就職試験では、性格の特性を診断するようなテストを課されることがあります。ついつい自分の特性を無視して、受かるための回答をしてしまいがちですが、ここで正直に答えないと、入社後のミスマッチが起こるかもしれません。
- 提唱者はゴールドバーグ
- どんな性格なら「仕事ができる」か、一概には言えない
- 今の仕事をするにあたって、自分の強みは何かを考えてみよう
提唱者はゴールドバーグ
果たして会社の人事部は、性格特性診断のどこを見て採用決定に至るのでしょうか。性格診断によく取り入れられる理論として、ビッグファイブセオリーがあります。セオリーで語られている5つの性格因子を紹介しましょう。
ビッグファイブセオリーの提唱者は、アメリカの心理学者、ルイス・ゴールドバーグです。人間の性格を表す言葉を分類すると、5つの特性因子に分けられるとしました。いたってシンプルな理論ながら、心理学業界では長く高い支持を得ています。
なぜ圧倒的な支持を得ているかと言えば、これまで世界のどのような国でビッグファイブセオリーに基づいた試験を行っても、ほぼ同じ結果が出るためです。5つの性格因子をご紹介しましょう。
・調和性
周りに合わせてうまくやっていく能力があるかどうかを示します。協調性とも表現されます。周りに合わせるためには、自分の内にある怒りや不満などをコントロールしなければなりません。自分の気分を調整する力が必要です。
・誠実性
コツコツと物事に取り組めるまじめさや、他人を尊重し裏切ることのない誠実さを表します。信頼できる人物かどうかは、仕事をするうえで最も大事になるでしょう。
・経験への開放性
新しい物事にどれほど興味や好奇心を持って取り組んでいけるかを示します。物事に対する柔軟性があるかどうかの指標といえるでしょう。開放性に乏しいと、視野が狭く凝り固まった考え方をしがちです。
・神経症傾向
緊張しがちか、不安を抱えることが多いかを示します。感情の起伏が激しいかどうかが見られるといっていいでしょう。とくに仕事を任せる場合、叱責やプレッシャーに強い性格かどうかは重要な指標です。
・外向性
外向性は社交性とも言い換えられます。積極的に人とかかわっていけるかどうかを指し、最近では「コミュ力」などといわれ、就職活動をするにあたって最も磨かなければならない能力として重要視されています。
どんな性格なら「仕事ができる」か、一概には言えない
これらの5因子のうち、どの因子要素が大きければ仕事のできる人間ということになるのでしょうか。正解は、「どれでもない」です。どんな性格なら仕事ができることになるのかは、一概には言えません。なぜなら、仕事に求められる姿勢は、職種によって違うためです。
例えば、営業職であれば外向性が高いほうが有利であることは、誰もが頷くところでしょう。とくに会話力が必要なセールス職であれば、経験への開放性も高いほうがいいですね。顧客の価値観や趣味に合わせて話題を選ぶことができれば、距離はぐっと縮まります。
対して、事務や経理といった職種であれば、誠実性の欠如は致命的です。どんなに外交的で親しみやすい人でも、小さなミスが大きな損害を生む経理職で失敗を繰り返せば、仕事のできない人間だと評価されてしまう可能性があります。
また、神経症的傾向が大事な職業もあります。それはデザイナーなどのクリエイティブ職です。感情が大きく揺さぶられることがなければ、作品のイメージは湧きあがってこないでしょう。何事にも動じないタフネスさがこの仕事には必要と思われがちですが、それだけだけでは、人々を感動させるコンテンツは生まれないでしょう。
今の仕事をするにあたって、自分の強みは何かを考えてみよう
もしあなたが今仕事に行き詰まり、「自分に本当に向いている職業は何だろう?」と考えているなら、5つの性格因子のうちどれが強いのかを調べてみましょう。無理に外向的になったり、協調性を身につけたりする必要はありません。自分の長所を活かせる職場が、きっとあるはずです。
とはいえ、今の会社が、自分の性格をきちんと把握して採用してくれたのも事実。「自分の一体どこを評価してくれたのか?」「どの部分が、この部署の仕事に向いていると評価されたのか?」を思い切って人事部に聞いてみるのもありでしょう。自分では思いもかけない長所が見つかるかもしれませんよ。
参考:『心理学ビジュアル百科』渋谷昌三編、河出書房新社 p.170