いまいち元気が出ないときなどに、占い師を訪ねる人も少なくないでしょう。それ自体は問題ありませんが、占いだけを信じるようになってしまったら要注意です。というのも占いには、間違っていても信じてしまう心理学的なカラクリがあるからです。
人は「占い」を信じやすい
世の中には、不思議なほどカンが良く、いろんなことを当ててしまう人がいるのは確かでしょう。しかし、すべての占い師が特別な能力を持っているわけではないようです。というのも人はある種の条件が重なると、簡単に未来を信じてしまうからです。もちろん、そうした心理を応用して、未来を「当てて」しまう人もいるわけで……。そこで人はどんな状態だと、言われた未来を信じてしまうのかを解説していきましょう。
占いを信じる4つの条件
占いが当たるように感じる心理として、外せないのが「バーナム効果」です。これは、誰にでも当てはまるような内容なのに、自分だけに当てはまると感じてしまう現象のこと。通常、誰でも当てはまるような言葉を「まさに自分のことだ」とは思わないでしょう。ところが一定の条件下では、それが自分だけに当てはまるように感じてしまうのです。
その条件を説明します。
①個別化
メッセージが「あなたのためのもの」だと思われること。
よくいくつかの選択肢を選ぶと、自分の性格などがわかるといったようなものがあります。そこで重要なのは結果ではなく、自分が選択したということです。自分で選び、その結果が下されたというシチュエーションが、当たったように感じさせるのです。
心理学者のバートラム・フォアは、心理検査の結果だとして、星占いの言葉を組み合わせた文章を実験参加者に全員に同じ文章を配布しました。その上で、配布した文章がどれだけ自分のことを言い表しているのかを、0~5の答えてもらいました。その結果の平均点は、4.26だったのです。5が「非常に正確」だったことを考えると、ほとんどの実験参加者は、自分の性格をピッタリ当てたと感じたのでしょう。
つまり占いは、自分用につくられたものだと感じられるほど、当たったような気になります。逆に誰もが当てはまると考えると、途端に信憑性に疑問を持つようになります。
星占いは12星座、干支占いも十二支です。しかし干支だと、学校の場合では同じ学年の友人の多くが、いっせいに同じ運命だと感じてしまいます。そのため個別化しにくく、星占いより信じにくくなってしまいがちです。
逆に言えば、自分の何かを読み取って、自分のためだけに発せられたと感じられる占いは、より当たったと感じるようになるのです。
②ポジティブな内容
当り前ですが、人はネガティブな予測より、ポジティブな予測を好みます。そしてポジティブな未来を受け入れやすいのです。だからこそ「あなたの未来は明るい」といった占いを人は信じてしまいがちです。誰も自分の悲惨な未来など受け入れたくないのです。
もちろんネガティブな占いがないわけではありませんが、それを回避される方法が合わせて提示されることが多いようです。ネガティブな予測が回避することができれば、明るい未来が待っていると思えることが占いを信じる基礎となるからです。
③話す人の地位
予測や性格評価の信憑性は、それを話す人の地位によって変わってきます。当たると評判の占い師は、無名な占い師より当たったように感じさせるものです。予約が取れない、メディアに出ていた、評判が高い、お金持ちに見える。そうした情報が、占いの信頼度をグッと上げていきます。
④占われる人の性格
他人からの承認欲求が高い人はバーナム効果が効きやすいことが、これまでの研究でわかっています。これはバーナム効果によって、「自尊心」や「安心感」が満たされるためだと考えらえています。
承認欲求とは、「他者から認められたい」という欲求です。例えばSNSで「いいね」を強く求める人は、承認欲求が高いことが知られています。また地位などにこだわり、自慢話が多いといった特徴があります。その一方で寂しがり屋という側面もあるそうです。
承認欲求が高いと感じる人は、占いで「自尊心」が満たされ、安心感に包まれていないかを考えてみると、その占いの信憑性に疑問を抱くかもしれません。
都合の良い情報だけを集める傾向も
バーナム効果を高める要因の一つに、自分にとって都合のいい情報ばかりを無意識的に集めてしまい、それ以外を無視してしまう傾向「確証バイアス」があります。
例えば「今日は活動的な日で、ラッキーカラーは黄色でしょう。恋愛運も好調です」と書かれた占いを読んだときに、仕事の資料にたまたま黄色の付箋が数多く貼り付けられていたとしましょう。するとラッキーカラーの「黄色」と「活動的な日」に焦点が当たり、仕事のやる気がアップしたりするのです。すると結果的に占いは当たったことになります。頑張り過ぎて残業までした後にも、「占い通りだったな」と思い返すのですが、そのときには好調なはずの「恋愛運」は頭から抜けて落ちてしまう。
抽象的な言葉を自分の都合のよい事実に結びつけ、それ以外を無視することで、もしかしたら、いつも以上の力が発揮されることもあるかもしれません。ただ、必ずしも占いが当たったとはいえないかもしれません。
こんな言葉は要注意!
バーナム効果を発揮しやすい文言は、バーナムステートメントとして知られています。特徴は誰にでも当てはまりそうなのに、自分にだけ語り掛けられていると感じさせるもの。
ここで、その具体例をあげておきます。同じような言い回しに当たったら、それはバーナム効果狙った「占い」かもしれませんよ。
・あなたは他人からの愛されたいし、褒められたいと思っています。
・あなたには数多くの才能がありますが、まだ眠っている状態です。
・自制心があり規律ある生活をしていますが、独りのときは不安になることがあります。
・あなたはある程度の自由や変化を好み、さまざまなものに縛れると不満を感じます。
・あなたは自分に誇りを持っており、無批判にすべての他人の意見を受け入れるようなことはありません。
・あなたは正しい判断をしたのか、ときどき深刻に考えることがあります。
・ときに社交的ですが、内向的で用心深い側面もあります。
・あなたにはいつかの欠点がありますが、それらを補うことができます。
・仕事上、あなたは自分を批判的に分析することがあります。
・あなたの望んだことがまもなく起き、それがあなたに自信をもたらすでしょう。
・あなたらの周りには、あなたに好意を寄せてもらいたい人がいます。
いかがですか?
何となく聞いたことがあるような文言ではありませんか? そして否定する材料がないのも、バーナムステートメントの特徴です。
エンターテインメントとして占いを楽しみには不要な知識ですが、ちょっと占いにハマリ過ぎているなと感じたときには、参考にしてみてください。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Barnum Effect: The Reason Why We Believe Our Horoscopes」(Neurofied)/「Why We Believe in Horoscopes」(Eva M. Krockow Ph.D./Psychology Today)