AI(人工知能)失業時代が到来する前に身につけたいエモーショナル・インテリジェンスとは

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近い将来、AIの普及でさまざまな職業が不要になるといわれています。特にホワイトカラーの労働者が生き残っていくために必要とされるのが、エモーショナル・インテリジェンス(EI)です。EIとは何かを解説します。

  • 反復労働、マニュアル仕事が多い人は危険!
  • 鍛えるべきは、頭脳よりもハート
  • エモーショナル・インテリジェンスとは、「感情的知性」のこと
  • 心の知能を表す5つの因子に注目し、磨きをかけよう

反復労働、マニュアル仕事が多い人は危険!

AIが得意なことを考えれば、どんな仕事がAIにとってかわられるのかが見えてきます。人工知能はあらかじめ手順や考え方が定められた仕事を、正確に迅速に行う能力が優れています。野村総合研究所によると、AIや機械に奪われる仕事の例として「レジ係」「集金人」「レストランの案内係」などが入っており、これらについては機械的なサービスでいいと経営者が考えればAIに代わる可能性が高いのではないでしょうか。

また、AIは膨大な情報の中から瞬時に正しいデータをたたき出すことのできる存在です。つまり、これまで「膨大な量の知識を詰め込んで(あるいは知識を得るのに正確なツールの存在を知って)いるからこそなれる専門職」であった職業は、AIにとってかわられる可能性があります。ホワイトカラーで、知的労働を行っている人こそ危ないということです。

先に述べた野村総合研究所のリストには、「一般・医療・会計監査の事務員」「CADオペレーター」などが載っています。また、弁護士補佐や社長秘書など補助的な仕事、会議の招集などの役割しかないような管理職といった仕事も危険視されています。豊富な経験や知識が必要であっても、反復労働やマニュアル仕事が多い人は要注意ということです。

鍛えるべきは、頭脳よりもハート

ホワイトカラーの仕事が危ないとわかっていても、「じゃあ、どうすればいいの?」と考え込んでしまいますよね。私事になってしまいますが、筆者は2019年の冬に「転職しよう」と思い立ち、日本一規模の大きい転職サービスに相談を持ち掛けました。担当者が開口一番、このように言ったことを覚えています。

「あなたの得意な事務系の仕事の多くはAIに奪われてしまうけれど、営業事務だけは別です。営業事務の仕事を目指されませんか?」

営業事務とは、外回りが中心の営業担当者をサポートする仕事です。もちろん一般事務と同様に書類の作成や受発注指示なども行いますが、営業担当者が不在のときに顧客とコミュニケーションをとることも要求されます。

営業事務は、顧客にとってはいわば会社の窓口。失礼のないよう、そして交渉ごとが円滑に進むよう、上手にサポートしなければなりません。顧客ごとにイレギュラーな対応が必要なときも、臨機応変に仕事ができる能力が求められます。

顧客との密なコミュニケーションや、臨機応変な対応は、まさしくAIが苦手とすることなのです。他にも、人と密接にかかわる仕事であるカウンセラーや介護士、保育士などの仕事は、AIにはできないだろうと言われています。人の心のちょっとした変化や、突発的な事故に、AIは対処できないためです。

ようは、AIに仕事を奪われないために鍛えるべきなのは、「頭脳よりもハート」ということなのかもしれません。

エモーショナル・インテリジェンスとは、「感情的知性」のこと

心の機微が大切な仕事が有利といっても、誰もが保育士や介護士になれるわけではありません。多くのホワイトカラーの人たちは、今のままのスキルや経験を活かしながらAIに勝る仕事をするにはどうすべきかを考えなければなりませんよね。キーになる能力が、エモーショナル・インテリジェンスです。

エモーショナル・インテリジェンスとは、「感情的知性」のこと。通称EIと呼ばれ、EIの「知能指数」はEQと訳されます。通常、知能指数といえばIQですが、EQはIQの感情バージョンというとわかりやすいでしょう。他人の感情を理解し、自分の感情をコントロールする知能のことです。

EIは、人と密に接する職業に必要なのはもちろんのこと、優れたリーダーなどにも必須の能力です。他人の感情を深く理解することができれば、部下を理解し、適性を見出し、育成できる管理職として活躍することが可能になります。これはAIにはできないことです。

また、人を行動に駆り立てるのは、感情に他なりません。人がどのようなことをしたときにどう考え、思い、どんな感情に至るのかをきちんと理解できている人は、どんな業界においても、誰とでも協働可能な人材として重宝されるでしょう。

心の知能を表す5つの因子に注目し、磨きをかけよう

では、何をすればEIを磨くことができるのでしょうか。世界にEI、EQという概念を知らしめた第一人者、ダニエル・ゴールマンは、「EIは習得可能であり、磨き上げることができる」といいます。EQを構成するのは、次の5因子です。

因子 定義 特性
自己認識 自分の気分、感情、欲動と、これらが他者に与える影響を認識し、理解する能力 自信がある 現実的な自己評価ができる 自分を笑い飛ばすことのできるユーモアがある
自己統制 破壊的な衝動や気分をコントロールする、あるいは方向転換する能力 行動する前に考えるため、慎重に判断をする性向 信頼できる、一貫性がある 不確実なことにも対応できる 変化に対して柔軟
モチベーション (動機付け) 金銭や地位以上の何かを目的に、仕事をしようとする情熱 精力的に粘り強く目標に到達しようとする性向 強い達成意欲がある 失敗に直面したときにも楽観的でいられる 組織にコミットする
共感 他者の感情の構造を理解する能力 他者の感情的な反応を受けて他者に対処する技能 優れた人材を育て、つなぎとめておける 異文化に対して配慮がある 顧客へのサービス精神がある
ソーシャルスキル 人間関係のマネジメントとネットワーク構築に長けていること 合意点を見出し、調和を築く能力 変化をリードできる 説得力がある チームを構築し、引っ張っていける

(『マネジャーの教科書 ハーバード・ビジネス・レビュー』より引用し表を作成)

ゴールマンは、『マネジャーの教科書』のなかで、次のような例を示し「EQは学習によって習得できる」と書いています。


周囲の人に対する共感度が低いと同僚から思われている経営幹部がいるとしよう。彼女の欠点は、他人の話を聞こうとしないことだった。(中略)これを直すには、まず変わろうとする意欲が彼女自身になくてはならない。次に訓練と社内のフィードバックが必要である。彼女が人の話をよく聞いていないとわかったら、同僚かコーチがそっと合図を送るのである。すると、彼女は相手の話を最初から聞き直さなければならない。つまり人の話を理解する能力を発揮させるようにするのである。

このように、職場の同僚の力も得ながらEIを獲得し、EQを高めることができるのであれば最高ですね。5つの因子のうち自分に足りないものがあると感じたら、自分の努力や周囲の力を借りながら、意識して補足していくようにしましょう。AI失業時代まで、時間はまだあります。

EQでも重要な「共感」や「ソーシャルスキル」を高めたいと感じるなら、こちらをクリック!

参考:『マネジャーの教科書 ハーバード・ビジネス・レビュー』ダイヤモンド社 /「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」(野村総合研究所)/「日本人はなぜか“反復労働”を好む――人事クラウドの先駆者が説く、知識労働の生産性を高める方法」(北原佳郎/ログミー)/「EI(感情的知性)を高める3つの自問」(ダニエル・ゴールマン/ハーバード・ビジネス・レビュー)

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