シスって何?生活を変え、心を強くするフィンランド人の生き方

フィンランド固有の概念「シス(SISU)」を知っていますか? 困難に負けない強い心や逆境から立ち直る力をいったものを示す言葉ですが、その背景にはフィンランドの生活習慣があります。近年、注目を集めているシスを紹介していきましょう。

  • フィンランド人のライフスタイルとの密接な関係
  • カナダでの派手な生活を捨ててフィンランドに
  • シス実践のために知っておきたいこと
  • 日本でもできそうな生活のヒント

フィンランド人のライフスタイルとの密接な関係

シスはフィンランドの国民性を示す言葉です。最も近い訳語は、困難に直面してもくじけない「強い心」だったり、逆境から立ち直る力「レジリエンス」だったりするようです。しかしレジリエンスには高めるための手法がありますが、シスを強めるテクニカルな方法はありません。

というのもシスの背景には、フィンランド人のライフスタイルが関わっており、「粘る強さ」や「活発さ」「天候に関わらず外で活動すること」「DIY(自分の手で作ったり修繕したりすること)へのアプローチ」が含まれるからです。つまりシスを強めることは、単に強い心を持つことを志向するのではなく、フィンランド的なライフスタイルを生活に取り入れることを意味します。そのあり方はデンマーク語の「ヒュッゲ」と少し似ているかもしれません。


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2017年の国連が発表した「世界幸福度ランキング」で、フィンランドはデンマーク、アイスランド、ノルウェーと並んで世界5位に。2018年の調査ではトップに立っています。

つまりフィンランド的な生活を送ることは幸福度を上げることにつながり、同時に心を強くする可能性があるということです。

カナダでの派手な生活を捨ててフィンランドに

『フィンランドの幸せメソッドSISU』(方丈社)を書いたカトヤ・パンツァルは、フィンランド生まれのカナダ育ちです。カナダで編集者として働き、週末ごとに繰り広げられる芸能人出席のパーティーに参加するといった生活を送っていたそうです。その一方でウツに悩まされ続けたとも告白しています。

当時の状況を彼女は次のように書いています。

不規則な食生活、運動不足、栄養のバランスの悪い食事(夕食をアイスクリームで済ませたこともありました)、睡眠不足。

「安定」の象徴と思われるものなら、たくさん手にしていました。住む家があり、正社員の職に就き、高級車を乗り回すボーイフレンドがいて(彼は小さな飛行機まで持っていました)、友達もいた、にもかかわらず、しばしば不安が押し寄せて来ました。

そんなとき両親の故郷であるフィンランドに興味を持ち、1~2年フィンランドに住んでみようと決断した結果、シスに出会い、北欧流のシンプルな生き方を学び、ウツも克服したそうです。

もちろんフィンランドの生活を、そのまま日本で取り入れることは難しいでしょう。フィンランドほどサウナは一般的ではないですし、凍った海や湖で泳ぐこともかなわないでしょう。しかしカトヤ・パンツァル氏が紹介する生活のヒントは、日々の生活を変え、心を強くするかもしれません。

シス実践のために知っておきたいこと

シスは幅広い概念を含む言葉なので、ただ我慢強く生活すれば実践できるといったものではありません。そこで、どんな意味や行動を含む言葉なのかを、少し説明したいと思います。

・挑戦

シスの研究者であるエミリア・ラハティは、次のように語っています。

「シス」は、自分が試される状況に身を置くことの大切さを語っています。困難な状況で「自分には何ができるか?」と問いかけることが大切なのです。

著者自身も、シスは人生に対するアプロ―チであり、向き合い方だと説明しています。そして

決してあきらめずに自分に挑戦する生き方のことであり、あとから身につけられるものです

とも語っているのです。

自ら困難に向かい、粘り強く克服していこうとする行動こそがシスであり、ただ我慢強いわけではありません。

・身体性

シスは頭で考えること、心で感じることだけを指すものではないようです。むしろあきらめないで行動し続けるために、食べ物にも気を遣い、運動をすることも重要なのだそうです。

冬の海で泳ぎ、マラソンを走ったりもすることがシスを強めていくのです。

日本でもできそうな生活のヒント

『フィンランドの幸せメソッドSISU』(方丈社)に紹介されている、シスのための生活のヒントを5つ書いてみました。参考にしてください。

①冷水シャワーを浴びる
アイススイミングを日本で実施するのは容易ではありません。でも冷水シャワーなら試すことができます。

最初は数秒、冷水を浴びるところから始めて、毎日少しずつ時間を長くするのがポイントとのこと。また冷たいシャワーの後は温かいシャワーを浴びるようにするとよいそうです。
ただ心臓の悪い方にはお勧めできない方法ですし、ご自身の体調と相談しながら生活に取り入れるかを検討してみてください。

②シンプルな食事
フィンランドには健康的な食事の「プレート・モデル」があるそうです。
サラダや加熱野菜を2分1、ジャガイモや米・パスタを4分の1、魚や肉、豆やナッツ類などのたんぱく質を4分の1。

和食だとこの通りにはいかないと思いますが、理想の目安として覚えておき、野菜を多めに取ることを心がけるのはいいかもしれません。

③ながら運動
運動ではない身体を使った活動が、シスを強くするようです。掃除、通勤時の自転車や歩行、雪かき、落ち葉掃除、マキ割り、階段の上り下りなどなど。車が使える状況でも、あえて歩くといったこともシスにはプラスに働くようです。

④シンプルな生活
モノの消費から経験の消費に重点を置き、小さな家に住み、より満たされた人生のために質素な暮らしを実践することが、シスを強くすることにつながるとのこと。リサイクル品の購入も、このシンプルライフには含まれると書いてありました。

⑤森林浴
地域によっては難しいかもしれませんが、静かな公園や森を10~15分歩くことで疲れを癒し、心が強くなっていくと著者は書いています。都市部に住んでいる人も、大きな公園が近くにあるなら、足を運んでみるといいでしょう。

シスを強める生活のポイントを駆け足で説明してみました。興味のあるところから日々の生活に取り入れていくと、生活も心のありようも変わってくるかもしれませんね。

参考:『フィンランドの幸せメソッドSISU』(カトヤ・パンツァル/方丈社)

心理学に興味のある方はこちらもご覧ください。

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