動いてもらうためには、企業側が悪質であり、明確に法令を違反しているとする証拠を提出しなければなりません。「毎日、残業時間を記録している」「対応を是正するよう会社側に再三求めても、改善が見られない」といった人に向いています。
長時間労働に悩んだら、まずは相談を!
長時間労働に悩んだら、何より大事なのは、一人で悩まないことです。一人で悩んでいると「結局、自分の手が遅いのが悪いのだ」など、自分に原因があると考え、胸の内に納めてしまいがちだからです。
過労死ラインを超えるような長時間労働が続くと、心身に影響が出始めます。そうなってしまってからでは遅いのです。人生100年時代、健康で生き生きと、長く働き続けるために、まずは誰かに相談しましょう。話をすることで自分の状況が客観視できるという利点もあります。
参考:「町職員自殺 月間の時間外労働149時間 北海道 標津町」(NHKニュース)/「長時間労働 52%で違法な時間外が発覚 熊本労働局 平成30年度・監督結果」(労働新聞社)