頑ななクライアントを口説き落としたい、どうしても欲しい契約がある……。そんなとき、あなたはどうしますか。クライアントの感情を動かしたいなら、絶対に電話がいいと、心理学が教えてくれます。
- 電話詐欺に騙されてしまうのは「電話だから」!
- 電話でのコミュニケーションの特殊性
- 耳元でささやく心理効果
- 電話を取るときは左耳で
- 口説き落としたい相手には、迷わず電話を!
- 電話での即決は危険と心得るべし
電話詐欺に騙されてしまうのは「電話だから」!
相手を説得するとき、どんな方法を思いつきますか?
手紙に情熱をしたためる? 頻繁に会いに行って、土下座してでも契約をとる? なかなか予約の取れない料亭に連れていく?正解は、どれもバツなんです!
NHKの番組「ガッテン!」で、オレオレ詐欺の被害防止が特集されたとき、「オレオレ詐欺に騙される理由は耳の錯覚」であるという情報が放送されました。詐欺の道具として使われるのが「電話」であることが、騙されてしまう最大の原因ではないかというのです。
番組内では、実際に詐欺電話を経験するまでは「私は詐欺になんか引っかからないだろう」と思っていた人も、詐欺電話を切った後は「気づけばお金を準備していた」という報告がなされました。詐欺グループはどんな心理テクニックを使っているのだろうと、気になってしまいませんか。でも、理由は簡単。電話を使うだけで、ある心理効果が生まれることがわかっています。
電話でのコミュニケーションの特殊性
大阪大学の大坊 郁夫教授は、「コミュニケーション・スキルの重要性」という論文の中で、電話というコミュニケーションツールの特殊さを説明しています。対人コミュニケーションなら沈黙があっても表情や動作がそれを補ってくれますが、音声しか伝達手段がない電話は、その分だけ情報が制限されてしまうのです。
つまり言葉以外の情報をキャッチできない電話は、会って話しているときよりも少ない情報で判断しているというわけ。実際に人に会って聞いた話であれば、「なんか胡散臭い人だから信用できない」という判断ができたかもしれないのです。
耳元でささやく心理効果
番組内では、電話の音声を、受話器を使って耳元で聞いたときと、スピーカーを使って離れて聞いたときの発汗量の変化を計測していました。すると、耳元で音声を聞いたときは、スピーカーで聞いたときの2倍近く汗をかくことがわかりました。
耳元でささやかれると相手がすぐ近くにいるように錯覚し、「それほど近くにいても構わないほど親密な相手」との会話であると脳が解釈して、会話の内容を無視することができずドキドキしてしまう……。だから汗をかくのだと考えられます。
番組では、この心理的な錯覚におちいらないよう、留守電設定を活用した対策について紹介していました。つまり、知らない人の電話には、基本的には出ないということです。それほど、電話の錯覚は強力だということなのでしょう。
電話を取るときは左耳で
じつは音声のコミュニケーションについては、面白い実験が報告されています。
イタリアにあるG・ダヌンツィオ大学のDaniele Marzoli氏とLuca Tommasi氏は、調査員の女性がクラブの客に「ねえ、タバコを1本いただけない?」と声を掛ける実験をしました。結果、左側から声をかたると17人しかタバコを差し出さなかったのに、右側から話しかけたとき88人中34人が応じたというのです。
この給論文によれば、右耳で聞いた言葉は、頼みを受け入れやすい方の脳に届くとのこと。
怪しい電話を右耳で受けてしまうのは、とても危険だといえるでしょう。
口説き落としたい相手には、迷わず電話を!
オレオレ詐欺は許されるものではありませんが、電話の心理効果は怖いくらい強力という事実からは、学ぶべきところがあります。つまり、どうしても口説き落としたい相手がいたら、迷わず電話をするのが効果的だといえるのではないでしょうか。
それは、ビジネス面でも、プライベートでも同じです。重要案件でどうしてもOKをもらいたいとき、デートにOKをもらいたいときは、メールで文章をつくるよりも、まずは電話をしてみましょう。意外とすんなり承諾してもらえるかもしれませんよ。
電話での即決は危険と心得るべしただし、電話の心理効果は強力なだけに、諸刃の剣でもあります。耳元でささやかれる言葉がどうしようもなく不快だったら、あなたはどう感じますか。「もう、あんまり会いたくないなあ……」と思ってしまいますよね。言葉遣いや話の内容には、直接対面で会っているときよりもいっそう気をつけなければいけないのかもしれません。
電話をするときには、自分が相手の耳元に立っている姿をイメージしましょう。実際に耳元でささやいていると思えば、慎重になりますよね。
電話での即決は危険と心得るべし
自分が電話の受け手側になったときの対応についても、心がけるべきことがあります。それは、「電話での即決は危険」ということです。耳元のささやき効果で、どうしても「わかりました、やりましょう」と承諾してしまいたくなるかもしれませんが、そこはグッとこらえたいもの。いったん返事を保留するくらいの勇気を持った方が良いでしょう。
どうしても話に流されやすい自分に気づいたら、「この人とのコミュニケーションは、以後メールを中心にする」と決めてしまうのも一つの手です。また、本当に大事なことは直接会って話すよう、相手を促すのもいいでしょう。仕事でもプライベートでも自分の本当の要望が伝えられるよう、意思疎通の手段を上手に選択してみませんか。
参考