マリッジブルーに悩んでいる人は少なくありません。しかし、つい最近まで幸せだと感じていたのに、どうしていきなり不安に襲われるのでしょうか?その心理と対策を解説していきます。
- マリッジブルーの原因は「距離」
- 日にちが近づくにつれて捉え方が変わる
- こんなマリッジブルーは気を付けて!
- マリッジブルー4つの対策法
マリッジブルーの原因は「距離」
まず、初めにお伝えしたいのは、とにかくマリッジブルーを経験している人が意外なほど多いことです。2010年に結婚情報誌『ゼクシィ』が行った調査では、男性では48%、女性だと76%もマリッジブルーを体験しているのです。
つまり女性なら4人のうち3人がマリッジブルーになっていることに。
では、どうしてこんな心境の変化があるのでしょうか?
少し前までは結婚の幸せ気分にウキウキしていたはずなのに……、と戸惑う人も多いでしょう。
15年間に3件もノーベル賞受賞を生み出している「経済行動学」によれば、マリッジブルーは「解釈レベル理論」で説明できるそうです。
『世界最前線の研究でわかる! スゴイ! 行動経済学』(橋本之克 著/総合法令出版)は、その「解釈レベル理論」を次のように解説しています。
人々は時間的に遠い対象に対しては、より抽象的・本質的・特徴的な点に注目し、逆に時間的に近い対象に対しては、より具体的・表面的・瑣末的(さまつてき)な点に注目します」
つまりプロポーズを受けたときは、結婚式まで半年や1年あるので、美しいウェディングや大好きな恋人との楽しい新婚生活などを夢見て過ごすのです。しかし結婚式が近づいてくるにしたがって、そんなフワフワした想像がかき消されてしまうというわけです。
招待状はどうする、誰を呼ぶ、予算オーバーになりそうなのをどうする、婚約者の手際の悪さに幻滅するなどなど。より具合的な問題と不安が、マリッジブルーを引き起こすのです。
また「解釈レベル理論」では、時間的な距離だけが問題ではなく、心理的な距離も問われます。例えばネットで検索したモニターで見ただけのウェディングドレスは心理的な距離が遠いのですが、実際に試着すると心理的な距離はぐっと縮まり、「具体的」「表面的」「瑣末的」な問題に注目するようになります。
「思った以上に自分の体型が出てしまった」「写真で見るより安っぽい感じがした」「もう10万出せば素敵なドレスを着られるのに……」などなど。
これもまたマリッジブルーに直結しそうな内容ですね。
日にちが近づくにつれて捉え方が変わる
しかも「解釈レベル理論」は、物事の捉え方を変えていきます。距離が遠い場合は、「なぜそれを行うのか」と考え、近くなると「どうそれを行うのか」を考えるようになるのです。
具体的に考えてみましょう。
プロボーズされたとき結婚式について、「なぜ結婚式をするのか」を考えます。それは「愛の証」だったり、「お披露目」だったりするでしょう。しかし結婚式が近づくつれ、「どう結婚式を行うのか」に考えが移っていきます。その答えは、「お金の節約するために席次表などのペーパーアイテムを、仕事が終わった後に自分で作る」だったりするのです。
同じようなことは、結婚生活にも起こります。
プロポーズ直後は、「なぜ結婚するのか」を考えるので、「恋人と暮らしたいから」といった答えになるかもしれません。それが「どう結婚生活をするのか」となると、互いの細かな感覚やルールの違いなども気になってしまうでしょう。 これでは、結婚式が近づくにつれ、憂鬱になるのも仕方ないのかもしれません。
こんなマリッジブルーは気を付けて!
では、マリッジブルーに、多くの人はどのように対処しているのでしょうか?
ぐるなびウェディングの「マリッジブルーからの解放~男女100人アンケート結果~」によれば、「自分自身で妥協した」が85%、「とことん話し合った」が15%となっています。
ほとんどの人が自分で折り合いをつけてマリッジブルーを乗り越えているようです。
しかし、ここで問題があります。
そもそもマリッジブルーは結婚を控えた人が誰もが感じる不安で、結婚生活そのものへの危機を感じているわけではない、と言い切れるのでしょうか? たんに新しい生活への不安であれば、実際に始まってしまえば乗り越えられることも多いでしょう。しかし、それが将来の離婚につながるような危機に対する不安だとしたら、結婚前にその思いをしっかりと検討する必要があるでしょう。
カリフォルニア大学のThomas Bradbury教授は、新婚数ヵ月以内の232組の夫婦に、「結婚前に不安を感じたのか」を質問し、その後半年ごと4年間も夫婦への聞き取り調査を続けました。
その結果、夫の47%、妻の38%が不安を持ったと答え、妻が不安を感じていたカップルの離婚する確率は、不安を持たなかった妻より2.5倍も高い結果となりました。
もう少し細かく数字をあげると、両方とも結婚を感じていなかったカップルは、4年以内に6%離婚し、妻が不安を感じた場合は18%が離婚、夫婦そろって不安を感じていた場合は20%が離婚しているのです。
さて、この結果をどのように考えるべきなのでしょうか?
