リーダーに抜擢されることは、誰にでもあるでしょう。責任を感じるだけではではなく、どこか誇らしい気持ちを持つこともあるかもしれません。ただ、そんなときこそ心理学的には要注意。その理由を説明しましょう!
- リーダーを降りたときに批判されないために
- 「使えない」人たちに苛立つ
- 他人の失敗を「それみたことか」と考える
- 未来を語ってモチベーションアップを図る
リーダーを降りたときに批判されないために
初めてリーダーを任されることは誰にでもあるかもしれません。仕事ならプロジェクトのリーダー、教育係などもリーダー的な役割を担わされるものです。プライベートなら趣味や友人グループのリーダー的な役割を担うこともあるでしょう。地域社会のなかでも、イベントのリーダーやPTAの役員など、当人が望んでいないにもかかわらずリーダー役を担うケースもあります。
そんな「初めてのリーダー」になったとき、人は意外な側面を見せるものです。またリーダーだからこそ、これまで許されていた行為が目立ってしまうこともあります。
しかし、何らかの理由でリーダーの座から降りることもあるかもしれません。リーダーだったときの悪評が、リーダーを降りた後の生活に影響を与えかねません。そこでリーダーになったときの心理学的な注意点をまとめておきます。
①「使えない」人たちに苛立つ
リーダーとして活動しているとき、周りの人を「使えない奴」だと感じたら要注意です。カナダ大学のホグヴィーンの研究によれば、人は権力を持つとわかった途端に他者への思いやりを失い、相手の立場で考えることができなくなるそうです。これは脳の共感を担う部位の測定から判明したもので、いわば生理現象ともいえるもの。
実際、出世した途端にイヤな人間になった人を見たことあるのではないでしょうか? それと同じような現象が、リーダーになったあなた自身に起こっています。
相手の状況や得意・不得意を考え、相手の気持ちに沿って考えることができないため、周りの人に厳しく当たってしまう。それは権力がもたらす脳の変化ですが、周りの人はあなたの本性だと思ってしまうことでしょう。
リーダーが、こんなはた迷惑な行動をすれば、周りからも嫌われることでしょう。
権力を持ったときほど、自分が調子に乗っていないか確認しましょう。
②他人の失敗を「それみたことか」と考える
周りの人が失敗したとき、「それみたことか」「言わんこっちゃない」といった言葉が出そうなときはあるでしょう。
「自分は違う方法を推していたのに」という思いがあると、失敗するべくして失敗したように感じてしまうかもしれません。しかし本当に正しいやり方を、私たちは最初から推していたのでしょうか?
心理学者のカーネマンは、 私たちが起こった結果に合わせて、自分の記憶を再構成する傾向があり、そのことに本人が気づかないのだと説明しています。人は結果がわかると、それを最初から予期していたように感じてしまう傾向があるのだそうです。
結果が出る前には、いろんな可能性のうちの一つとして成功した方法を考えていたのに、結果が出てから成功への道筋をわかっていたと語る。最初から結果を予期していたと感じる心理を「後知恵バイアス」と呼びます。
正解がわからなかったのに、結果が出た途端に自分はわかっていたという態度は、周りからの反感を招くでしょう。
こうした心理傾向は、成功したプロセスを過大に評価する結果にもつながるそうです。やり方としてはイマイチだったけれど、たまたま成功した。そんな方法を正解だと思い込んでしまうので、プロセスの検証が行われなくなってしまうからです。
結果が出てから、自分だけは正解がわかっていたという態度はやめましょう。もしかしたら記憶を自ら再構成しただけかもしれないからです。
③未来を語ってモチベーションアップを図る
リーダーになったとき、仲間がモチベーション高く実務をこなしてくれるのかは、気になるところでしょう。しかしすべてが終わった後の「ご褒美」を想像させて、周りのモチベ―ションを高めようとしてはいけません。
「本番まであと2週間。それが終われば、ゆったりした時間がまっているから」。周りの人に、そんな言葉をかけることはよくありそうです。しかし課題をやり終えたところ想像させてから課題に取り組ませると、想像させなかった人よりモチベーションが下がるといった心理実験の結果あります。
確かに素敵な未来を想像すれば、一時はモチベーションが上がるかもしれませんが、必ずしも維持できないのです。
それよりも実現したい未来に向けて、何が障害になるのかを考えて、実現可能なものから手を付けていった方がモチベーションも高くなるそうです。
今日はリーダーになったときの注意事項を、心理学的な観点からまとめました。参考にしてみてください。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『科学的に元気になる方法集めました〈ライト版〉』(堀田秀吾/文響社)/『今さらだけど、きちんとしっておきたい「意思決定」』(佐藤耕紀/同文舘出版)