攻撃的な言葉と態度をコントロールする心理学的テクニック3選

ついつい攻撃的な言動を取ってしまうことはありませんか?しかし昨今、攻撃的な態度そのものが許されない状況が増えてきています。そこで攻撃的な態度をコントロールするテクニックをまとめておきましょう。

  • もう攻撃的な態度は許されない
  • 感情を記録する
  • 感情を手放す
  • 感情と反対の行動をしてみる

もう攻撃的な態度は許されない

以前であれば攻撃的な態度を取る人を黙認していた状況でも、現在は許されなくなってきています。職場などでパワハラ関連の法制度が整えられたり、学校の部活などでも、暴力や暴言等を伴う攻撃的な指導に厳しい目が向けられています。

一方で怒りなどの強い負の感情を、うまくコントロールできない人もいることでしょう。また瞬間的な怒りの感情はどうにか抑え込んだものの、相手にマウントを取ったり、皮肉を言ったり、嘲笑ったりといった攻撃な態度を抑えられないケースもあるでしょう。ただ、そうした態度がいつまでも許されると考えるのは間違いです。というのも他人を不快にするような態度こそが、近年では批判の対象となったりするからです。まして何かしらの地位を利用して攻撃な態度を示すことは、職場だけではなく、自分の地位やポジションを揺るがす行為であることは肝に銘じておきましょう。

だからこそついつい攻撃的な態度に出てしまう人は、早急に行動を改める必要があります。そこでついつい攻撃的な態度を取ってしまう人にお勧めしたい改善のテクニックを紹介していきます。

①感情を記録する

攻撃な態度を取ってしまったときに、どんな感情に突き動かされていたのかを記録していきましょう。記録していくのは、次の4つです。

①日付
②出来事
③感情
④遮断反応

具体例を示しながら説明してきましょう。

① 6/6(火)
② 妻が手際よく夕食を用意できない様子を見て怒鳴ってしまった。
③ 怒り、不安、拒否
④ 夕食を食べないで風呂に入り、すぐ寝てしまった。

上記の例では、妻のモタモタした様子に、どうしてイラついてしまうのかを自らに問うところからスタートします。夕食の支度が数分遅れても、大きな問題が起きるわけではありません。ただ妻から不機嫌な自分を疎ましく思う気持ちを読み取ったとき、妻の行動をきっかけにして自分の怒りが爆発してしまったのです。しかも、その背景には、このままでは妻に愛想をつかされるかもしれないという不安感もありました。
だからこそ愛想つかされる不安や、自分のことを嫌う妻の視線を避けるために、夕食を食べないで寝てしまったのです。

この④の「遮断反応」とは、③の感情を追い払おうとしての行動を指します。
記録を付けていく中で、④の行動が自分の気持ちを悪化させ、他人との関係も悪くさせていることに気付きましょう。

上記の例で言えば、怒りから他人を拒否するような行動が、より妻との距離をあけることに繋がり、それが自分の不安を大きくしてしまっているのです。

そして、このような記録を付けることで、同様のパターンで問題をこじらせていることがわかれば、自分の行動を変えていこうという気持ちになるのではないでしょうか。

そもそも怒りが、真っ当なものだと言えるのか。さらに怒りがその後の行動が自分のネガティブ感情を強めていないのか。そうしたところから、自分の問題行動のパターンを考えてみましょう。

②感情を手放す

怒りの感情を手放したいと思っている人は多いでしょう。しかし実際には手放そうと思えば思うほど、その感情に付きまとわれてしまいます。

1980年代の有名な心理実験に「シロクマ実験」というものがあります。これはシロクマの映像を3つのグループに見せて、次のように指示する実験です。

①「シロクマのことを覚えておいてください」
②「シロクマのことを考えても考えなくてもいいです」
③「シロクマのことだけは考えないでください」

結果、③が最もシロクマのことが記憶されていたのです。つまり人は「考えるな」と言われるほどに、考えてしまう生き物なのです。だからこそ手放したい感情は、受け入れろと言われるのです。
ただ、その方法がよくわからないという人も多いでしょう。

