どうにも仕事が手につかないときに試したい心理手法5選

やる気が出ないときの対処方法として、有名なものに「作業興奮」の活用があります。「作業を始めることでやる気が高まるので、とにかく手を付ける」といった方法です。しかし、そんな最初の行動も起こせないときに試したいテクニックを紹介しましょう。

  • 最初の一歩が踏み出せない人に
  • 自分の気持ちを探る
  • 自己非難を「無力化」する
  • 体を動かす
  • 自分の「やる気スイッチ」を探す
  • やる理由を考える

最初の一歩が踏み出せない人に

仕事に手を付けられない、どうしてもやる気が出ないといった状態への対処法は、有名なものがいくつもあります。冒頭に書いた行動から生まれるやる気「作業興奮」を活用する方法だったり、手を付けるのが楽になるように作業のタスクを細かく分けるといったことが有名です。

しかし、それでも最初の一歩がなかなか踏み出せないといった人もいるでしょう。そんな人にお勧めしたいのが、ネバダ大学リノ校のスティーブン・ヘイズ博士が教えるテクニックです。

あまり目にしたことがない方法も多いので、いろいろ試したけれどイマイチ効果的な方法が見つかっていないという方は、ぜひお試しください。

①自分の気持ちを探る

やる気がない状態のほとんどは、何となく感じるものでしょう。ちょっとした面臭さや、やや暗い先の見通しなどが絡まりあって、やりたくない気持ちがモヤモヤと広がっていきます。この何となく感じている「やる気のなさ」に、以下の方法でしっかり向き合ってみましょう。

(1)「やる気のなさ」を探す
体のどこに「やる気のなさ」がいるのか探してみましょう。見つけたら、それがどんな感覚なのかを感じ取ってみます。下腹の方で重い感じで居座っていることもれば、胸の奥でドキドキするように隠れていることもあるでしょう。いる場所も感覚も人によって変わってきますので、自分の体をしっかりと探り、自分の「やる気のなさ」を見つけ出しましょう。

(2)しばらく様子を見る
見つけた「やる気のなさ」を少し観察してみます。動きがあるかもしれませんし、まったく変化なく居座り続けていることもあるかもしれません。無理に何かをする必要はありません。重要なのは、自分の感情から少し距離を取り、その様子を観察し続けられる状態をつくることです。

(3)「やる気のなさ」に身を寄せられるか考える
「やる気のなさ」を膨張させて、そこに身を寄せて過ごせるのかを考えてみましょう。人によっては、こうした行為でさらにやる気が削がれていくのでは、と不安に感じるかもしれません。しかし、このテクニックは望ましくない感情への対処として、心理学的に効果があると証明されているものです。
多くの人は、望ましくない感情と対峙したくなくて現実逃避します。しかし、そうした行為こそが望ましくない感情を居座らせる原因となるのです。
押しが強くて、無礼な知人がいたとき、面倒だからと目を背けていたら、ますます増長してしまったというような状況です。その様子をしっかりと観察すれば、注意をしたり、お付き合いを遠慮したりといった行動が取れます。だからこそ、まずは問題を直視することが重要になるのです。

(4)簡単な課題に手を付けてみる
「やる気のなさ」に身を寄せることなんてできないと感じたり、「やる気のなさ」が小さくなるのを感じたら、簡単な課題に手を付けてみましょう。先程、とても面倒だと感じた課題にとりかかることができるかもしれません。

②自己非難を「無力化」する

仕事に手が付かない原因は、必ずしも「やる気」だけではありません。「やる気のなさ」以上に、自分に対する攻撃が行動への一歩を奪っているケースがあります。先延ばししてしまったことの反省や、課題に取り組めない自分への苛立ちといったものは、やる気をどんどん奪っていくからです。そんな自己非難を無力化して、やる気を取り戻しましょう。

(1)自分への批判を書き出す
やる気がない自分に対して、どんな言葉がけをしているのか書き出しましょう。とくに独り言は強い自己批判が出ているケースが多いので、聞き逃さないように注意しましょう。

(2)書き出した単語を20秒間連呼する
自分を卑下したり、攻撃したりする言葉の中から、なるべく言いやすい単語で、連呼したときに違和感があるものを探します。例えば「怠惰な自分」「どうしようもない私」「本当にダメ」という言葉だったら、「怠惰」を選択します。「ダメ」も言いやすいのですが、連呼したときに違和感があまりないので却下します。そして「怠惰、怠惰、怠惰……」と、なるべく早口で連呼します。少しリズムを取ってみるのもお勧めです。

このテクニックを紹介していた文章には、ブルース・スプリングスティーの「Born in the U.S.A.」の節で、選んだ単語を歌ってみるといった方法も紹介されていました。ただ、日本人にとっては「Born in the U.S.A.」が馴染み深い曲ではないため、力強い曲調で絶叫できる曲を選んで、同じように試してみるのもいいかもしれません。

いずれにしても連呼したり、歌ったりしているときに、何だかバカらしく感じたり、ちょっと楽しくなってきたらOKです。「怠惰な自分」と口にすると、とても攻撃な言葉ですが、リズムを取って連呼すると、どんどん攻撃性が薄まっていくのがわかるでしょう。

自分の行動を止めているのが自己非難だった場合、一連の行動によってタスクに取り掛かる一歩が楽になるでしょう。

③体を動かす

やる気がないときに体を動かすのは、よくある対策方法ですが、スティーブン・ヘイズ博士は、「体を真剣に震わせろ」と書いています。これは血流をながし、姿勢、呼吸、思考、感情のコリをほぐすことが目的だそうです。

手を振ったり、肩を回したり、足を振るわせたり、飛び回ったり、より激しく動かしたいならスクワットや腕立てをしみましょう。それでも身心のコリが取れないと感じたら、散歩をしてみましょう。

④自分の「やる気スイッチ」を探す

自分が最もやる気が出る場面を思い出し、何が「やる気スイッチ」だったのかを考えます。誰からも邪魔されない「夜中」だったり、「7時間睡眠」の後だったり、「一杯のコーヒー」だったりと、「やる気スイッチ」は人によってさまざまなのです。

「やる気スイッチ」の候補が見つかったら、一つずつ試してみましょう。締切りが迫っている場合、選びにくい選択肢もあるかもしれません。しかし、やる気がない状態で進まないと唸っているよりは効率的かもしれません。

⑤やる理由を考える

面倒なのに実行する理由は何ですか? 一度しっかりと考えてみましょう。生活のためかもしれませんし、家族のためのかもしれません。あるいはキャリアアップのためかもしれません。いずれにしても、その行為が未来に通じているとわかれば、面倒なことにも手を付けられるようになります。

逆に何の理由もない場合は、本当にその面倒なことをやる必要があるのかを考えてみましょう。

現在の仕事の目的を考えるのは、モチベーションを上げる方法としてよく見ますが、行動一つひとつについて考えるのは珍しいかもしれません。何とやっていることを、改めて見直すと意外な発見があるかもしれません。

今日はやる気がなくて、どうにも仕事が手につかないときの対策法をまとめました。①や②などはあまり見ない方法なので、これまでに自分にピッタリの対策法がなかったという人は、ぜひ試してみてください。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:「When You’re Just Not Feeling Motivated」(Steven C. Hayes Ph.D./Psychology Today)

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