ナルシストが攻撃的な傾向を持つことを知っていますか? 自己愛の強いタイプがどうして攻撃的なのか、またその対処法についても紹介します。自己愛の強い同僚に困っている人などは、ぜひ読んでみてください。
- ナルシストの5つの特徴とは?
- ナルシストが攻撃的になる理由
- ナルシストの攻撃性を緩和する2つの方法
ナルシストの5つの特徴とは?
ナルシストと聞くと、なんとなくうぬぼれが強いか、自己中心的な人を思い浮かべがちですが、各種の調査から攻撃的な傾向を持っていることが判明しています。
では、心理学で扱うナルシストとは、どんな性格の人なのでしょうか? 岡山大学大学院の上地雄一郎教授が、もう少し詳しい5つの特徴を論文に書いているので、そのまま紹介しましょう(『自己愛の心理学』小塩信司・川崎直樹 編/金子書房)。
①他者からの承認・賞賛への過敏さ
自分の発言や行動に他者からの承認・賞賛がえられるかどうかに過敏であり、承認・賞賛が得られないと自尊感情が低下する。
②自己顕示の抑制
注目を浴びたり自己を顕示したりすると強い恥体験が生じるため、自己顕示を抑制しがちになる。
③潜在的特権意識
自分に対しての他者が特別の配慮や敬意をもって接してくれることを期待し、その期待が満たされないと強い不満や怒りを体験しやすい。
④自己緩和能力の不全
強い不安や情動を自分で調整・緩和する力が弱く、他者に調整・緩和してもらおうとする。
⑤目的感の希薄さ
自己を方向づける目標が希薄であり、空虚感を体験しやすい。
こうやって5つの特徴を並べると、自己愛的な傾向を持つこと自体はそんなに珍しくないと感じる人もいるのではないでしょうか。あるいは同僚などに、同じような性格特性を感じる人もいるかもしれません。
ナルシストが攻撃的になる理由
では、どうして自己愛の強い人は、攻撃的になるのでしょうか?
これはこの傾向の人が、傷つきやすい「ガラスのハート」を持っているからだそうです。傷つきやすいから、その心理的な防衛として他人に過剰に反応してしナルシストが攻撃的になる理由まうのです。
「もっと配慮してくれたらいいのに」「そんなことをするなんて、信じられない」という気持ちから怒りを感じ、攻撃的な行動にでてしまう」と『自己愛の心理学』(小塩信司・川崎直樹 編/金子書房)
に書いてあります。
さらに細かく分析すると、「優越感・有能感」の高い人は「自分が特別な存在だから何をしてもよい」と考え、自分の怒りを正当だと判断する傾向が強いことがわかっています。
一方「注目・賞賛欲求」の高い人は、怒りを感じやすいものの、それを表現することは不当だと感じるために、自分の怒りを抑圧する可能性があるとのことです。
つまり自己愛が強いタイプの中でも、「優越感・有能感」が強い人ほど、怒りをむき出しにする可能性が高いということになります。
じつはこうした傾向性とWEBでの書き込みとの関連性についても、研究がなされています。
「インターネット利用とが社会性および攻撃性に及ぼす影響」(藤桂)によれば、注目や賞賛欲求の高さは誹謗中傷的な内容の書き込みと関連して」いることがわかっています。つまり注目や賞賛を求める人は、WEB上で他人に攻撃な書き込みをしている傾向が強というわけです。
また優越感や有能感の高さは、誹謗中傷的な書き込みだけではなく、誹謗中傷的な内容を読み込む傾向が高いことも分かっています。やはり優越感や有能感が強い人の方が、攻撃性が強いようですね。
近年、ネットなどでも話題になることも多い「意識高い系」の人などは、どこか優越感や有能感をかもし出すことが多いことで知られますが、ナルシストの傾向が強いなら、攻撃性が高い可能性があるかもしれませんね。
ナルシストの攻撃性を緩和する2つの方法
自己愛の強いタイプの人自身は、どのように性格改善を目指していくのか、周りはどのように対処すればいいのでしょうか?
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自己愛の強いタイプの人が攻撃的になるのは、結局のところ「ガラスのハート」だからです。つまり心身の不安定さを抑えることさえできれば、自己愛自体は強くても攻撃的にはなりにくいとのことです。つまり細かく気にし過ぎる性格が少しでも改まれば、当人も周りの人も楽になるというわけです。
同僚や部下などで自己愛の強すぎるタイプの人と接するときは、このガラスのハートが攻撃性の元凶だと認識して接するといいかもしれません。自分が攻撃されて、アイデンティティーが揺らぐと思った場合に怒りやすいので、注意や指導が仕事に関連したことであり、当人の人格の問題とは別とはしっかりと伝えるべきでしょう。
もう一つの対策は、協調的な意識を刺激することだそうです。『自己愛の心理学』(小塩信司・川崎直樹 編/金子書房)に書かれていた実験では、ある人物の写真を自己愛の強い人に見せて、その写真の人が過ごす1日を想像してもらうだけで、その人物以外への攻撃性が減ったとのことでした。
その写真の人物とナルシストの関係はあまり問題ではありません。もともと協調性が低いので、他者がどんな生活をし、どんな想いで暮らしていくのかを想像するだけで、攻撃性が弱まったと推測されるそうです。
つまりビジネスの現場では、自己愛の強い人と関わる人の気持ちや行動を想像させるようにすると、攻撃性が弱まることが期待できます。例えばナルシストの部下の気持ちを推測させるように促したり、ナルシストの人の周りの行動を伝えてみたりするのもいいでしょう。
また、自分が自己愛の強いタイプだと感じるなら、周りの人の気持ちや行動を想像してみるようにしてみましょう。
ナルシストの傾向を持つ人は少なくありません。もし、そんな人の攻撃性に悩んでいたら、上記の対策をやってみてください。
参考:『自己愛の心理学』(小塩信司・川崎直樹 編/金子書房)