まず、男性のマリッジブルーは、結婚生活に大きな影響を及ぼす可能性が低いということです。離婚の危機を感じ取っていないケースが多いので、現実と折り合いをつけていけばいいでしょう。
しかし女性が不安を感じたときは、将来の離婚危機につながるような何かを見つけている可能性があります。
ただし、この調査が実際に結婚したカップルにインタビューしていることには注意が必要です。というのもマリッジブルーが、結婚生活ではなく、結婚式に関連している場合は、この調査と違う結果になると予想されるからです。意外とやるべきことが多い結婚式。仕事が忙しいと、結婚式の準備にストレスを感じることもあるでしょう。
こうした不安と結婚生活に対する不安は区別した方がよさそうです。
マリッジブルー4つの対策法
さて、マリッジブルーの対策についても、紹介しておきましょう。
①認識が変わっていることを理解する
結婚が近づくにつれて、捉え方も見え方も変わることは仕方ないのだということを理解するだけで、随分と気持ちが違ってくるかもしれません。多くの人がマリッジブルーに苦しんでいるのであり、自分だけが特別ではないこと。そして夢物語だった結婚が現実に変わっていく変化に戸惑っていることを理解しましょう。
そんな気持ちの変化が起きるのも、結婚への道なのかもしれません。
②友達などに相談する
ぐるなびウェディングの「マリッジブルーからの解放~男女100人アンケート結果~」によれば、「マリッジブルーのことを誰かに相談しましたか?」という質問に、友人が39%、母が18%、同僚が19%となっています。ツライ気持ちを抱え続けるのではなく、とりあえず気持ちを吐き出してみることで、違った観点から結婚を捉えることができるようになるかもしれません。
まず手掛けたい対策は、相談でしょう。
③婚約者と話し合ってみる
マリッジブルーの解決に「とことん話し合った」人は、15%しかいないと先ほども書きました。それは結婚前にことを荒立てたくないといった気持ちからくるのかもしれません。しかし結婚式ではなく、結婚生活に不安を感じている女性は、問題解決に向けて話し合った方がいいかもしれません。
新婚カップルを調査したThomas Bradbury教授も、「結婚を止める必要はありませんが、問題解決にむけて取り組むようにしてください」と語っています。
ただ、「妻が不安を感じた場合は18%が離婚」しているとは言っても、逆に言えばほとんどのカップルが離婚していないのも事実です。あくまでも統計上は通常より離婚のリスクが高いというだけです。だからこそ結婚前にしっかり問題に取り組めば、さらにステキな結婚生活が実現できるかもしれません。
④同棲してみる
一緒に暮らしてみて、気づくことは意外にあるものです。
じつはThomas Bradbury教授の研究が2012年に行われたものであり、現在の米国では同棲する人が多いので、このような調査にならないだろうといった記事も見かけました。(Getting ‘Cold Feet’ Is A Sign Of Trouble Ahead〈『BUSINESS INSIDER』〉)
話し合っても不安が晴れないなら、期間限定や曜日限定でもいいのでも、一緒に住んでみるのもいいかもしれません。
今日はマリッジブルーの原因と対策、注意するポイントについて書いてみました。結婚前は意外に大変なことも多いと思いますが、ステキな結婚式と結婚生活の参考になればと思っています!
心理学やカウンセリングに興味のある方はこちらをご覧ください。
参考:『世界最前線の研究でわかる! スゴイ! 行動経済学』(橋本之克 著/総合法令出版)
マリッジブルーからの解放~男女100人アンケート結果~(ぐるなびウェディング)
「Getting ‘Cold Feet’ Is A Sign Of Trouble Ahead」(BUSINESS INSIDER)
「Should I marry him?」(UCLA Newsroom)