新型コロナの影響から自身の雇用に不安を感じる人が増えているようです。そうした中で注目を集めているのが「学び」です。自身の未来のためにコツコツと勉強する人が増えているのです。「でも、やる気が……」という方に、「学び」を継続させるための勉強メソッドを紹介しましょう。
- コロナ禍で多くの人が学びをスタート
- モチベーションに頼るのは間違い
- 意志力の敵は5つ
- バカバカしいほどの小さなステップで!
コロナ禍で多くの人が学びをスタート
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が民間企業で働く約4,000人を対象とした調査によれば、新型コロナウイルスが「雇用や収入に影響があった」と、約4割の人が回答しているのです。
またビジネススクールなどを運営する「グロービス」は、今年2月の会員数が5万9000人だったのに、9月1日には会員数が14万人を超えたと発表しています。これまで多かった営業職だけではなく、労務関係や販売職など多様な職種の人が受講し始めたとのことです。
雇用に対する不安の高まりとともに、在宅勤務などによって時間の確保が以前よりしやすくなったこともあるのでしょう。社会人の学習熱が高まっているのです。社会のあり方が大きく変わっていく中、自身の成長に意識を向ける人が増えてきたといえるでしょう。
モチベーションに頼るのは間違い
こうした流れに乗り遅れたくないと思う人は少なくないでしょう。でも、実際に勉強が続くのか不安という人も多いのでは? 特にモチベーションの維持は心配になるかもしれません。
しかし米国在住の自己成長メソッドの専門家であるスティーヴン・ガイズ氏は、そもそもモチベーションに頼るのが間違っていると自著で指摘しています。
モチベーションを使う方法がうまくいくのは、エネルギーがあり余っているとき、健康的な考え方をしているとき、ほかに大きな誘惑がないときに限ります。
つまり、よほど気力が充実した日々を過ごしていないと、勉強を維持し続けるのは難しいものなのです。
また南カリフォルニア大学の心理学者ウェンディ・ウッド教授によれば、習慣的に行動するときは、感情的な反応が乏しいことを明らかにしています。日々勉強する習慣を身に付けるには、高いモチベーションでテンション高く勉強に取り組むより、淡々と机に向かった方がいいというわけです。
意志力の敵は5つ
スティーヴン・ガイズ氏が習慣化のために勧めているのが意志力です。たしかにやる気が起きないときでも、意志の力で続けることができれば三日坊主で終わる可能性は低くなりそうです。
ただし意志力も常に高いわけではありません。
じつは意志力を弱める5つの原因を心理学が明らかになっています。
①努力
②困難の自覚
③否定的な感情
④主観的な疲れ
⑤血糖値
①~③は、勉強が楽ではないと感じると心に湧き上がってくるでしょう。日々のツライ努力は「面倒だ……」「資格取得はけっこう大変だ」「教科書を開くのも嫌だ」という気持ちを誘発します。社会人の勉強がなかなか続かない原因の一つは、日々忙しいのに楽しいとはいえない勉強が意志力を弱めてしまうからでしょう。
④については、少し説明が必要でしょう。
注目すべきは「主観的な」という言葉です。実際に疲れているかが問題ではなく、「疲れ」を感じているかどうかが問題なのです。
「大変な仕事が待ち構えていると思うだけで、エネルギーレベルに影響を与える」
とスティーヴン・ガイズ氏は解説しています。
⑤は生理的な問題ですが、人は血糖値が低いと疲れを感じ、意志力も弱くなります。つまり意志力を保つためには、血糖値が下がり過ぎないことも重要なのです。
バカバカしいほどの小さなステップで!
さて、勉強が楽しければ問題はありませんが、先に説明した通り、面倒だと感じるような種類の学習は意志力が続かないかもしれません。その対策としてスティーヴン・ガイズ氏は、日々の目標値を極力小さくして、強い意志力を使わずに習慣化することを勧めています。
筆者は1日1回の腕立て伏せを目標として掲げ、半年後にはスポーツジムに通うようになっていたというのです。「バカバカしいほどの小さなステップ」を目標として掲げると、余力のあるときは、それ以上の運動をしてしまうのだそうです。その上、小さな習慣は徐々に生活の一部となり当たり前の習慣となるそうです。
学校に通い始めた1週間は10ページずつ問題集を解いていたのに、気が付いたら問題集を開けてもいないといったことが起きないのが、この「小さな習慣」の特徴です。
英語であれば、毎日英単語を1つ覚えるなど、10分以内で終わるものに設定して、とにかく続けましょう。自己肯定感を保つためには、95%ではなく100%の達成が大事とのことなので、それこそお酒に酔ってしまってもできるぐらい簡単な目標設定にしてみてください。
そんなゆっくりしたペースだと勉強が進まないと思う人もいるかもしれません。そんなときは、モチベーションを頼りに高い目標を設定した過去を思い出してみてください。
重要なのは投げ出さないことなのです。
心理学の資格に興味のある方は、こちらもご覧ください。
参考:『日経新聞』(2020年9月3日)/『小さな習慣』(スティーヴン・ガイズ/ダイヤモンド社)