ワクハラを知っていますか?最近、話題になっている新型コロナウイルスのワクチンに絡むハラスメントです。今後、ビジネスの現場などでも問題になりそうです。そこでワクハラについて調べてみました。
- 問題となるワクチン接種の強要
- 厚労省は強制していない
- 海外ではワクチンパスポートが問題に
- コロナ解雇を認めない判決も
問題となるワクチン接種の強要
新型コロナウイルスに関連するハラスメントは、過去にも数多く報道されています。感染者に対する退職勧告は、そのさいたるものでしょう。また感染した結果、引っ越しを余儀なくされたといった事例も報告されています。
新型コロナウイルスへの恐怖心から起きる差別は、「相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること」というハラスメントの定義に当てはまります。そしていま注目を集めているのがワクチンハラスメント、「ワクハラ」なのです。
ワクハラの典型例が、接種をしない人の異動勧告、役職の解任などです。医学生や看護学生からは、ワクチンを接種しなければ実習を受けさせないといった声があがっています。医学生や看護学生にとって実習は必修科目であり、修得しないと卒業できません。
こうした状況は事実上の強制接種といえるでしょう。
厚労省は強制していない
厚生労働省は、今回のワクチン接種について次のような見解を出しています。
新型コロナワクチンの接種は、国民の皆さまに受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。
さらに
職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。
と指摘し、職場におけるいじめ・嫌がらせなどに関する相談窓口も設置しているのです。
昨年、新型コロナウイルスの感染が広がったときには、自粛に協力的ではない人に嫌がらせや威嚇をする「自粛警察」が問題になりました。こうした同調圧力への懸念が各所で高まっています。5月14日・15日には、日本弁護士連合会が「新型コロナウイルス・ワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」を実施しました。医療従事者からの相談がメインだったものの多数の相談が寄せられたようです。
今後、企業や大学などが実施する職域接種も増えていく中で、ワクハラは大きな社会問題になる可能性があります。
海外ではワクチンパスポートが問題に
では、ワクチン接種の進んでいる海外では、接種による差別はどのようなことが問題となっているのでしょうか?
海外ではワクチン接種の履歴などを証明する「ワクチンパスポート」を発行している国があります。イスラエルでは、飲食店などの利用にワクチンパスポートの提示が必要とされているようです。EUも積極的に取り入れており、一部の国ではワクチンパスポートによる入国の簡易化も始まっています。
米国ではワクチンパスポートの取り扱いが州によって分かれています。ニューヨーク州では州政府がパスポートを3月に発行しました。しかし同州ではワクチンを受けている人だけ屋内に座るよう記したチョコレート店の看板がWeb上で強く批判される事件も起きています。
またアラバマ州では、プライバシー上の懸念から「ワクチンパスポート」の使用を禁止する州法が成立しました。
コロナ解雇を認めない判決も
世界的に見ても、ワクチンを接種しない自由は保障すべきという論調が主流のようです。日本でワクハラが法律的にどのように判断されるのかは今後の問題となりますが、厳しい判断も予測されます。
というのも、2021年4月には、コロナ禍の業績悪化を理由とした解雇を、福岡地裁が無効と判断しているからです。希望退職者も募らなかったなど、解雇に向けた手続き不足といった判断ですが、コロナ禍の安易な首切りに一石を投じたといった評価もあります。
パンデミックという特殊な状況ではありますが、「努力義務」であり強制ではないワクチン接種の強要が許されないことは、しっかりと覚えておく必要がありそうです。
ハラスメントに対策に通じる心理学の知識に興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:「『ワクチンハラスメント』被害が急増中…そのヤバすぎる実態」(現代ビジネス)/「『ワクチンパスポート』禁止法、知事の署名で成立 米アラバマ州」(CNN)/「再論『ワクチンパスポート』」(塩原俊彦/論座)