点数がよかったテストやうまくいったプレゼンの資料を見返したりしたことはありませんか。成功体験をちょっと反すうしてしまうことありますよね。逆に過去の失敗につながるものは、視界に入れたくもないもの。それはどうしてでしょうか?
- そもそも現実の自分をしっかり捉えていない
- 声で拒絶される実験
- 自分の声を聞きたいか?
- 理想の自分になるために
そもそも現実の自分をしっかり捉えていない
もともと人は自分の姿を客観的に捉えているわけではなさそうです。たいがい自分が思っている自己像と現実の姿にはギャップがあるのではないでしょうか。自分が思っている程、現実の自分はかっこよかったり、かわいかったり、仕事がバリバリこなせているわけでもなそうです。ただ、その「現実」を目の当たりすることなく、人は生き続けているのではないでしょうか。小さな希望や願望、そして実現できると感じる根拠の薄い自信も、現実を乗り越えていくのには必要なことなのかもしれません。
しかし、ときに本当の自己評価を触れることになり、理想の自分と現実の自分のギャップに悩むことになるのです。
では、そんなとき人はどのような行動を取るのでしょうか?
なかなか厳しい実験で心理学者のギボンとウィックランドが明らかにしているので紹介しましょう。
声で拒絶される実験
実験参加者には、第一印象の実験だと説明され、男性は自分の声で女性への呼びかけを録音します。その後、女性から声から判断した自分の第一印象が伝えられるのです。ただ、この結果は「会ってみたい」という好意的評価か、「あまり会いたくない」という否定的効果のどちらかが伝えられます。
その後、実験の作業としてテープの内容を分析するよう言いつけられるのですが、自分の声のテープでも、他人の声のテープでも選択できるのです。心理学実験のポイントは、この選択にありました。
好意的評価を受けた男性は自分の声のテープを長く聴き、逆に女性から否定的な評価を受けた男性は自分の声のープをあまり聴こうとしなかったのです。
自分の声を聞きたいか?
この実験結果は、自分の理想と現実のギャップに、人がどのように対処するのかだと、ギボンとウィックランドによって説明されています。女性から肯定的に評価された男性は、理想と現実のギャップの小さいので、自分の声のテープを聴くことで、自己評価を高揚しようとするのです。
一方で女性から拒絶された男性は、現実の自分と理想の自分のギャップが大きいため、自己表は低下。そのため自己評価を再確認することになる自分の声のテープを避けるようになったというわけです。
このような人間の心理を考えると、PLAN(計画) → DO(実行) → CHECK(検証) → ACTION(改善) というPDCAサイクルを一人で回すことの難しさがわかってくるでしょう。当たり前のことですが、目標を高く掲げすぎれば、達成はむつかしくなります。数多くの達成未達の原因を検証し、最後に達成することが望まれているのですから、目標達成までの数多くの挫折は必然と言えるかもしれません。
そうした状況は、心理的には愉快なものではありません。仕事のように強制されなければ、無意識に避けようとしてしまうのです。
理想の自分になるために
よりよい自分に向けて、日々自分を振り返り、改善していく。これは多くの人が望む行動様式でしょう。しかしこのような行動を目指しても、日々の振り返りで現実の自分に向き合うことで疲れてしまい、いっこうに行動が変わらないかもしれません。
そんな人にお勧めしたいのが、理想とするタイプの人の行動をマネ、できた部分とできない部分の両方をカウントすることです。まず、理想の上司や同僚などの行動を思い浮かべ、どんな準備をし、どんなふうに物事を進めていくのかなるべく細かく書き出します。その上で、マネできた行動とできなかった行動をチェックし、できなかった行動をできるようになる努力してみましょう。
当然、理想の自分をすぐに実現できるわけではありませんが、少なくとも理想に向かって歩んでいる自分を確認することができます。結果、自己評価の高揚だけで現実を振り返らないといった行動を取ることも、自己評価を低下される情報を身の回りからはじき出すという行動を取ることもなくなることでしょう。
理想と現実のギャップを直視せざるを得ない自分を少しでも応援してあげること。それが自らの行動変容を生み出すポイントになるのです。簡単なことから試してみると、意外に効果があることを発見できるかもしれません。一流のアスリートのように、より理想に近い自分に向けて動いてみてはいかがでしょう。