7月1日からコンビニエンスストアなどでもレジ袋が有料になり、レジ袋を巡るハラスメント「レジハラ」が急増しています。どうして数円のレジ袋代にキレてしまうのでしょうか?その心理を探ってみました。
- レジハラ3つのパターン
- 近年増加する「カスハラ」
- 欲求不満が怒りに火をつける
レジハラ3つのパターン
「レジハラ」とは「レジハラスメント」の略で、レジで起きるハラスメントを指します。
ハラスメントとは、「相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること」ですから、有料化に怒って怒鳴りつけるお客は「レジハラ」そのものでしょう。
レジ袋有料化後の「レジハラ」急増は、テレビの情報番組などでも紹介され、大きな話題となっています。
「レジハラ」について書いた記事などによれば、「レジハラ」には主に3つのパターンがありそうです。
①有料化に怒る
これまで無料だった袋がいきなり有料化したことに対する怒りをぶつけてくるタイプです。わずか数円ですが、無料だったサービスが低下したことが我慢ならないのでしょう。
②レジの遅さに怒る
持参したエコバックへの商品詰めは、お客自身で行うよう指導している会社もあります。その結果、レジの進みが遅くなり、列に並んでいるお客が怒りだすケースがあるようです。
③レジ袋が必要か聞き直されて怒る
「レジ袋は有料になります」と案内した定員に、「結構です」と答えた場合、袋が「いらない」のか「いるのか」わかりにくいですよね。そこで改めて必要かをたずねたところ怒りをぶつけられるといったことが起きているようです。
どれも「怒るようなことか?」と感じる人が多いと思いますが、そんな些細な事柄が怒りに火をつけてしまうようなのです。
近年増加する「カスハラ」
「レジハラ」は店員がお客から受けるハラスメントですので、「カスハラ」(カスタマーハラスメント)の一部だといえるでしょう。
じつはこのカスハラ自体、近年、増加傾向にあります。
2019年12月に株式会社エアトリが、20~70代の男女796人に実施した「『カスハラ』に関するアンケート調査」によれば、接客業経験者で「カスハラ」を受けたことがある人は、47.1%にのぼりました。また、「カスハラ」が昨今増加していると感じるかという質問には、62.3%が「感じる」と回答しているのです。
さらに「カスハラ」の加害者の性別と見た目の年齢をたずねてみた結果、最も多かったのが「50代男性」、続いて「40代男性」そして「60大男性」となりました。中高年男性がかなりの数を占めることがわかるでしょう。
では、どんなタイプが怒りを爆発させるのでしょうか?
シニア産業カウンセラーである宮本剛志氏が書いた『怒る上司のトリセツ』によれば、40・50代男性の怒りっぽい人には、3つのタイプがいるようです。
①「強い信念がある」タイプ
「仕事ができる人」であり、その価値観を前提とした動きを相手にも求めてきます。こうすべきと信念があり、「そんなこともできないのか」といった怒りが内部で渦巻いているとのこと。
②「ストレス抱え込み」タイプ
家庭や職場でのイライラやストレスを、他人で発散するかのごとくキレてしまうタイプです。いわば八つ当たりですが、コロナ禍によってストレスが増えてくると、こうしたタイプは多くなりそうです。
③「好き嫌いで決める」タイプ
受け答えの態度が気に入らないからと怒るタイプで、同じ言動でも人によって態度が変わるそうです。
「レジハラ」を含む「カスハラ」は、「お客様第一主義」で顧客サービスを強化した結果とも言われています。「お客は偉い」といった間違った思い込みが、上記のようなタイプの怒りの沸点を低くしているのでしょう。結果、レジ袋の有料化といった些細なことで怒り出してしまうようです。
カスハラ対策について知りたい方は、こちらもご覧ください。
知っておきたいカスハラ対策と苦情を言いやすい人のタイプ
欲求不満が怒りに火をつける
心理学博士の榎本博明氏は、『中高年がキレる理由』(平凡社)で、中高年がキレる理由は、心理学の「欲求不満―攻撃仮説」で説明できると書いています。中高年に厳しい社会変化が起きているため、欲求不満が高まり、より攻撃的になっているのだそうです。
上記のタイプで言えば、②の「ストレス抱え込み」タイプはもちろんのこと、①や③のタイプであっても、現実がうまく回っていればレジで店員を怒鳴りつける必要がないので、やはり何かしら欲求不満を溜めていると考えられるのではないでしょうか。
だからといってレジハラは許される行為ではなく、限度を超えれば警察沙汰になる可能性もあります。店で怒鳴ってしまった経験のある人は要注意でしょう。
じつは
「イライラしてキレやすい人は、ネガティブな思いを反芻するクセを身につけていることが多い」(『中高年がキレる理由』〈榎本博明/平凡社〉)
そうです。ネガティブな思いを常に持っているため、ちょっと腹の立つことがあると簡単に我慢の限界を超えてしまうとのこと。
イライラ体質を改善したいなら、ネガティブな状況にポジティブな意味を見出すようにしたり、気分転換に力を入れるなどして、ネガティブなことを思い出して悔しがったり、腹を立てないようにした方がいいと榎本氏はアドバイスしています。
企業のハラスメント対策やハラスメントを受けた人のケアなどの分野で活躍しているカウンセラーについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
参考:『怒る上司のトリセツ』(宮本剛志/時事通信社)/「キレる中高年に従業員が潰される!増えるカスハラ問題」(河合 薫/『日経ビジネス』)/『中高年がキレる理由』(榎本博明/平凡社)/「もう限界 『レジ袋有料化』でコンビニでの「レジハラ」横行が激増 店員が恐れる“キレる”客」(TABLO)