生活習慣を変えられなくて困っているあなたに、イェール大教授からのアドバイス

宣言をすると目標を達成しやすくなることは広く知られています。でも、その達成した生活習慣を維持することは、目標を達成するより難しいことを知っていますか?そこで習慣の維持に効果のある方法について調べてみました。

  • ダイエットした体重を維持できるのは5人に1人
  • 精神力を必要とする習慣は避ける
  • 定期的に自分を観察する
  • 高すぎる目標は避ける

ダイエットした体重を維持できるのは5人に1人

ダイエットの敵がリバウンドであることは、ダイエットを試したことがある人は良く知っていることでしょう。とにかく夏までに痩せなくちゃと思い、苦労して5kgも痩せたのに秋風が吹くころには、すっかり戻っている「アレ」です。

達成できなかった場合には罰を、達成できた場合にはご褒美を与えるという約束「コミットメント契約」を自ら結ぶことは、目標達成に効果があると言われています。


目標達成に「コミットメント契約」を活用したい方は、こちらもお読みください。

コミットメント契約 目標達成のための効果的な罰とごほうびとは?


しかし目標を達成した後に、そうした状態を維持することは容易ではないようです。イェール大学のイアン・エアーズ教授は自著の中で、ダイエットをした集団の統計を示しながら次のように解説しています。

参加者は平均で、6ヵ月で5キロはやせられる。でも2年たつと、減らした体重の半分は復活している。

また、

「体重を1割減らした人のうち、1年後までその体重を保てる人は5人に1人しかいないのだ」

とも語っているのです。

体重を保てる人が、わずか20%という数字に驚く人が多いかもしれませんが、この数字も体重の1割を減らせた「猛者」たちの数字なのです。ダイエットを始めたけれど、そもそも痩せられなかったという失敗組は、この統計には入りません。つまりダイエットを決意した人が、目標体重を1年後まで維持できる可能性はもっと低いというわけです。

精神力を必要とする習慣は避ける

エアーズ教授は、ダイエットに成功して体重を維持したいと思うなら、「ダイエット日記をずっとつける」と宣言して、コミットメント契約を結ぶようなことは

「絶対避けるべき」

と書いています。それは数ヵ月以上日記をつけ続けるだけの精神力を持っている人はほとんどいないからそうです。

もっとラクに取り込めるものを日常生活に探すことが、体重を維持するポイントだというのです。ダイエットであれば、テレビの時間を減らすのが有効だとのこと。テレビを見ると、ついついお菓子を口にしたくなる。だからテレビを見る時間を減らせば、お菓子を口にする機会も減り、体重も維持しやすくなるというわけです。

禁煙や禁酒を維持するのに、それを摂取する機会を遠ざけるといったものがあります。例えばパーティーや会合に参加しない、お酒好きな人と一緒に行動しないなどです。生活習慣を変えたいと思ったときに、誘惑になりそうな因子を見つけ出し、そこに近づかないと心に決め、破ったときの罰などを決めるコミットメント契約を自分自身で結べば、生活習慣を改善する確率はかなり上がるようです。

定期的に自分を観察する

さらに有効なのが、「定期的な自己モニタリング」だとエアーズ教授は指摘しています。ダイエットなら毎日、体重計に乗り、体重が増えてきたらすぐに行動を変えるようにすれば、体重が維持できるそうです。

マズいのは、「少し太ってきたかも」と思いながら現実に目をつぶり、怠惰な生活を変えないこと。

実際、このようなダイエット維持のための方法がどれだけ効果があるのかが、実験によって明らかになっています。ダイエットが成功した後、デジタル体重計で毎日体重を測り、自動対応の電話に毎週電話して体重を申告。そして体重が2.5キロ以上増えたら、体重維持カウンセラーから電話がかってきて、自分自身のダイエット成功物語やダイエット食品が入った箱を開ける。そんなリバウンド対策プログラムが実施されたのです。

何のリバウンド防止策も指示されなかった人たちは平均で5㎏ほど体重がリバウンドしていたのに、上記のリバウンド防止策を施された人たちは平均2.5㎏しかリバウンドしておらず、増えた体重の中央値は1.1㎏だったというのです。

かなり効果があったことがわかるでしょう。

自分を監視できる環境をつくることが、生活習慣を変える第一歩というわけです。生活習慣を維持したいなら、その監視役に誰かを任命して、サボることができないようにすることはリバンド防止に有効なのではないでしょうか。

高すぎる目標は避ける

生活習慣を維持するのに重要なことは、最初に高すぎる目標を掲げないことです。ダイエットであれば、体重の1割以上痩せるといった目標を設定すると、リバウンドの可能性は高くなるとのこと。

まず1割を減らし、その後、さらに減量に励めようにすべきで、高い目標を掲げ過ぎると、人の気力は持たないのだそうです。自分にとっての適正な目標がどれぐらいなのかを探ることが、生活習慣の変化には重要です。

また、本当に苦しいときだけ、目標に向けた行動を止められるようにコミットメント契約を結ぶことも有効だ、とエアーズ教授は指摘しています。

例えばケーキを全面禁止にしても月1回だけ食べられるようにしておくとか、貯金を自分に課していても本当に出費の多い月だけは貯金をしないなど、やや柔軟な対応が生活習慣を変えるのに適しているそうです。

もちろん、そこからズルズルと元の生活に戻るとマズいので、歯止めになるルールは決めておくべきですが、完全に理想の生活を続けるような行動の規制は維持するのが難しくなってしまうようです。

今日は生活習慣を変える方法について調べてみました。参考になれば嬉しいです。

相手の話をしっかり聴く技術を学びたい方は、こちらもご覧ください。

参考:『ヤル気の科学』(イアン・エアーズ/文藝春秋)

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