ふと気が付いたら昔からの友人と疎遠になり、恋人に人生を支配され、追い詰められたような気持ちになっている。そんなことがあったなら、それは「ガスライティング」かもしれません。最近、耳にすることも多くなった精神的DVの一種「ガスライティング」についてまとめました。
- 映画に由来した精神的DV行為
- ウソをつく
- 被害者が孤立する
- 被害者の責任にする
- 繰り返す
- 大事なものを攻撃する
- ガスライティングへの対処法
映画に由来した精神的DV行為
2018年英国で流行したガスライティングは、『ガス燈』という映画に由来したものです。この映画は、妻が夫の言動によって支配される様子を描き出した作品。妻のものを隠したり、奇妙な音を立てたりといったことで妻の不安を煽る一方で、妻の訴えを勘違いや記憶の喪失だと言い募り、徐々に精神的に追い詰めていきます。
間違った情報を強要されているうちに、自分のしていることが信じられなくなり、相手に依存し支配されていく。それがガスライティングです。
その特徴の一つは、時間をかけて行われること。そのため被害者も気づかないうちに、相手に反論すらできないような支配的な関係に持ち込まれてしまいます。
間違った情報を信じるようになるまで追いつめられると聞くと、私はそんな人間関係にはまるわけがないと感じかもしれません。しかし米国のステファニー・サーキス教授は、誰でもその「罠」にはまる可能性があると警告しています。
では、ガスラティングに、どんな特徴があるのかを説明していきましょう。
①ウソをつく
加害者は被害者に対してウソをつきます。ときに明らかなウソ、客観的には証拠があるのにゴリ押しするようなウソもあります.ただ絶対に認めようとしません。加害者の一貫して認めようとしない態度が、「もしかしたら自分が間違っている?」といった疑念を被害者が抱くようになってしまうのです。
「大げさじゃない?」「常識でしょう」「記憶違いじゃない?」といった言葉は、ウソと一緒に使われがちな言葉だそうです。客観的に見ると正しいのに、あなたの歪んだ記憶や感覚のせいだと言われることで、何が正しいのかがわからなくなってしまうのです。
②被害者が孤立する
そもそも間違った情報を強要するものなので、間違いをただしてくれるような存在から被害者が遠ざけられてしまいます。そのため元々親しい友人や家族との疎遠になってしまうといったことが起こります。
そうした状況をつくるために、ガスライティングの加害者は親しい人と敵対するように仕向けるそうです。
「まわりもあなたがおかしいと言っている」。そんな言葉で周りの人との関係性を微妙なものにすることもあります。
③被害者の責任にする
さまざまなことが、被害者の責任になります。
例えば指示していない仕事を持ちだして、「やれと言ったのにできてないよね」といった形で責任を押し付けられたり、浮気相手と歩いているのを伝えても「大げさだよね。仕事で会うことぐらいあるよ」と被害者の感覚の問題だと言われてしまったりします。
④繰り返す
このDVは、何度も繰り返しているうちに「もしかしたら自分が間違っているかも」と思わされてしまう行為です。そのためウソついて責任を押し付けるといったことが繰り返し行われます。
「本当にわかってないよね」といった言葉を繰り返し言われると、被害者はどんどん自分への自信を失っていきます。「自分がダメな人間かもしれない」と考えるようになると、「正しいこと」を言い続けるガスライティングの加害者に依存するようになってしまうそうです。
⑤大事なものを攻撃する
自分にとって最も大切なものを攻撃されます。例えば子どもがいるからこそ頑張れるといった状況であれば、ガスライティングの加害者は「子どもを持つべきじゃなかったよね」といった言葉で、子どもの存在を否定します。
自分にとっての大切な心の拠り所を攻撃されると、自分を見失う可能性が高まります。
ガスライティングへの対処法
とにかく加害者から離れることが重要です。というのも時間をかけて支配関係をつくり、被害者の自信を奪っていくので、元の自分に戻るのも時間がかかるのです。本来の自分を取り戻すための時間を確保するためにも、まず加害者から離れましょう。
何だかおかしいと思ったら距離を置き、加害者以外の人と交流を持つようにして、自分が体験したことを相談してみるのもおすすめです。
英国ではガスライティングが罪となるような法律もあるのですが、その証明が難しいことが問題になっているようです。相手の行動がおかしいことを明らかにすることに力を注ぐよりも、自分が消耗してしまうような人間関係から遠ざかるといったことが、最も重要なことでしょう。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「11 Red Flags of Gaslighting in a Relationship」(Stephanie Moulton Sarkis, Ph.D. /Psychology Today)/「7 Stages of Gaslighting in a Relationship」(Preston Ni/Psychology Today)/「心理的虐待「ガスライティング」の加害者がよく使う言葉と表現」(COSMOPOLITAN)