「自分は本当にダメだ」と感じている人に必要なセルフ・コンパッションって

失敗をすると、独り言で自分のことを「私はダメだ」と責めていたりしませんか? 自分への厳しすぎる態度がメンタルヘルスを悪化させているかもしれません。

  • こんな人は要注意!
  • セルフトークを変える
  • 自分を許す
  • 自分自身を大切に扱う
  • 億劫なことをゲーム化する
  • 嫌なことを認識する
  • 助けを求める

こんな人は要注意!

次の項目に当てはまるものはありますか?

・完璧主義で先延ばしの癖がある
・自分のダメな点を確認すると自己卑下しがちだ
・自分の欠点は許せないし我慢できない
・重要なことを失敗したとき孤独を感じる
・落ち込むと独り言で自分を責めている

上記のようなポイントに該当することが多いと感じるなら、セルフ・コンパッションが低いのかもしれません。「セルフ・コンパッション」とは、自分への慈しみのこと。他人を思いやるのと同様に、自分自身も大切に扱うことができることです。つまりセルフ・コンパッションが低い人は、自分に対して辛く当たり過ぎているのです。

もし、職場で常に自分に厳しい視線を送っている上司がいたら、どんな気持ちになりますか? 上司などからの職場での露骨な暴言はパワハラとして問題になりますが、自分をこきおろす態度を罰する方法はありません。だからこそ自分の幸福やメンタルヘルス維持のため、さらに対人関係を円滑にするために、自分を慈しむ態度を身に付ける必要があります。
そのためには自分の失敗や欠点を受け入れ、親友が自分にしてくれるように自身に優しい言葉をかけ、誰もが失敗して成長していくことを理解する必要があります。

自分への冷たい態度は、取り返しのつかない失敗だと感じた結果として湧き上がるケースもあります。例えば仕事で大きな失敗をして取引先を失ってしまった場合など、いつもは楽観的だったのに、どうしても自分が許せないと感じてしまうケースです。失敗した自分を責めてしまうことがあっても、少しずつ立ち直り、自分を許し現実的な対応に一歩を踏み出す。そんな変化のためにもセルフ・コンパッションを高めていく必要があります。

そこでセルフ・コンパッションを高める方法について、まとめておきましょう。

①セルフトークを変える

まず試してもらいたいのは、何か失敗したとき、どんな独り言を言うのか確かめることです。「やっぱり私はダメだ」「こんな結果は許せない」「どうして自分はいつもダメなんだろう」。そんな呪詛のようなつぶやきを繰り返しているなら、自分と同じ状況になってしまった親友に、なんと声をかけるのかを考えて見ましょう。
「いやいや、失敗は誰にもあるから」「しっかり対処すれば取り返せるから」「相手も悪いから気にしないでいいんじゃない」などなど、親友をいたわる言葉を書き出し、自分に声をかけてあげましょう。

無意識のセルフトークで、ときに人は何時間も自分を責めてしまうことがあります。他人には許さない行動を、自分にしている理不尽さを感じ、自分への対応を変えてみましょう。

書き出した自分をいたわる言葉をメモし、気分が沈んだと感じたときは読み返してみましょう。

②自分を許す

自分を許すことで、自己非難の度合いは小さくなり、罪悪感や苦痛を大幅に下げることができます。ただ、これまで日々自分を責めてきた人は、どうやれば自分を許せるのかがわからないものです。

そこで、まず他人との比較を止めましょう。じつは自分を卑下している人の多くは、他人と比べていることが多いのです。「自分はダメだ」という思いには、その比較対象となる人たちがいるからです。それは個人ではなく、「会社の平均的な社員」といったイメージの場合もあります。
自分が何を基準にダメだと判断しているのかを考え、そうした比較をしないようにしてみましょう。「自分は自分」と思えられれば成功です。

次に小さな成功体験を積み重ねていきましょう。
大きな失敗に見える結果も、すべてが悪かったわけではありません。じつは大きな失敗をするには小さな成功があるものです。そうした小さな成功に目を向けて、一歩一歩着実に成果を上げていきましょう。そうした歩みの中で、失敗した自分を許せる気持ちが生まれてくるでしょう。「プロジェクトの8割がたは成功していたのだから、そこまで自分を責める必要はなかった」と思えたらいいでしょう。

③自分自身を大切に扱う

自分に話しかけ、セルフケアとして何が必要かを考えみましょう。うまく考えがまとまらないなら、今、家族や恋人がいたら何をしてほしいか考えてみてください。
もし黙って抱きしめてほしければ、腕を交差して自分を抱きしめることで、自分を慰めることができると言われています。試してみましょう。

④億劫なことをゲーム化する

ちょっと面倒だと感じたり、完璧にこなさないとダメと思っている事柄をゲームとして捉え直してみましょう。タスクをゲームでクリアすべき障害ととらえて、クリアすればそれぞれどんな報酬があるのか考えます。そのうえでチャレンジしてみるのです。
ポイントはタスクをゲームだととらえることで、失敗しても自分を責めなくなること。
また契約などの結果だけではなく、「担当者に会えた」「上司に繋がるプレゼン資料を渡すことができた」といった小さな成功を、ゲームの得点として考えてみるのもいいでしょう。仕事を進めて行く中で、予想外のプラス面が見つかったら隠れアイテムの発見だと思うこともできるでしょう。たとえ「ラスボス」を倒すまではいかなくても、けっこういいところまで進んだと感じられたら、改めて挑戦する気にもなるでしょう。

そうした楽しみを仕事の中に見いだし、失敗する自分を許していくことで、クライアントとも関係性も良くなっていくかもしれません。

⑤嫌なことを認識する

私たちは自分の嫌なことに鈍感になっています。それは、我慢するのが当たり前になっているからです。しかし自分の不快感を認識することで、自分をもっと労わろうという気もちが生まれてきます。

時計やブレスレッド、指輪などを、イヤなことがあったときに付け替えてみましょう。一番簡単なのは右手から左手といった形に付け替る方法。このちょっとした変化がサインとなり、自分が不快に感じたことを思い出させてくれます。痛覚に鈍感な人は無理をしがちです。逆に痛みに敏感であれば、病気になるほどは無理をしなくなります。

すり減ってしまった自分の感覚を取戻し、自分を傷つけないように行動できるようにしましょう。

⑥助けを求める

セルフ・コンパッションが低い人は、困ったときにも他人に助けを求められないケースが多いようです。そのため失敗すると孤独を感じてしまうケースが少なくないのです。

だからこそ苦しくなったときには友人や家族に助けを求めるようにしましょう。1本の電話やメールが、あなたの心を癒してくれるかもしれません。

今日はセルフ・コンパッションを高める方法についてまとめました。人は誰でも失敗はするものですし、そこから立ち上がって、新しい何かにチャレンジしていかなければいけません。そのためには自分を許し、自分に優しく接することが必要になります。

近年のメンタルヘルスケアにおいて、セルフ・コンパッションの重要性が語られています。ぜひ試してみてください。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考: 「What Is Self-Compassion?」(Michelle C. Brooten-Brooks/Verywell Health)/「The power of self-compassion」(Haverd Health Publishing)/「Self-Compassion」(GoodTherapy)/『セルフ・コンパッション』(クリスティーン・ネフ/金剛出版)

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