そこでお勧めなのが、怒りの感情を波として考えてみること。

海で立っているあなたの胸のあたりで、小さな波が揺れているのを想像します。あなたを倒すほどの強さではない波は、あなたの怒りの感情を表します。大事なことは、怒り自体に善悪はなく、波としてただそこにあることです。波を押しのけようとすれば抵抗が強くなり、自分の体が流されそうになり、体勢を維持するのが苦しくなります。また、その怒りを善悪で判断しようとすれば、ネガティブな感情が強くなってしまいます。正しいから怒ってもいいとか、怒ることが悪いから落ち込んでしまうといった判断は、怒りそのものや、怒鳴った後に襲われる後悔を大きくしてしまいます。また怒りを善悪で判断することで、そうした状況を何度も頭の中で反すうしてしまう可能性も高まります。「怒った自分は悪くないのに……」といった具合です。
ただ海の波のように自分の胸の前で揺れていると考えてみましょう。

そして感情が自分の行動をすべて決定しているわけでないことを理解します。怒りが少し大きな波となって肩を濡らしても、その波に流される必要はありません。

そして波のような感情を受け入れます。
この受け入れるという気持ちの理解は難しいのですが、そばかすのある自分、背の低い自分を認めるようなものだと説明してあったりもします。怒りの波にのらず、それの揺らぎを感じつつ、海で立ち続けます。波が大きくなったり、小さくなったりするのを認めることで、
穏やかな自分を手に入れられるようにしてみましょう。

こうしたネガティブな感情を手放すのは、簡単とはいえません。しかし波をイメージするといった方法でチャレンジすることで、手放した人も少なくありません。

③感情と反対の行動をしてみる

私たちは怒りという感情があるから、怒鳴ったりといった行動をするだと考えています。しかし実際には、感情が行動によって増幅されるようなのです。行動してしまうからこそ、怒りが増幅するという側面があるからです。

だからこそ怒りを感じたら、その反対の行動をしてみましょう。
怒鳴るのではなく、静かに話してみる。話もしたくないとコミュニケーションを遮断するのではなく、あえて相手の話を聞いてみる。自分が普段取っている行動と逆に動くことで、感情も他人との関係も変わってきます。

特に「①感情を記録する」の結果を見直し、これまで繰り返してきた行動パターンに使うことをお勧めします。先程の例で言えば、同じような不安に駆られ、いつも通り他人を拒否してしまうといったような行動パターンに試してみるのです。いつもなら妻の不信感に怒りをあらわにするパターンで、逆に笑ってみる。さらに顔も合わせたくなくて自室に閉じこもるのではなく、話しかけてみるといったことです。

最初は違和感があるかもしれません。しかし実際に行動してみて、結果的に自分が救われたと思える部分を発見できれば成功でしょう。これまでは怒りを表し、その怒りの悪影響から逃れたくて、さらに人間関係を悪化させる行動を取っていました。そのパターンの一部でも変えることができれば、自分の気持ちが少しだけ楽になるかもしれません。

怒ることで、自分をより傷つけてきたことを知り、そのパターンを壊すことで、対人関係も改善していく。そんな流れで、①~③のテクニックを試してみてください。

今日は怒りと向き合い、行動を変えていく方法を解説しました。
考えてみれば、私たちは本当に逆らってはいけない人に怒りをぶつけることは、あまりないものです。つまり怒りでさえ、意外と冷静に状況を判断しているものです。だからこそパターン化している怒りの表現方法を変えることで、新しい人間関係を築くことができるでしょう。

怒りに翻弄され、常に振り回されてしまうのは仕方ないという観念を、少しでも変えられたら自分も周りもきっと楽になるはずです。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:「21 Emotion Regulation Worksheets & Strategies」(Courtney E. Ackerman, MA./PositivePsychology)/『弁償法的行動療法 実践トレーニングブック』(マシュー・マッケイ、ジェフリー・C・ウッド、ジェフリー・ブラントリー/星和書店)

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